日本発売されたばかりのBlack Shark 2の半額にもかかわらず、現在Antutuスコア1位に君臨するゲーミングスマホがあります。──それが、今回実機レビューをお届けするZTEのサブブランド「nubia」から発売されているRed Magic 3です。
初心者お断り、ハードコアゲーマー専用スマホの全容をご覧ください。
目次
Antutuスコア最強
2019年5月時点で、Red Magic 3はAntutuスコアのトップに君臨しています。2位は同じくZTEのAxon 10 Proです。Axon 10 Proがラグジュアリー感ある高級車だとすると、Red Magic 3は乗り心地を放棄したスポーツカーです。普段使いなど考慮の外です。
Antutuスコアの詳細は前回の記事を御覧ください。
ちなみに、Geekbenchのスコアは上記の通りです。
エッジの効きすぎたスペック
ディスプレイは6.65インチフルHD+で、現在のハイエンドスマホとしてはHUAWEI Mate 20 Xに次ぐ大きさです。
AMOLEDでリフレッシュレートは最大90Hzですが、ベゼルは厚めで横幅は78.5mmと持ちにくいです。
5000mAhの大容量バッテリーと引き換えに、重さ215gという弱点があります。
Snapdragon 855の性能を最大限活かすゲーム専用モード「Redmagic OS 2.0」がありますが、カメラはシングルカメラです。
洒落たポップアップカメラやノッチなどお呼びではありません。フロントカメラはベゼルの上部に存在します。
セルフィーやSNS映えとは無縁な画質の16MPフロントカメラです。一応、お粗末な美顔モードはありますが、ゲーマーが自撮りする機会が、はたしてあるでしょうか?
側面にはゲームの物理ボタンとして使用可能なタッチセンサーが2つあり、水冷に加えて空冷ファンも搭載しているため、ニンテンドーSwitchのような排気口があります。
冷却性能はおそらく世界一ですが、本体温度は42度を超えることがあります。
ここまでお読みいただいただけでもRed Magic 3が、さまざまな日常の使い勝手を敢えて削ぎ落とし、ゲーム性能に特化した特殊なスマートフォンだということがお判りいただけると思います。
基本スペック | |
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ディスプレイ | 6.65インチ, 1080 x 2340, 有機ELディスプレイ, 388ppi |
サイズ | 171.7 x 78.5 x 9.7mm, 215g |
システム | |
OS | Android 9.0 (Pie) |
Soc | Qualcomm Snapdragon 855 |
CPU | Kryo 485 8コア, 2.84 GHz |
メモリ(RAM) | 6GB / 8GB / 12GB |
ストレージ | 64GB / 128GB / 256GB, sd_card microSDスロット無し |
カメラ | |
メインカメラ | camera_rear 48MP, F値/1.7, LEDフラッシュ, PDAF |
メインカメラ特徴 | camera |
前面カメラ | camera_front 16MP, F値/2.0 |
センサ類 | 指紋認証センサ, 加速度センサ, 近接センサ, ジャイロ, コンパス, 顔認証ロック |
機能 | 防水 IPX 5, あらゆる方向からの噴流水を受けても問題なし, イヤホンジャック あり |
その他特徴 | ICE 2.0放熱システム(液冷+内部ファン), RGB発光パネル, DTS X Ultra+デュアルSmart PA, 仮想ホットキー |
バッテリー | battery_charging_fullType-C 1.0, 5000mAh |
購入方法など
今回購入したのは8GB+128GBで、色はブラックでした。他の色はまだ発売されていませんでした。
公式サイトから直販での購入です。購入時点では送料無料でDHLでの配送でした。5月31日に注文し、翌日に香港から発送され、同日大阪に到着。6月3日に自宅に届きました。
