米政府は大統領令により、Tiktokを運営するバイトダンス社に対して、約90日以内にTiktokを売却するか、若しくは、アメリカから撤退するかを求めています。
Tiktokを買収する企業の候補として当初名前が挙がったのはMicrosoftで、同社は買収検討を公式に認めています。その後、Twitterに加えてOracleもTiktok買収に手を挙げているようです。
バイトダンス社の出資者には日米の企業・ファンドが多い
Tiktokを運営するバイトダンス社は中国企業でありますが、日米の企業・ファンドが多く出資しています。なお、バイトダンス社はTiktok以外にも中国版TiktokであるDouyin等いくつかの事業を営んでいます。
Softbank、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(アメリカの大手投資ファンド)、セコイア・キャピタル(アメリカの著名ベンチャーキャピタル)、等
米政府が問答無用でTiktokをアメリカ市場から締め出してしまえば、日米の企業・ファンドも少なからず金銭的損失を被ります。トランプ大統領としても、バイトダンス社の投資家に損失を与えずにTiktokへの中国の影響を取り除く方法として、Tiktokの非中国系企業への売却を求めているのでしょう。
ロイター通信によると、バイトダンス社の一部の投資家は、Tiktok事業の売却代金として約5.3兆円を期待しているようです。
報道されている買い手候補の概要
Tiktokの著名な買い手候補としては、Microsoft、Twitter、Oracleが挙がっています。もちろん、報道されていない会社が水面下買収検討している可能性もあります。
候補者名 | 株式時価総額(概算) | Tiktok事業との関連性 |
Microsoft | 約170兆円 | 収益の柱は法人向けのソフトウェアライセンス事業・クラウド事業だが、消費者向け事業も強い。SkypeやLinkedinを買収した実績。20年以上前から中国進出済み(海賊版等の対応で苦労してきた。) |
約3兆円 | 主に消費者向けのSNS事業(アプリ事業)を展開。収益源は広告で、Tiktokと似ている。中国本土では(実質)サービス展開していない。 | |
Oracle | 約18兆円 | 収益の柱は法人向けソフトウェアライセンス事業で、消費者向け事業は小さい。20年以上前に中国進出済みだが地場の競合の台頭により苦戦中。 |
Twitterは、Tiktok買収による本業へのメリットが最も大きそうです。が、株式時価総額3兆円の会社が5兆円のTiktokを買収する、という「小が大を食う」取引となります。米政府としてはバイトダンス社に米国市場から手を引いてほしい訳ですから、Twitterは5兆円という買収対価を株式で支払う訳にはいかず、現金を用意する必要があります(株式で支払った場合、Twitterはバイトダンス社の子会社になってしまいます。)Twitterにとって難易度が相当に高い買収案件でしょう。
MicrosoftやOracleは、クラウド事業強化のためにTiktok買収を狙っているという報道があります。筆者自身は、このTechCrunchの記事を読みましたが、余り説得力がある内容だと思いませんでした。ただ、特にOracleが5兆円を支払ってTiktokを買収する場合、「クラウド事業の強化」のような買収の目的・本業上のメリットについて株主に説明する必要があるでしょう。
Microsoftの場合、Oracleよりも時価総額が10倍(約170兆円)ある巨大企業で、Skype(約1兆円)やLinkedin(約3兆円)を買収した実績があります。2011年にSkypeを買収した際には、「SkypeがGoogleに買収されるのを防ぐ」というのが目的の一つだったと言われています。Oracleに比べると、Tiktok買収の意義を見つけやすいような気がします。
所謂「GAFA」は買い手候補には挙がっていない
Google、Amazon、FacebookそしてAppleという所謂「GAFA」のうちAppleを除く3社は、Microsoftと比べてもTiktok買収する事業上のメリットがより大きいと考えられますし、5兆円の買収資金も用意することも可能でしょう。
ただ、過去25年以上、儲けすぎ批判・独占禁止法適用による解体論を切り抜けてきたMicrosoftに対して、Google / Amazon / Facebookにはこれらから過去のMicrosoftと同じような試練が待ち受けていそうです。Tiktokを買収して更に巨大化することでむしろ解体論が加速する等の政治的リスクもおそれているのではないでしょうか。
トランプ大統領はOracle推し?
トランプ大統領はOracleによるTiktok買収検討を支持していると報道されています。Oracleの創業者兼会長のラリー・エリソン氏はシリコンバレーのIT企業経営者としては珍しいトランプ支持者として知られます。
なお、米政府が今回設定したTiktok売却完了期限は11月半ばで、米大統領選挙は11月3日です。いろんな意味で暫くアメリカから目が離せませんね。
Source: Financial Times, Reuters, TechCrunch, WSJ
ソフトバンクとかほぼ中国企業やんw