Qualcommの最上位チップセット(SoC)、Snapdragon 855とSamsungの同世代の最新チップセット Exynos 8920、海外モデルのGalaxy S10は地域別でどちらか一方を搭載しているので、購入時に迷った方もいるでしょう。
今回はSnapdragon 855とExynos 8920の性能を徹底比較します。
Exynosとは?
Samsungが自ら開発しているスマートフォン用SoCシリーズの名称。Samsung製スマートフォンをはじめとする一部の機種に搭載されています。
由来はギリシャ語のexypnos(知性)Parasinos(環境保護)です。
実際の性能の違い
手始めにベンチマークスコアの比較を行います。
Snapdragon 855は343051点、Exynos 9820は325067点と、Snapdragonが僅差で勝利。
次に、PCMarkでの比較を行います。ウェブ表示速度といった実生活においての使用時の処理速度でパフォーマンスを数値化するのが特徴です。なお、テストされた端末はどちらもパフォーマンスモードに設定されたGalaxy S10です。
どちらも非常に良いパフォーマンスを発揮していますが、Antutuベンチマーク、PCMarkスコア共にSnapdragon 855が勝利。
ベンチマーク結果では、明確にSnapdragon 855が半歩先を行っています。
バッテリー持ち
SoCの性能は処理性能・ベンチマークだけではありません。バッテリー持ちも見ていきましょう。
アメリカのスマートフォン比較メディアであるPhoneBuffは、インスタグラムやGoogle MapといったアプリをSnapdragon 855とExynos 9820を搭載した2つのGalaxy S10を同時に使用して、電池持ちを比較するテストを行いました。
結果はSnapdragon 855を搭載したGalaxy S10の持続時間が24時間02分、Exynos 9820を搭載したGalaxy S10が22時間59分。Snapdragon 855の方がバッテリー持ちが良いと言える結果となりました。
もちろんバッテリーの持ちは使用状況によって変化しますが、一つの目安として役立つでしょう。
このような結果になった理由として、Snapdragon 855は7nm製造プロセスなのに対し、Exynos 9820は8nm製造プロセスが採用されていることが挙げられます。
Exynos 9820がやや劣った8nm製造プロセスを採用しているのは、製造に際してSamsungがEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術の利用に固執したものの、7nm製造プロセスではいくつかの不具合があったためです。
なお、8月にSamsungは世界初のEUVリソグラフィ技術によって作られた7nm製造プロセスであるSoCのExynos 9825を発表しました。現在はGalaxy Note10シリーズに搭載されています。
音質はExynos 9820に利点も
ここまで惨敗のExynos 9820ですが、音質という面ではExynos 9820の方が優れています。
これは、Exynos 9820はオーディオ用DACなどを製造しているWolfson(CyrrusLogic)のDACが内蔵されているため。Sanpdragon 855よりも高い音質を期待できます。
音質以外はSnapdragonの勝ち
Snapdragon 855はほとんどにおいて最高グレードですが、音質という面ではExynos 9820に劣ります。そのため、音質にこだわりがあるのならExynos 9820、もしなければSnapdragon 855でよいでしょう。ちなみに、日本国内で販売されているGalaxy S10はすべてSnapdragon 855版です。
サムスンは独自開発したチップ「Exynos」を自社製のスマートフォンに搭載しています。
Apple AシリーズやSnapdragonやKirinなどと違い、
TSMCやグローバルファウンドリーズなど大手ファウンドリには委託をせず自社工場で生産されています。
しかし、この「Exynos」は高い性能を誇るのにもかかわらず、サムスン製のスマートフォン以外で見かけることはほとんどありません。
その理由は世界最大のチップメーカー クアルコムにありました。
サムスンは「Exynos」を社外に持ち出したくないのではなく、クアルコムとの契約によってチップ市場への進出を阻止されているだけであることが分かりました。
こういったクアルコムの態度について、韓国では公正取引委員会(KFTC)が1兆3,000億ウォン(約980億円)の巨額制裁をクアルコムに科す方針を固めているほか、
中国でも9億7,500ドル(約1,120億円)の罰金を科されています。