中国のスマホ市場に並ぶ市場規模を誇るとされているインド。今となっては世界的にヒットしたRealmeも、もとはインド市場を攻略するためにOPPOから登場したブランドでした。業界で評価される良い製品はインドから生まれたと言っても過言ではありません。
この記事では非常に興味深いインドのスマホ市場をざっくりと解説していきます。
目次
インド 概要
面積:328万7,469平方キロメートル
人口:約13億5,300万人(2018年世界銀行)
首都:ニューデリー
言語:ヒンディー語
名目GDP:2兆7,263億ドル(2018年世界銀行)
一人当たりGDP:2,015ドル(2018年世界銀行)
人口約13億を抱えたインドのスマホ市場
インドは約13億人の人口を抱えています。10億人を超えるインドの人口というのは世界トップの中国に次ぐ数値です。スマホという世界各国で巨大な市場規模を持つ製品ですが、各メーカーはインド市場をとても重要視しています。
2020年Q1のスマホ出荷量は約3350万台、同年Q2はCOVID-19の影響を受け縮小するもなお、約1730万台という数字を記録しています。日本の年間スマホ出荷台数が3,000万台以下なので、インドのスマホ市場は日本の4倍以上です。
市場シェアデータなど
インド国内の直近の市場シェアデータです。2019年Q2からXiaomiが市場のトップとして強い存在感を見せています(30.9%)。市場の二番手となるのがvivo、それをサムスンが追うという構図です。2020年Q2になりトップスリー内のvivoがサムスンを押しのけることに成功しました。アンチ・チャイナ運動という逆風はあるものの、Xiaomiがインドのスマホ市場のリーダーとして主導していくことになるでしょう。
2018年にはOthers(その他)に分類されていたRealmeも、2019年Q2の時点で8.1%という数字を叩き出していることが衝撃的です。
インド国内の2018年と2017年それぞれの通年の市場シェアデータです。
2017年は23.6%のシェアで市場内一位だったサムスンでしたが、2018年になり前年の20.6%から29.9%までシェアを大きく伸ばしたXiaomiにトップを奪われています。Xiaomiとvivo、サムスンのスリートップという構図は2017年の時点から変わっていなかったのです。
良い製品はインドから生まれる
スマホ業界において、良い製品というのはインドから生まれていることが多いのが事実です。
今となっては世界各国で人気が高くシェアを伸ばしているRealmeですが、これも最初はインド市場向けにOPPOが投入した一つのブランドでした。Realme 1が登場したころは今ほどの注目度ではありませんでしたが、Realme 2シリーズの登場で大きく注目され、驚くべき成長スピードでシェアを広げていきました。
2020年の現在はRealmeはOPPOから独立していますが、CEOもRealmeはインド発のスタートアップであると公言しています。
また、サムスンのGalaxy Mシリーズも元々はインド市場向けに誕生したものでした。インドで成功したMシリーズは世界各国の市場でも見られるようになり、同様に高い人気を誇っています。インドではGalaxy AやGalaxy Sシリーズよりも出荷台数が多い時期もありました。
Mシリーズへの人気は年々高まっており、Galaxy M31sが発表されたインドではMシリーズ最高のコストパフォーマンスだとして大盛り上がりを見せています。
現在では世界各国で製品が入手ができるようになり、ブランドの独立化も果たしたPOCO。XiaomiからPocoブランドの名前でPocophone F1が登場したのも、インドが初でした。Pocophone F1はインド国内でゲーム志向の強いユーザーにとても支持され、後にグローバルで展開されることになりました。
このように、インドで通用した製品は世界でも高く評価され、実際に通用するのです。
パッとしないものは淘汰されるのがインド
インド国内通販サイトなどのレビューを見ても、ユーザーからの意見が非常に的確で、平均的なIT関係へのリテラシーが高いと筆者は感じています。それゆえ、コストパフォーマンスや品質が優れない製品というのはすぐにユーザーから選択肢の対象外となってしまうのでしょう。本当に良い製品だけが残り、パッとしない製品は自然と淘汰されていくのがインドのスマホ市場なのです。