価格は479ドル(約5万2000円)で、別途商品到着時に、配送の佐川急便に輸入内国消費税等1300円+立替納税手数料1080円を支払いました。
※注意:Red Magic 3を検索すると悪名高いヴェルテが検索上位に出てきますが、ヴェルテでは絶対に買ってはいけません。代金は受け取りますが、商品は送ってきません。Paypalからの異議申し立ても無視するくせに、宣伝メールは頻繁に送ってくるスパムサイトです。
同梱物など
本体の箱と別に小さな黒い箱がついていて、中には日本用のUSB充電アダプターが入っていました。充電の際はちゃんと「高速充電中」と表示されます。
取扱説明書は日本語での表示は2ページ──小さな紙一枚です。英語での表記も大したことは書いてないので、操作は己の直感のみを信じて行うことになります。
外観や質感
角の丸いアルミ製ボディです。触った感触や質感はUMIDIGI F1によく似ています。ベゼルの厚みや正面から見た感じもよく似ています。
UMIDIGI F1は安さに全振りしたスマホですが、Red Magic 3もスペックに全振りしているので、デザイン思想に似たところがあるのかもしれません。
背面にはゲーミングスマホらしい意匠が凝らしてあり、シングルカメラや指紋センサーも前のRed Magicシリーズを踏襲したデザインに組み込まれています。
電源ボタンがある側面には音量ボタンの他、2つのタッチセンサーと排気口があり、メカメカしい雰囲気です。
反対の側面にはドッキングステーション用の端子が剥き出しです。
電源ボタンではなく、ゲームモードに切り替える物理ボタンがワンポイントで赤いのがRed Magicらしさといえるでしょう。
初期設定
電源を入れるとまず英語でのポリシー画面が表示されます。了承すると初期設定が始まり、言語を選択することが可能です。
このあたりもAmazonで購入したUMIDIGI F1と似ています。ここで日本語を選択することなく「START」をタップしてしまうと英語で初期設定を行うはめになります。
初期設定中は、Red Magic 3のバイブレーション機能がブルブル震えます。その振動の細かさは、まさにニンテンドーSwitchのHD振動を思わせる繊細さとパワフルさです。
Red Magic 3には4D Shockという特定のゲーム専用の振動モードがあり、振動機能の迫力はおそらくスマホ界トップクラスでしょう。
スポーツカーにベンチシートなどない
さあ、Red Magic 3の初期設定を始めたら、初心者お断りスマホの現実と向き合う時間です。まず最初の難関は初期設定途中に待ち受けるフォント設定です。
フォント設定バグ
画像を見ていただければお判りのとおり、初期設定時にはホームボタンや戻るボタンがありません。つまり、フォント設定を行うと、その画面から先に進むことも戻ることもできなくなります。スワイプしてクイック設定を開くこともできませんでした。
バグを放置すると、しばらくして画面が消えました。再度画面を点灯させたところ、なぜかフォント設定の前の初期設定が巻き戻っていました。
バグっぽい挙動のおかげでトラップから脱出成功です。フォント設定はスキップ推奨です。
Redmagic OS 2.0の罠
初期設定の最後には、通常のOSではなく横画面のゲーム専用モードであるRedmagic OS 2.0が起動します。
Redmagic OS 2.0から通常のOSへ戻るために「Back」をタップするものの「Please disable the Compete button to exit」の表記が出るのみで、Redmagic OSを終了できません。
Competeボタンがなんなのか、取説をめくるもどこにも記載がありません。
ググったところ、側面の赤い物理ボタンがCompeteボタンだと判明。Competeボタンで通常OSとRedmagic OS 2.0を切り替えられることが判りました。
ちなみにCompeteボタンのことを取説には英語では「Game Boost Mode」、日本語では「競技キー」と表記していました。(わかるかそんなもん! 鬼畜か!)
