Xperia Zという看板シリーズラインに終止符を打ち、21:9シネマディスプレイやカメラなこだわった機種で少し勢いを回復させたソニーモバイル。昨年に日本国内のみならず海外でも発売がされた、現行のエントリー機であるXperia 10 IIの実機をレビューします。
現行のXperiaラインナップで最も安いものでありながら、ソニーモバイルのDNAが流れていることをきちんと感じさせるクオリティに仕上がっていることが印象的でした。
目次
付属品(海外版)
海外版の付属品はイヤホンとUSB Type-Cの充電ケーブル、EUタイプの充電器が含まれています。TPUケースと保護フィルムはどちらも同梱されていませんでした。しかしソニーはマレーシア向けに社外品のTPUケースと保護フィルムをそれぞれおまけとして付けています。
スペックをチェック- SD665を搭載したやや非力なミッドレンジ
Xperia 10 IIはチップセットにSnapdragon 665を採用したミッドレンジモデルとなっています。内蔵メモリとストレージはそれぞれ4GBと128GBとなっています。マレーシア国内での定価が45,000円のスマホとしては信じられないほど低いスペックです。
基本スペック | |
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ディスプレイ | 6.0インチ, 1080 x 2520, 有機ELディスプレイ, 457ppi |
サイズ | 157.0 x 69.0 x 8.2mm, 151g |
システム | |
OS | Android 10.0 |
Soc | Qualcomm Snapdragon 665 |
CPU | Kryo 260 Gold x2 + Kryo 260 Silver x6 8コア, 2.0 GHz |
メモリ(RAM) | 4GB |
ストレージ | 128GB, sd_card microSD最大1000GBまでSIM2スロットを使用 |
カメラ | |
メインカメラ | camera_rear 12 + 8 + 8MP, F値/2.0, トリプルカメラ, LEDフラッシュ, PDAF, 2x光学ズーム |
メインカメラ特徴 | camera |
前面カメラ | camera_front 8MP, F値/2.0 |
センサ類 | 指紋認証センサ, 加速度センサ, 近接センサ, コンパス |
機能 | 防水 IPX 8, 水面下での使用が可能, イヤホンジャック あり |
その他特徴 | ハイレゾ対応 |
バッテリー | battery_charging_full2.0, Type-C 1.0, 3600mAh |
Android 10を搭載 - 購入直後にAndroid 11にアップデートが配信開始
標準ではAndroid 10が搭載されていました。購入した直後にはAndroid 11のアップデートが配信開始され、筆者の所有する個体もすぐにAndroid 11となりました。
ソニーによる大きなカスタマイズはされておらず、ピュアAndroidに近い状態です。ロック時にダブルタップでスクリーンオンなどの機能は、以前のXperiaとは違い使用できなくなっています。それでも非常にスタイリッシュなロック画面用時計のデザインなど、Xperiaを感じられる部分も一部あります。カスタマイズが少ないピュアAndroidを楽しみたいというユーザーにはとても快適に感じられるソフトウェアでしょう。
ミュージックアプリはこれまでのXperiaに搭載されていたもの(Android 4番台)と変わっておらず、昔からのXperiaユーザーにとっては親しみを覚えるでしょう。一方でアルバムアプリはXperia純正のものが搭載されておらず、Googleフォトアプリが代わりとしてインストールされています。ソニーが純正アルバムアプリを廃止してから時間は経っていますが、どこか虚しさを覚えます(GooglePlayストアには残り続けていますが、現行のXperiaスマホにはインストールができません:検証済み)。
Spotifyなどの音楽ストリーミングアプリが圧倒的に人気となっているのは事実ですが、ここでミュージックアプリまでを廃止してしまえばXperiaがXperiaではなくなると筆者は感じます。
21:9シネマディスプレイは一長一短である
現行のXperiaは業界でも唯一の画面アスペクト比である21:9をスタンダードとしています。21:9という比率は横に狭く、縦に長く広がっていることが特徴であり、他の一般的な16:9や18:9、18.5:9、19:9などの比率のディスプレイと比べると違いに気づくことは容易です。
Xperia 10 IIの場合、21:9の比率を持つディスプレイを搭載しているため、当然ながら筐体も縦長となっています。一方でその縦幅は157.0mmと一般的な長さであるため、必然的に本体サイズは小さくなります。
