サムスンの日本戦略とECへの販路拡大【マーケットコラム】

日本国内で「Galaxy」ブランドのスマホを展開するサムスンは、4月に入り国内向けの新製品発表を行いました。その製品ラインナップは海外で既に発売がされたGalaxy Tab S8シリーズやGalaxy M23 5Gを含んでおり、これまでのサムスン日本法人にはなかった動きだと話題になっています。

2022年に入り突如これまでとは違う動きを見せたサムスンは日本市場をどう見ており、どのような戦略で攻略しようとしているのか、この点をフォーカスとして取り上げます。

東南アジアや中国で強い存在感を見せるOPPO。2018年2月にR11sというセルフィーカメラ性能が目玉の高価格スマホを持って日本市場...

日本法人が販路をECに拡大

これまでのサムスンですが、日本国内市場では大手キャリアから製品を消費者に届ける販路に絞りこんだアプローチを行っていました。日本の消費者がサムスンの製品を手にしたい場合、正規ルートのメーカー保障がある製品は大手キャリアから入手する必要がありました。

2022年4月にサムスン電子ジャパンが発表したGalaxy M23 5GはAmazon.co.jpから発売される製品ということが特徴です。同製品はキャリアを介さずともAmazon.co.jpから直接SIMフリー機として購入が可能になります。

Galaxy M23とGalaxy M33の二機種がサムスンより正式に発表されました。サムスンはインドおよびそのほかのマーケット向け...

サムスンにとってGalaxy Mシリーズを日本市場に投入するのは初である上、ECという販路からの発売もこれまでになかった動きです。

今回日本市場に初投入となったGalaxy Mシリーズは2019年にインドで生まれた比較的新しいシリーズラインである。インド現地ではGalaxy Sシリーズを超えると言ってよい程の人気であり、バッテリー容量の大きさがセールスポイントとなっている。

背景にあるのは日本のSIMフリースマホの市場規模拡大か

画像:OPPOは国内SIMフリースマホ市場で大きな成功を見せたメーカーの一つだ

日本のSIMフリー機市場ですが、消費者の通信費節約のニーズに拡大に合わせて年々成長していることが特徴です。

2020年までの同市場で大きな存在感を見せていたのは日系メーカーであるシャープとHuaweiです。二社が強い市場シェアを握っていた状況を見て新規参入をしてきたのがOPPOとXiaomiであり、これにより市場には価格と品質の維持への圧力がかかったと言えるでしょう。

2022年の今は政府主導で通信業界の大改革が進められ、キャリアの解約金制度の実質的な撤廃や各キャリアの低価格プラン投入などの動きが出ています。消費者もこれまでよりキャリアの切り替えができるようになり、SIMフリー機の需要はますます高まることが期待されています。

こうして四社がシェアの奪い合いをしている中でもSIMフリー機市場から距離を置いていたのがサムスンでした。かつてよりGalaxy機のSIMフリーモデルの発売についての消費者からのニーズは強く、かつ市場の成長性なども踏まえ今回のEC販路拡大が実現されたと考えられます。

消費者側がスマホを用意しSIMカードはキャリアから買う - 海外では主流のスタイル

画像:公式ホームページより

日本の通信業界ですが、これまではスマホとSIMカード(通信プラン)をキャリアから同時契約・購入するというスタイルが主流となっていました。

しかし、前述の通り上記のようなスタイルはもはや唯一の選択肢ではなくなっているのが現状です。海外では主流となっている「SIMフリー機を消費者が用意し、SIMカードはキャリアから契約・購入するスタイル」が日本国内でも徐々に普及しています。

サムスンとしてもこの強まる消費者動向を認識しており、今後は日本のSIMフリー機市場での存在感も強めていく方針であると理解できます。なお、サムスンは日本市場でもシェア拡大に苦戦をしており、キャリア販路だけでは販売台数を確保できなくなっているという実情もあると考えられます。

画像:ソニーはSIMフリーモデルを国内でも販売開始し大きく話題となった

実際のケースとして、ソニーもXperia機の販路をキャリア販売から自社EC販売(ソニーストア)に拡大しています。このケースはこれまでSIMフリーモデル欲しさに海外からXperia機を輸入していた消費者からの高い支持を集めた良い例となっています(※電子製品の海外からの輸入および使用は法律に基づいて行う必要があります)。

シェア拡大に必要なのはイノベーション

画像:Galaxy M23 5Gの予約購入でMicro SDカードがもらえるという魅力的なキャンペーンも実施している

サムスンは日本市場でのシェア拡大に間違いなく苦戦をしており、新たな戦略が求められていることは確かです。シェア拡大のために必要となっているのはイノベーションであり、サムスン電子ジャパンはこれまで未開拓であったEC販路を開拓する戦略を採用したとみられます。

Galaxyブランドは日本市場ですでに充分と言えるだけのブランド認知と評判の両方を備えています。サムスンが日本のSIMフリー機市場で大きな存在感を示し始めるのには長い時間は要さないでしょう。

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Writer

Sekey
アジア市場を中心にレポート

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 コメント

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  1. 匿名 2022.04.13 18:38 ID:139f2a556 返信