不具合だらけ
ここで、わずか2日間の間に筆者が遭遇した不具合を列挙しましょう。
・唐突に画面輝度が4%になったり、点灯しなくなる。
・着信音がならない。
・アイコンをタップしたのとまったく別のアプリが何度も起動する。
・写真を撮ろうとしてもカメラがタッチに反応しない。
・ブラウザや電子書籍でタッチの反応が悪く、スムーズにスクロールできない。
・なぜか突然指紋センサーが反応しなくなり、再起動でなおる。
これらはバグなので、いずれ修正されるでしょう。しかしバグ以外の問題もあります。
画面の明るさを自動調節にしていると、頻繁に明るさを変えるせいか画面のチラつきが目立ちます。
DC調光なのでチラつきは軽減されているはずですが、少なくとも自動調節ではかなり気になります。
6.65インチの大画面ですから、画面分割しても初期のスマホぐらいの画面サイズになります。6GBのメモリもありますから、画面分割での作業は捗るはずです。
ところが、初期状態ではいまどきAndroidでは当たり前の画面分割ができません。
もちろんOSはAndroid 9.0 (Pie) で、本来は画面分割に対応しているはずです。
ところが、Red Magic 3はホームボタンや戻るボタンが表示されているナビゲーションバーが独自のもののようで、通常のAndroidと同じ機能を果たしません。(ホームボタン長押しでのGoogleアシスタント起動はできます)
設定を見る限り、ホームとタスクを統合した「-」マークの新ナビゲーションバーへの切り替えもできないようです。
ホームアプリはGoogle NowランチャーやPixelランチャーと中身が同じQuickstepですが、UIは細かいところで独自仕様になっています。
最終的に画面分割は「Split Screen」というアプリを入れることで可能になりました。
音楽ファイルをコピーしようとしたときにも少し躓きました。
Red Magic 3とPCをケーブルで接続すると、CDドライブとして認識されます。中にはオートランのドライバが入っています。もちろんいまどきのWindowsで、オートランが自動実行されることはありません。ZTEのドライバアプリは、2013年の古いものでした。
いまどきドライバのインストールが必要なスマホも珍しいですが、ドライバをインストールしてもなにも起こりません。スマホにもなにも表示されず充電されているだけです。ケーブルを差し替えても、なにも起こりません。
スマホのクイック設定を開くと、通知されるわけでもポップアップするわけでもなく、そっと小さな字で「Androidシステム・この端末をUSBで充電中」と表示されています。
過去にいくつものスマホで経験済みなので、ここをタップしてファイル転送に進めばいいのだとわかりますが、初心者にはここをタップしろというのは難しいでしょう。UMIDIGI F1の同様の表示と比べても、本当に目立ちません。
ちなみにHuaweiのスマホではUSB接続したと同時に、スマホ画面いっぱいに選択肢が表示されます。ドライバのインストールも不要です。
どちらがよりわかりやすいかは、いうまでもありません。Huaweiのスマホは理由もなく売れたわけではないのです。
そういう意味では、Huaweiのスマホはまさに大衆車です。いわばプリウスといっていいでしょう。それに対し、Red Magic 3はスポーツカーです。なんならフォーミュラカーです。ラグジュアリーなベンチシートなど望むほうが間違っているのかもしれません。
スマホに使い心地を期待している方が、スペックや価格につられて購入してはいけません。Red Magic 3を普段使いで使用することは、スポーツカーで近所のスーパーに買い物に行くようなものです。
スポーツカー・スマホの本領発揮
Red Magic 3は、とにかくとっつきにくいスマホです。巨大です。身長188センチの筆者が持っても大きいと感じます。重いし、滑りやすいです。意識しないとスマホ指になります。スマホカバーをつけるなんて考えたくもありません。その上バグだらけです。
しかし、扱いに慣れてくると、スポーツカーのようなピーキーな性能が顔をのぞかせます。
唯一無二の物理ボタン
PUBG MOBILEやフォートナイトのようなTPS(三人称視点シューター)をプレイする際に「ゲームパッドのようなトリガーボタンがあったらいいのに」と、ゲーマーなら思うでしょう。
Red Magic 3には、それがあります。
通常、左右2本の親指で画面をタッチしながら操作するところ、Red Magic 3は左右の親指+人差し指、計4本の指が使えます。
言うまでもなくこれは、ゲームにおいて大きなアドバンテージになります。
