スマホ業界では中国とインドがトレンドの生まれる場所として知られる一方で、そのインドの隣にもネパールという非常に興味深いマーケットが存在します。2021年の時点で人口は2,900万人程度、面積も14.7万平方キロメートルと小さい国ですが、スマホ市場の視点で見るとインド近隣国特有の課題を抱えています*。
その課題こそインドの国境を越えただけで大きく変わるスマホの価格設定であり、realmeがネパール攻略のために動いている部分です。この記事では同社によるネパール市場の攻略について取り上げます。
*Source: 外務省
目次
ネパールマーケットの問題こそ高い価格設定である
ネパールのスマホ市場の最大の特徴に、インドや他国と比べた時に大きく価格が上乗せされて販売されるという点があります。これはネパールの消費者を悩ませてきたことであり、現地メディアも取り上げるほどの問題になっています。
ネパールは大手スマホメーカーの開発・生産拠点が多く揃うインドと国境を面している国です。文化や言語、宗教などの側面でも親和性があり、covid-19による移動制限前は多くのネパール人がインドを訪れていたと言います。一方、国境を跨ぐだけでインドとネパールではスマホの価格設定に大きな差があり、消費者の不満は高まっているとされています。
realmeは特に価格差縮小をしてこなかったメーカーである
このネパール市場における「インドとネパールの価格差問題」ですが、サムスンやAppleといった業界大手メーカーですら解決ができていません。しかし、realmeは大手メーカーの間でもインドとネパールで大きな価格差を出していると筆者は認識しています。
ネパール国内の特殊な税制や為替により、インドに比べて価格が上がってしまうことは仕方ないと言えるでしょう。一方で、メーカーによってその価格差の程度が大きく異なっており、税制や為替要素をその理由にすることは必ずしも正しくありません。
実例でインドとの価格差を理解する - Appleのケース
マーケット | 現地価格 | 日本円換算 |
インド | 69,900インドルピー | 117,432円 |
ネパール | 139,990ネパールルピー | 146,989円 |
日本 | 98,900円 | |
香港 | 6,799香港ドル | 111,231円 |
iPhone 13 128GBを例にすると、インドでは117,432円の価格がネパールでは146,989円にまで膨れ上がっています。日本円で考えても29,557円もの差が出ていることになります。
*これらの換算は分かりやすさを優先し日本円で考えています
Source: Apple公式サイト1,2,3,4
実例でインドとの価格差を理解する - 各大手メーカーのケース
モデル | インド現地価格 | 日本円換算 | ネパール現地価格 | 日本円換算 | 差異(日本円) | 差異(%) |
realme 7 (8+128GB) | 16,999 | 28,558円 | 35,990 | 37,789円 | 9,231円 | 32.32% |
OPPO F19 Pro (8+128GB) | 21,490 | 36,103円 | 44,990 | 47,239円 | 11,136円 | 30.85% |
Xiaomi Redmi Note 9 Pro Max (6+128GB) | 17,499 | 29,398円 | 31,999 | 33,598円 | 4,200円 | 14.29% |
サムスン Galaxy M51 | 22,999 | 38,638円 | 39,999 | 41,998円 | 3,360円 | 8.7% |
これらはインドとネパールで(当時)販売されていた製品の価格差を表にしたものです。インドマーケットでも大人気であったrealme 7という主力製品ですが、realmeはこれをネパールで32.32%もの価格差で販売していることが分かります。一方のサムスンやXiaomiは価格差を抑えることに一定は成功していると考えられます。
*これらの換算は分かりやすさを優先し日本円で考えています
2021年にインドrealmeの担当から外れたネパール
これまでのrealmeですが、インドのrealmeがネパールマーケットも担当をしてきました。これはネパールマーケットの市場規模や成長性への期待の少なさや文化・言語的親和性の高さによる効率化のためだと一般に考えられます。
しかし、2021年になりインドrealmeはネパールマーケットを担当から外す発表をしています。以降ネパールマーケット向けの法人がrealmeによって設立されるという動きがありました。加えて2021年8月には現地大手ディストリビューターとしてシャンカーグループとの提携を結ぶなどしています。この件はネパール現地のガジェット系メディアでも取り上げられ話題となりました。
ネパール本格進出で価格差縮小の実現に成功
モデル | インド現地価格 | 日本円換算 | 新ネパール現地価格 | 日本円換算 | 差異(%) |
realme 7 (8+128GB) | 16,999 | 28,558円 | 32,990 | 34,639円 | 21% |
realme 9 Pro+ (6+128GB) | 24,999 | 41,998円 | 41,999 | 44,098円 | 5% |
realme 9i (4+64GB) | 13,499 | 22,678円 | 24,999 | 26,248円 | 16% |
realme GT Neo 2 (8+128GB) | 31,999 | 53,758円 | 54,199 | 56,908円 | 6% |
2022年4月時点でのインドとネパールのラインナップから価格差を日本円換算で求めています。ネパールマーケット本格展開前は価格差が30%を超えるモデルがありましたが、今では非常に抑えられていることが確認できます。
特にrealme GT Neo 2に関してはインドとネパールでほとんど価格差はなくなっており、これにネパールでの国内補償やサポートが付帯することになります。数年前の状況を考えれば、ネパールの消費者も6%という価格差を受け入れることは難しくないでしょう。
*これらの換算は分かりやすさを優先し日本円で考えています
2022年内にはネパール国内シェア2位を目指すrealme
realmeは今回のネパールマーケットへの本格進出に際し、同国の国内シェアで2位を目指す意気込みを見せています。2022年には首都カトマンズに初のサービスセンターを配置するなどし現時点ではシェア3位まで上り詰めています。
上記の表でも理解できる通り、realmeはネパールマーケットで消費者のために確実に動き結果を出しています。今後もサプライチェーンの効率化やオンラインチャネルの販売経路拡大等により、更なるシェア拡大が見込めるでしょう。
おまけ - インドとネパールでの価格差がスマホの密輸を誘引する
ネパールマーケットの問題をrealmeのケースで取り上げているこの記事ですが、同マーケットではインドからのスマホの密輸も問題視されています。ネパール政府は密輸問題へ積極的に動いており、その取り組みをトピックにマーケットコラムとして取り上げる可能性があります。
記事内のレートは2022年4月20日時点 インドルピー/円=1.68 ネパールルピー/円=1.05 香港ドル/円=16.4
Source: THE ECOONMICS TIMES, Gadgetbyte
興味深かった。