    バンド削りについては各キャリアが言い訳していてワロタ。
    AQUOSとか露骨すぎて草も生えない。
    こんな商慣習やってるの日本だけなのかね。

    sharp 製品ラインアップ
    ttps://jp.sharp/k-tai/lineup/

    競争ルールの検証に関するWG(第28回)
    ttps://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/denkitsushin_shijo/02kiban03_04000795.html

    • オールナイト 2022.04.13 19:22 ID:139f2a556 返信

      バンドを削ることでSIMフリーになってもそのキャリアを使わないといけないようになっている。なので、キャリアは快くこの利権を手放すことをしません。これを終わらせるためには総務省の方々が規制改革を行ってどのバンドも削られなくなることで、消費者がバンドを気にせずにどのキャリアでも選べるようになるといいですね。

      • 匿名 2022.04.13 19:33 ID:139f2a556 返信

        そうだよね。官僚なんだから利権側に立つのではなく、国民の利益を考えてバンド開放ぐらいしてもらわないとキャリアVS総務省の戦いで総務省の負けですね。

    • 匿名 2022.04.13 19:23 ID:f0e0d2992 返信

      GalaxyならまだしもAQUOSとかわざわざバンド削るメリット少ないしな

  2. 匿名 2022.04.13 19:40 ID:139f2a556 返信

    キャリア利権が一定数買い上げてくれるからXperia、arrows、バルミューダみたいな弱小メーカーでもやっていけるわけだからね

    バンド削りをなくされて困るのはむしろソニーや富士通みたいなメーカー側なんだよ

    • 匿名 2022.04.13 21:11 ID:139f2a556 返信

      それでいい、守られてきた結果がこれなんだから
      スマホで大敗した反省を活かして、次世代デバイスを見据えた研究をしてもらいたい

      • 匿名 2022.04.14 05:36 ID:56362537f 返信

        コスト競争では絶対に中華メーカーには勝てない
        日本メーカーが守られるず、潰れ、スマホが全て中華に置き換わるのは安全保障上望ましいものではないよ

    • 匿名 2022.04.13 23:02 ID:139f2a556 返信

      日本のメーカーだから思いつきにくいと思うがどう考えても資本主義社会でシェア取れない弱小メーカーがキャリアに守られてるのは歪というか日本らしいというか
      普通なら潰れるべきだし

      • 匿名 2022.04.14 05:38 ID:56362537f 返信

        そうして潰れた結果、中華に支配されるのは、目先の安さに釣られてロシアに天然ガスを依存したドイツと同じ

        資本主義の競争原理は安全保障の観点からは望ましくないこともあるのだよ

        • 匿名 2022.04.14 06:42 ID:9851a4515 返信

          中華に支配される前に既にiPhoneに5割くらいシェア取られてる時点でクソ情けないし中華に支配される訳ないぞ。精々全盛期Huaweiくらいでしょ
          そもそも自国ならGalaxyみたいにiPhoneよりもシェア高いですとかならまだしも日本の国産スマホなんて国産というプラシーボ効果以外良いとこないんだよなぁ

          • 匿名 2022.04.14 07:03 ID:9851a4515

            アメリカだとしてもどこか一つに大きく依存することが問題なんだよ
            天然ガスの依存先を多角化して、影響を最小限に抑える
            選択肢は多ければ多いほどよいのだよ

            >>中華に支配される訳ないぞ
            まるでわかってないねw
            もう世界は中国に支配されてるんだよ
            アメリカが制裁と言う名の自国産業保護をしてるからこの程度で済んでるだけ
            日本のキャリアスマホも同じこと

  3. 匿名 2022.04.13 21:14 ID:139f2a556 返信

    外国にも利権というかキャリアに採用される事のメリットとその確保の画策でありそうだけどな…>バンド削り。法律で規制でもかけられてなければ

    でもシェア盤石トップのAppleが全バンドに対応してる様に(つまり売れてるならバンド削りなんてしてキャリアの顔色伺う必要ない)通年シェア2位のシャープももはやキャリア忖度せずやっていけるだろうに

    そこがキャリアに忖度しないとやっていけないならばそれ以下のメーカーはどうなんだよ…となる

  4. 匿名 2022.04.14 08:26 ID:9851a4515 返信

    某社が発表したバンド削りに関する資料の中に
    「※Android端末に限る。iOS端末に関しては当社に割り当てられた周波数情報をApple社へ提示し、どの周波数に対応するかはApple社の判断」
    て書いてあってわろた。Appleつえー。サムスンもそんぐらい強気で行こうや

  5. 匿名 2022.04.14 13:32 ID:9851a4515 返信

    その昔、auのLG端末でeBayで買ったコードでSIMロック解除出来てdocomoでも使える物があったのだけど、auはアプデでわざわざ潰しにきたという事があってな

    • 匿名 2022.04.15 06:06 ID:8865936b5 返信

      Motorola端末で同じようなことができた時も
      auはアプデで潰しに来たなぁ
      まぁ当時はインセダブダブの時代だったから
      安く売った端末他社で使われてたまるかという
      キャリアの気持ちは分からなくもないけど、
      客からしたら買った者の便利機能潰されるのは気分悪いわな

  6. 匿名 2022.04.16 00:56 ID:d2dff2941 返信

    総務省が国内正規販売端末は指定バンドを搭載する事CAはキャリア恩恵としても、これで終わりなのにやらないのはキャリアの利益とかそっち側見てるって事

    にしてもS22シリーズの国内正規価格高過ぎ