コラム: この世の春を謳歌するXiaomi、IPO後のバラ色の未来

2年前にXiaomiの未来が明るいなどと主張したら失笑を買ったかもしれません。2016年、Xiaomiは目標販売台数に大幅未達。中国ではシェアを大幅に下げ、とうとう販売台数の発表を中止してしまいました(そして今に至るまで公表していません)。それから2年経ち、怒涛の復活を果たしたXiaomi。その強さの源泉はどこにあるのでしょうか。

評価額10兆円

2010年の創業からわずか8年、暗黒の2016年から2年の今年中にXiaomiはIPO(新規株式公開)を行う予定です。IPOは香港株式市場にて行われる模様。ブルームバーグによると、会社の評価額は驚異の10兆円。同じく今年上場するメルカリの30倍以上の評価額です。株式を10%売り出すので調達額は約1兆円となります。

上場すればテック企業としては2014年にアリババが上場して以来最大規模のIPOです。Xiaomiの雷軍CEOは数年間は上場することはないとインタビューで語っていたので、前言を翻した形です。しかし、最近のXiaomiの動向をみれば、これ以上理想的な上場時期は無いでしょう。

最近は良いニュースばかり

まず、Strategy Analyticsによれば、XiaomiはVivoを抜いて世界4位のスマートフォン製造メーカーに躍り出ました。2018年第一四半期にXiaomiは2830万台のスマートフォンを出荷し、世界シェアは1年前から2倍以上の8.2%となっています。

インドにおけるスマートフォンのメーカー別市場シェア推移

市場全体が大きく成長しているインドではSamsungを抜き市場シェアの31%を奪取、ヨーロッパ市場でも4.4%の市場シェアを占めています。ヨーロッパでの出荷台数はイタリアとスペインの2ヶ国がかなりの割合を占めているので、他の国では大きな成長余地が残っています。

更に、Xiaomiは本業の傍らで何十社とのベンチャー企業にも出資しており、出資先の企業群の2017年度の売上高は合計で3000億円以上にもなるそうです。

独特なビジネスモデル

Xiaomiの売上高は既に日本円で3兆円を超え、営業利益率は10%を超えていると言われています。赤字を垂れ流すソニーのスマートフォン部門とは好対照です。

Xiaomiは突出してコストパフォーマンスが良い端末を販売していることで有名で、最近にはこれから先発売するスマートフォンの利益率を全て5%以下に抑えると宣言しています。なぜ、原価ギリギリのスマートフォンを販売しながら高い利益率を叩き出せるのでしょうか。

秘密はソフトウェアと周辺機器のエコシステムにあります。Xiaomiが中国国内で販売しているスマートフォンは、アプリストアを初め、音楽アプリやギャラリーアプリなどが全て自社製です。アプリの売上の手数料がXiaomiの懐に入るのはもちろんのこと、Xiaomiは更にユーザーがストレスを感じない程度にプリインストールアプリに広告を挿入しています。

スマートフォンは1日に数時間も使われるものなので、目立たない広告でも閲覧回数とクリック回数は膨大なものです。Xiaomiのユーザー数は1億人をゆうに超えているので、広告収入だけで年間で数千億円に上るでしょう。

直営の「小米之家」の店舗。スマホから空気清浄機まで、あらゆる商品を販売している。シンプルな外観はApple Storeに近い。

Xiaomiはスマートフォンの他に炊飯器やテレビ等の電化製品から、靴や服といった生活用品、更には子供向け玩具まで販売しています。製品は全て白基調のシンプルな見た目で統一され、機能を極限まで削ぎ落として高性能・低価格を両立させています。電化製品はXiaomiのスマートフォンと連携できるようになっており、独自のエコシステムを構成しています。雷軍CEOは製品開発にあたって、無印良品を参考にしていると公式に述べています

これらの製品群は全て直営の実店舗「小米之家」と公式通販サイトで発売されているので中間マージンが無く、Xiaomiのブランドネームで販売台数も稼げるので利益率は非常に高いでしょう。

スマートフォンが売れることで、アプリや音楽販売のマージンと広告収入が得られ、更には他製品の販売数も増える。Xiaomiは端末の販売利益を度外視してユーザー数を増やしても、利益が出るようなビジネスモデルを構築しているのです。

海外市場の成長余地は大きい

忘れてはならないのが、上記のXiaomiのビジネスモデルが現在成り立っているのは中国国内のみであることです。Xiaomiの端末の国外版のromにはGoogle Playがプリインストールされており、各種のプリインストールアプリも海外では限定的にしか使用できません。

創業当初からのXiaomiの戦略は、「収益は後からついてくるので、まずは利益度外視でユーザーを確保する」というもの。中国国内では既に結実し、海外でも徐々にそれぞれの地域に最適化されたアプリを投入していくことが予想できます。

そして、Xiaomiはインド・ヨーロッパ市場で現在急速にシェアを拡大し、他方で日本と北米を筆頭に未進出の大きなマーケットも残っています。利益度外視でスマートフォンを投入するXiaomiに現地企業が対抗するのは難しいでしょう。HuaweiやOppoといった他の中華メーカーと比べてもスマートフォン以外の製品の販売で稼げるXiaomiの優位性が際立ちます。XiaomiはIPOで調達した1兆円のうち30%を海外市場の開拓に投じる見込みなので、海外展開はますます加速するでしょう。

改めて強調したいのは、Xiaomiがインドでシェア1位を獲得していることです。インドはスマートフォンの販売台数が急速に伸びている新興国の中では圧倒的な規模を誇る市場です。MicromaxやLavaといった地場メーカーは駆逐されかけており、SamsungはXiaomiよりもかなり多い製品数を投入しているものの、販売台数は停滞しています。Xiaomiは既にテレビもインド市場に投入しており、価格破壊をもたらすと同時にエコシステムを着々と形成しつつあります。

XiaomiはFoxconnと共同でインドに工場を建設し、Redmiシリーズ等を現地生産している。

端末ラインナップと注目機種

最後に、Xiaomiの端末ラインナップも振り返っておきましょう。現在、Xiaomiには大まかにRedmi・Redmi Note・Mi・Mi X(Mi A)・Mi Note・Mi Max・Mi Mix加えてBlack Sharkの8つの代表的な製品シリーズが存在しています。低価格シリーズのカメラ性能の向上がここ最近顕著で、上位機種は徐々に高付加価値・高価格にシフトしています(ここらへんは利益率5%のコミットメントとどう折り合いをつけるのでしょうか)。

最近の注目機種はまずMi Mix 2sです。

Xiaomiはこのシリーズを世界戦略機としても位置付けており、対応バンドがiPhone並に広い点が魅力的です。Docomoのバンド19はもちろん、Docomo・au・ソフトバンクの全ての主要周波数に対応しています。外観と性能もプレミアム機にふさわしいものです。

これから発売されるであろうMi A2も大本命です。

Mi A2は発売されればAndroid Oneを搭載したピュアアンドロイド端末となるでしょう。Xiaomiを認知してもらい、エコシステムにユーザーを誘導するための戦略的な機種になるはずで、出色の性能とコストパフォーマンスです。

困難な時期を乗り越えて驚くべきスピードでIPOまで漕ぎ着けたXiaomi。移り変わりの速いスマートフォン業界で2年前に今の勢いが想像できなかったように、これから先どう転ぶかわかりませんが、今はこの世の春を謳歌し、IPO後もバラ色の未来が広がっているように見えます。

Source

iapps, bloomberg, canalysis