米国から制裁を受けながらも、2020年4月単体実績ではサムスンを抜き世界一となったHuawei。
しかし、アメリカからの制裁により内情は苦境におちいっています。台湾メーカーTSMCはHuaweiからの新規受注停止を発表しました。結果、Huaweiの独自Soc、Kirinシリーズの生産が危機に直面しています。今秋発表予定のHuawei Mate 40シリーズ用のSocはTSMCから供給を受けられるようですが、それ以降のチップ製造をTSMCに委託することが難しくなっています。
半導体受託生産メーカーとして、TSMCに次ぐ地位にあるのがサムスンです。そこで、HuaweiはTSMCの代わりに、サムスンに頼ろうとしているようです。
制裁によりHuaweiが直面している苦境
アメリカの技術をベースにしている半導体受託生産メーカーは、Huaweiに半導体を供給するには米政府の許可が必要になりした。TSMCは台湾の会社ですが、アメリカにおいて巨大工場設立も進めており、「アメリカの技術をベースにしているメーカー」に該当するようです。TSMCはQualcommやMediaTek製のSoc製造も請け負っています。今回の規制で、HuaweiはTSMCが製造しているQualcommやMediaTek製Socの購入することも困難になるようです。
他方、サムスンは「アメリカの技術をベースにしているメーカー」には該当せず、Huaweiのためには半導体製造を請け負うことができるようです。サムスン以外にもSMIC等の中国資本の半導体受託生産メーカーは存在しますが、生産技術面ではTSMCやサムスンにより遅れをとってています。SMICは年末にやっと7nmプロセスのチップ生産の体制が整うようです。TMSCやサムスンは今年後半には5nmプロセスのSocの出荷します。
また、Huaweiにとって、スマホ向けのチップより5G基地局向けのチップの調達がより重要な課題であるようです。海外ガジェットメディアphoneArenaによると、Huaweiは60万台以上の5G基地局を納品する契約を結んでおり、これらの基地局用の半導体はTSMCに製造委託する予定だったようです。
噂されているHuaweiとサムスンの取引内容
Huaweiにとって、サムスンの協力を得られることのメリットは大きいです。前述のガジェットメディアphoneArenaよると、サムスンにTSMCの代わりにチップの製造を請け負ってもらう代わりに、一部の地域においてHuaweiが獲得しているスマホ市場シェアをサムスンに譲る取引を交渉しているようです。
「市場シェアを譲る」という取引を具体的にどう実現するのかは分かりませんが、サムスンとHuaweiがシェア上位を争っている市場は、ヨーロッパ等いくつかあります。
サムスン | Huawei | |
ヨーロッパ | 約34%(1位) | 約17%(3位) |
アフリカ | 約34%(1位) | 約17%(2位) |
南アメリカ(ブラジル等) | 約46%(1位) | 約9%(4位) |
2020年5月推計データ (Source: Statcounter)
サムスンにとっても、上記のような地域でスマホ市場シェアトップの地位を固めることができて、且つ、業界トップのTSMCを追いかけている半導体受託生産ビジネスの拡大をできれば、メリットがあるように映ります。
サムスンが取引に応じないのではという報道も
サムスンについて詳しいガジェットメディアSAMMobileは、サムスンはHuawei向けのチップ製造を請け負わない可能性があると報じています。取引に応じない理由は不明とのことです。
あくまでも、推測ではありますが、法的に問題がないからといってHuaweiに全面的に協力することで、米政府を刺激することをサムスンが恐れているのかもしれませんね。
Huaweiへの制裁の影響は今後も注目
Huaweiへの米政府の制裁の影響は、Huaweiの新作スマホのGMS非搭載、という形ですでに影響は出ていますが、今後影響範囲が確実に広がっていきそうです。Appleと並ぶスマホ業界のトップ企業であるHuaweiとサムスンの取引が成立するかも、要注目ですね。
Source:phoneArena, SAMMobile
SAMSUNGがエンティティーリストに加えられるリスクを考えたらしないでしょ