Redmagic OS 2.0の設定から、赤い「L」「R」「Touch Btn」をそれぞれ操作したいアイコン上にドラッグするだけで操作可能になります。
LRのタッチセンサー+指紋センサーを使い、タッチパネルに代わって操作することができます。指で画面が隠れないので、画面が見えやすいという意味でも有利です。
大迫力の4D SHOCK
PUBG MOBILEも、もちろんHD画質でプレイ可能。物理センサーでの操作に対応しているほか、4D SHOK対応なので振動機能はきめ細かく、それでいて到底スマホとは思えない迫力です。
安物ゲームパッドの雑な振動とは比較になりません。
DTS 7.1ch、3Dサラウンド
ステレオスピーカーのサウンドは、お行儀のいいスマホには出せない大音量でゲームを盛り上げます。PS Vitaや3DSといった過去の携帯ゲーム機より大きく迫力があるサウンドです。
手のひらの中でどでかい音が鳴り、震えるスマホを握ってプレイするアスファルト9は、スマホゲームの概念を覆してくれます。
筆者は元来スマホゲームには否定的な立場でしたが、4D SHOKとDTS 7.1チャンネル3Dサラウンドでプレイするアスファルト9には、悪いイメージを吹き飛ばす楽しさがありました。
Red Magic 3で、まちがいなくスマホゲーム体験は変わります。
GoogleのSTADIAが、まもなくサービスを始めます。大画面で大音量、ど迫力のRed Magic 3は、スマホゲーム新時代を楽しむのに最高のパートナーとなるでしょう。
意外に頑張るカメラ
ゲームに全振りしたRed Magic 3は背面もシングルカメラです。とはいえソニーIMX586センサー搭載の48MPです。
明るい場所でも暗い場所でもそれなりに撮れます。必要にして十分な性能です。
いただいた質問への回答
読者の方からいただいた質問への回答です。レビュー中に書いたものは省いています。ご了承ください。なお、ご質問はこのレビュー記事公開時点をもって締め切らせていただきます。
Q. Playストアが入ってますか?
A. 公式ストアで購入したものには、Google Playストアが最初から入っていました。初期設定時に前のスマホからほとんどのアプリやデータ、設定を引き継ぐことができました。
Q. Redmagic OS 2.0における独自機能は豊富にあるようですが全て日本語化不可ですか?
A. Redmagic OS 2.0は英語です。言語設定もありません。
Q. クイック設定を表示させるには画面上部まで指を持っていかないと開けませんか?それとも画面中央からでも下へスワイプすれば開けますか?
A. 画面の上端から下へのスワイプだけでしか開けません。画面が縦に長いので地味に使いづらいです。
Q. 壊れるの覚悟で冷凍庫でベンチマークしてくださいwwww
平常時の381286ポイントから、390245ポイントに上がりました。
ちなみに冷凍庫の中で、Redmagic OS 2.0を使用。すべてのタスクを終了し、空冷ファンを回転、Super Performance Modeで実行しています。
回収した時点で本体はキンキンに冷えていましたが、バッテリー温度の表示は15.5度でした。
まとめ - Red Magic 3はゲーム機だ
Red Magic 3を普段から持ち歩きたいかといわれれば、遠慮したいスマホです。不具合は多いですし、大きく重いのが致命的です。
Red Magic 3は主客逆転しています。ゲーム機としてのRedmagic OS 2.0こそがRed Magic 3の本来の姿なのかもしれません。
かつてプレイステーション3ではLinuxを起動することができました。確かに不便なPCとして使うこともできましたが、プレイステーション3はあくまでゲーム機であり、Linuxはおまけでした。
Red Magic 3もあくまでゲーム機であって、Androidスマートフォンはおまけと考えれば不満は減るでしょう。
良くも悪くも尖ったスマートフォンであり、絶対に万人向けではありません。
ハードコアゲーマー向けのガジェットなので、高性能なスマートフォンとして購入するのはやめたほうが無難です。逆にあなたがゲーマーで、ゲーム用のサブスマホを探しているならかなりおすすめです。
Redmi K20 ProやOneplus 7 Proのように、ちゃんとしたスマートフォンでありながら、ゲーミング・スマホ機能も充実したハイエンドモデルと「どちらが自分に向いているか?」よく考えてから購入すべき商品でしょう。
何が何でもゲーム優先というゲーマーにはコレ
ゲーマー以外はRedmi K20 Proで決まりって事ですな