例として挙げるならば、インド地場メーカーのMicromaxやKarbonn、インド国内生産を行っていたPanasonicなどのスマホになるでしょう。
消費者の製品を見る目も高く、かつ市場規模も大きいインドのスマホ市場。メーカーが特別本気になるのも不思議なことではありません。
Made in Indiaへの動き
XiaomiやSamsung、OPPOなどの大手メーカーの多くはインド国内に製品の製造工場を所有しています。インド及び周辺国へ向けへの製品の製造拠点をインドに置くことで、製造コストの削減はもちろん国内の雇用創出にも貢献しています。
これまでのイメージでは多くのスマホが中国国内で製造されている印象が強かったですが、インド向けの一部機種はインド国内で製造・組立するなどの動きを各メーカーが見せています。
インドスマホ事情① GST税率調整
2020年3月になり、インドのCBICによりスマホやマッチなどを含む消費財の税率を調整する方針が発表されました。
スマホへの税率はこれまでは12%となっていましたが、4月1日より18%に見直されることとなり、業界および消費者は大きく影響を受けています。市場リーダーのXiaomiをはじめ、各メーカーが税率調整後の価格見直しを行っていますが、その値上げ幅というのが増税分以上(一部メーカーの一部製品)だとして困惑の声もあがっています。
Xiaomiの場合、例としてRedmi 8 4GB/64GBは8,199ルピーから8,999ルピーへ800ルピーの値上げ(内増税分は約450ルピー)、Redmi K20 Pro 6GB/128GBは24,999ルピーから26,999ルピーへ2,000ルピーの値上げ(内増税分は約660ルピー)を行っています(2020年4月1日時点)。
一方のvivoやサムスン、OPPOなどのメーカーは増税分だけの値上げをしたという状況でした。
それぞれの価格見直しは販売戦略を含むメーカーの判断のため受け入れるしかないものですが、この一件はインド市場で大きな話題となりました。
インドスマホ事情② 中国への政治的反発(2020年7月最新)
アンチ・チャイナ - 政府主導のアプリ規制
2020年になりTikTokやWeChat、UC Browserなどといった国内でも人気だったアプリ計59種が規制対象となりました。国家と国民の安全保障が理由ですが、同年3月に起きた中国とインドの軍事衝突など政治的な理由が絡んでいるものと予想されます。
政府による規制の程度は現時点で強まっており、Google Play StoreとApple App Storeから該当アプリが削除されたことに加え一部アプリを国内から利用することができなくなっています。インドのSection 69A (The Information Technology Act法より)の内容に基づき国内でのアクセス制限が開始され、TikTokなどのアプリへのアクセスが国内からできなくなりました。一方でWeChatなどのアプリは既存ユーザーであればまだ使用ができる状態です。
国民がこの政府の規制に必ずしも反意を見せているかというと難しく、以前にもRemove China Appsという「中華系デベロッパーによるアプリをスマホからリストアップする」アプリが公開から10日で100万以上のダウンロードを記録しています(現在は削除済)。
インドにはすでにTikTokへの国産ライバルサービスが存在しているため、インドにとって必ずしも悪いこととは限りません。しかし、国民には使用するサービスを選ぶ権利が保証されるべきでしょう。
アンチ・チャイナ - 中国ブランド製品への不買運動
上記に関連して、中国ブランド製品への不買運動というのも現在のインドで見られる情勢です。スマホ業界も影響を受けると予想されていますが、インドで最大のシェアを抱える中国のXiaomiや二番手のvivo、OPPOなどにとっては無視できる問題ではありません。Realmeなどインド発のブランドであっても親元が中国のBBKグループであることからボイコットを受けたり、事態は非常に複雑となっています。
2020年Q1の段階で中華系メーカーへの際立った影響はありませんでした。しかし、今後事態の深刻化の可能性も十分にあるため、楽観視は決してできません。
Source: Canalys 1, Canalys 2 , xdadevelopers
インド発のスタートアップであると公言←擬態必死で草