ソフトバンクの重荷は解消されるのでしょうか。
マンハッタンの連邦地方裁判所判事ビクター・マレロ氏は、スプリントとTモバイルの合併を認める判決を出しました。2社の合併は13の州とコロンビア特別区の司法長官から「業界の競争が弱くなり、消費者に不利益を与える」として訴訟されます。しかし今回の判決で、2社の合併はより現実的なものとなりました。合併が実現すれば、1億人の顧客をかかえる巨大通信キャリアとなる見込みです。
とはいえ原告側は控訴の意向を示しており、合併が実現するかは依然不透明なままです。
合併はソフトバンクの悲願
アメリカの通信業界トップは「AT&T」と「Verizon(ベライゾン)」の2社で、今回合併するのは業界3位の「TモバイルUS」と業界4位の「スプリント」です。
スプリントは日本のソフトバンクが2013年に買収。ソフトバンクは当初Tモバイルも買収して両者を合併し、アメリカで3大キャリア体制を築くことを狙っていましたが、FCC(連邦通信委員会)が競争が低下し、価格上昇につながるとして反対し、頓挫。
ソフトバンクの目論見は崩れ、財務基盤が弱いスプリントは不振が続きます。当時業界4位だったTモバイルにも顧客数で抜かれてしまっていました。
転機はトランプ大統領の誕生。規制撤廃が進んだ新政権の元で合併計画が本格始動し、スプリントがTモバイルに事実上吸収される形にはなったものの、2018年に両社間で最終合意が発表されました。
司法省・FCCの支持の元、2019年7月に合併は大筋で認められましたが、14の州検事総長から提起された訴訟などが残っており、合併への障害が残っている状況でした。より詳しい経緯は下記の過去記事で紹介しています。
合併は今後進むのか?
今回の判決を受けて、合併計画は一歩前進したと言えます。
マレロ判事は判決で「業界の2大プレイヤーが消費者に多くの変化をもたらす、業界の異端児となるだろう」と称賛しています。また今回の判決を受けて、TモバイルCEOジョン・レーゲル氏は「今日はこの合併にとって大きな勝利でした」とコメントをしています。
しかしニューヨークの検事総長レティシア・ジェームズ氏は「携帯電話を利用しているすべてのアメリカ人にとっての損失」として、控訴の意向を示しています。今回の判決が合併に向けての大きな一歩であることに違いありませんが、実際に合併が実現するかは依然不透明な状況が続いています。
加入者1億人超「新生Tモバイル」誕生へ
TモバイルUSとスプリントの合併後、新会社の名称は「Tモバイル」となるそうです。
いままでの顧客を引き継ぐため、合併直後は加入者が1億人を超す巨大通信キャリアとなります。これは業界1,2位のAT&TとVerizonにとって大きな競争相手が出現することを意味します。ただしスプリントのプリペイド通信プランを契約していたユーザーは「Dish Network」の顧客となる見込みです。
Dish Networkは以前の記事で紹介した通り、スプリントに代わる第4の通信キャリアとして業界への参入が期待されている会社です。もともとはケーブルテレビ会社で、合併が進めばTモバイルの通信網を利用して、アメリカの通信業界に参入する予定となっています。
またTモバイルは誕生後の3年間「同等以上のプランを同等以上の価格で提供する」ことも約束しています。つまり「不当に通信料金を上げたりしないよ」と宣言しているわけです。
日本でも通信キャリアの競争については問題として取り上げられますが、アメリカでも同じような問題があるようです。今後この問題がどうなるかは分かりませんが、ユーザーとしてはより良いサービスを、より安い価格で受けたいですよね。
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