インド市場におけるサムスンの快進撃【マーケットコラム】

中国に次ぐ人口を有するインドのスマホ市場はその規模も非常に大きいものです。その巨大マーケットで存在感を見せていたかつての王者サムスンですが、ここ最近になり再びその勢いを見せています。今回のマーケットではそんなサムスンの快進撃について取り上げます。

スマホ業界を語る上で外せないインド市場

中国のスマホ市場に並ぶ市場規模を誇るとされているインド。今となっては世界的にヒットしたRealmeも、もとはインド市場を攻略するため...
スマホ業界が技術革新の面で停滞の傾向にある今、メーカー各社は差別化を課題と見ています。インドという競争が非常に激しい市場において、地...

インドのスマホマーケットについては当サイトでも多く特集してきました。上記の記事より現地事情等をおさらいすることが可能です。

シェアから見るサムスンのパフォーマンス

サムスンですが、インドのスマホ市場では王者とも言えるポジションを確立していた時期がありました。2017年迄は同国で一番のシェアを概ね維持してきましたが、2018年にXiaomiの侵攻を許してから首位を譲ることになります。

以前は30%前後のマーケットシェアを維持してきたサムスンですが、そのパイをXiaomiに受け渡すことが続いており、2021年はQ1からQ4まで20%を切る時期もありました。一方のXiaomiはこの数字を30%前後まで上げる成功しています。現在のサムスンはマーケットシェアの面では中華メーカーに強く押されていることに変わりありません。

Source: Counterpoint

ブランド力においては強いがロイヤリティに劣る

サムスンというブランドはインドにおいて高い品質イメージに直結しています。スマホ分野についても同様であり、高い品質が日系メーカーやインド地場メーカーの製品を差し置いて人気を伸ばした秘訣でした。

最大のライバルとして存在感を見せているXiaomiやrealmeは、ブランド力ではなくユーザーのロイヤリティ確立に重きを置いたことが特徴です。ファンイベントを積極的に行ったほか、ユーザーと会社自体のコミュニケーションが活発になっており、こうした動きがロイヤリティを向上させました。

サムスンはユーザーへの一方的なマーケティングが多くロイヤリティ向上に消極的であり、ここがXiaomiに隙を与えたとも考えられます。

10000ルピー以下の低価格で再び勢いを見せる2022年

インドマーケットにおいて非常に重要となるのが、10,000ルピー(¥16,661)以下のレンジです。Xiaomiを含む中華メーカーはこの価格帯で激しい競争を拡げています。

上は現地のAmazon.inのスマホベストセラーランキング(2022年12月9日時点)のデータです。10,000ルピーを切るモデルではサムスンの製品が二機種も上位にライクインしていることが確認できます。かつ、単純なランキングとして見るとサムスンはXiaomiよりも良い結果を残していることも瞭然です。

マーケティングでは2023年のトレンドを作ることになるか

画像:ミスリードに繋がりかねない広告だが2023年には見慣れるのだろうか

サムスンはインド市場において仮想メモリをアピールとしたマーケティングを強化しています。同社が12月に発表したGalaxy M04では、8,000ルピー台(1.3万円台)でありながら「実質」8GBのメモリを搭載する点をアピールとしました。

同モデルの実際のメモリ容量は4GBであり、「8GB」という数字は仮想メモリの4GBを加えたものです。やや紛らわしさもあるアピールですが、この仮想メモリも含めてしまうマーケティング手法が2023年のトレンドとなる可能性があります。

現地の女優・俳優を起用したマーケティングで逆転を狙う

映画の文化でも知られるインドでは、現地の女優・俳優を起用したマーケティングも一般的となっています。モバイル業界ではXiaomiは予算カットのため消極的ですが、サムスンは逆の動きを見せています。

こうしたマーケティングは中華メーカーにないものであり、インド現地で長くビジネスを続けブランド力があるサムスンならではと言えます。

自動データ切り替え機能がミドルレンジにまで搭載

画像:最新モデルのGalaxy M53ではこの機能に対応した

サムスンの最新モデルの特徴として自動データ切り替え(Auto Data Switching)と呼ばれる機能があります。SIMカードが二枚セットされている状態において、主回線の接続が弱い際に副回線に自動的に切り替えを行う機能です。

今もなおインドではSIMカードの二枚持ちが珍しくなく、常にインターネット回線に繋がった状態を維持することが可能になります。

2023年のカギはGalaxy Mシリーズだろう

サムスンが2023年のマーケットシェアでXiaomiを勝ち抜くには、Galaxy Mシリーズの低価格帯ラインナップがカギとなるでしょう。

10,000ルピー以下の低価格帯ラインナップにおいて、インドでは「デュアルカメラ・指紋センサーなし」の二つがユーザーの大きな妥協ポイントとなってきました。

画像:多くのユーザーが妥協するポイントはカメラと指紋センサーである

サムスンの新作となるGalaxy M13は9,499ルピー(¥15,654)でありながらトリプルカメラを実現したモデルです。Xiaomiでも現在のラインナップでは10,000ルピー以下でトリプルカメラは実現できておらず、インドの消費者がサムスンの魅力に再び気づくようになっています。


毎年トレンドが変化し、ユーザーからの期待される製品レベルも上がっているインド市場。2023年は王者サムスンによるXiaomiへの快進撃が活発化することになるでしょう。

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Writer

Sekey
アジア市場を中心にレポート

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 コメント

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  1. 匿名 2022.12.19 03:06 ID:62684af50 返信

    そもそも政府がシャオミ潰しに走ってるんだから逆襲もくそもないような

  2. 匿名 2022.12.19 07:36 ID:276c267ce 返信

    スマホとしては珍しい「中国生産じゃない」特徴が
    日本以外でも役に立つ時代が来たんだな

    • 匿名 2022.12.20 05:42 ID:78e3d39e3 返信

      コア部品がサムスン自社製造とはいっても、使われてる部品の多くを中国部品が占めてる現実もあるわけで、「中国生産ではない」という事がとても曖昧な気がするんだ

      • 匿名 2022.12.20 10:03 ID:7aada0b61 返信

        部品と製造は別だと考えるのが普通なんじゃない?
        中国産の食材と韓国人シェフを同じには見ないみたいな?

    • 匿名 2023.01.04 04:49 ID:fa6363b68 返信

      箱見れば分かるけど日本メーカーは大半が中国製造だよ。
      Samsung(あとLGも)は本当の意味での韓国製造が多い、付属アクセサリーもそうでびっくりした記憶がある。

  3. 匿名 2022.12.19 10:57 ID:22e94cc02 返信

    さっさとSIMフリー展開を拡充して欲しい

  4. 匿名 2022.12.21 17:15 ID:57bcb69f2 返信

    キムチカレーか
    不味そうだな

  5. 匿名 2022.12.24 17:13 ID:b65650fee 返信

    興味深い記事だけどRoyalty=ロイヤルティかな?
    apple製品のロイヤルティの高さってエコシステムといえば聞こえがいいけど、
    要はユーザーの囲い込みなんだよね。
    周辺機器やアプリ買っちゃうと乗り換えがしにくいみたいな。

    むしろあまりロイヤルティ高くないのにシェアが高いってのは
    オープン性を維持しつつ端末で勝負できてるわけで、すごいことだと思う。