ディスプレイサイズは6.0インチと小さめになっており、文字を見にくいと感じることがあります。また、YouTubeでの動画はほとんどが21:9の比率に対応しておらず、幅広ディスプレイでありながら、両端にブランクを残しながら視聴することがほとんどです。動画の拡大も可能ですが、21:9という比率に合わせた拡大率では動画の端が途切れて視聴に影響がでます。動画自体に字幕が挿入されていた場合は、それが一切見れなくなり不便です。
このサイズ感と重量は本当に手になじむものだ
ディスプレイサイズは6.0インチと小さいことを指摘していますが、手に持つものとしてXperia 10 IIを見た時には、このサイズ感が非常に快適に感じられます。重量も151gしかなく、縦と横のどちらで持っても疲れはありません。
カバンの小さなポケットにも入る上、ズボンのポケットにも馴染みます。タイトなズボンでも形がでにくく、スッキリした感覚です。
フレームはツヤのないマットな質感が本体のホールド感を高めます。フレームもバックパネルも指紋が全く目立たないのは非常にうれしいポイントでした。
ビルドクオリティには問題あり
使われている素材に安っぽさは全く感じません。バックパネルはプラスチックですが、光沢もキレイに出ていながら指紋がかなり目立たない仕上げです。一方でビルドクオリティ(組み立てのクオリティ)には疑問を感じました。
バックパネルとフレームの間には目視できるほどの隙間が空いており、その幅も位置によって不均等です。カメラ部分とバックパネルの接触部分を見ても隙間が不自然に空いており、バックパネルのカメラ切り抜き部分とフィットしていないのが確認できます。OPPOやサムスンなどのエントリーモデルでは絶対に見られないレベルの隙間の大きさにがっかりしたのは言うまでもありません。
ボタン周りには一番不満を感じています。指紋センサー内蔵の電源ボタンは問題ありませんが、音量ボタンはスカスカとしており、触るたびにボタンが大きく踊ります。カバーを付けると音量ボタンが誤作動してしまうくらい、音量ボタン周辺には遊びがあるのです。
結論として、モックなのかと思うくらいビルドクオリティは低いと感じました(※個人の感想です)。東南アジアの同じ工場で製造されている上位モデルでもこのクオリティだとは信じたくありませんが、これでは不安を感じざるをえません。
(写真では分かりにくいです)
ただしデザインは素晴らしい
ビルドクオリティが高くないという点に触れましたが、一方で本体のデザイン自体は素晴らしいものでした。
Xperiaの上位モデルと共通した部分も多いそのデザインは、ソニーのDNAを常に感じることができる仕上がりです。バックパネルとフレームで質感は全く異なるはずですが、それに違和感を感じることがないのが不思議です。
スピーカーはディスプレイの下に隠れるように配置されているのがデザイン面での特徴です。SHARPの一部機種に搭載のインディスプレイスピーカーとは異なりますが、ベゼル部分の直下に配置されているため、見た目がスタイリッシュなのはもちろん、手で持った時に塞いでしまうことも起きません。
本体底面を見た時に、視界に入るのはUSB Type-Cの丸い端子穴(とマイク穴)のみだけというデザインには衝撃が走ります。手に持った時に触れる端子穴がないため非常に快適です。
Xperiaはフレームのデザインが非常に魅力的な印象が昔からありますが、その良さは今も残り続けているようでした。SIMトレイはSIMピンを使わずに取り出しができる作りになっているのは昔のXperiaから変わっていません。海外へ行くことが多かったり、SIMカードを交換することが多いユーザーには便利な作りです。
ボタンについても電源ボタンのシルバーカラーがアクセントとなっています。音量ボタンは外から見ると一体になっており、この点もポイントです。
最もこだわりを感じたのはLEDフラッシュ部分です。ミッドレンジ種ではバックパネルにおいてLEDフラッシュ用の切り抜きを設けることで露出させる設計が主流です。Xperia 10 IIではLEDフラッシュがバックパネルの層の内部にあるため直接触ることができません。細かいデザインですが、筆者が気に入った点でした。
これだけの高いデザイン性だけに、ビルドクオリティの低さがもったいないと感じさせられます。
スナドラ665は全く問題なし - 一般ユーザーなら大きな不満は感じないだろう
チップセットに採用されているのはSnapdragon 665というミッドレンジ向けのものとなっています。定価で4万円近いこのスマホにSnapdragon 665が搭載されている点にはお得感を一切感じられませんが、それでも一般ユーザーにとっては動作で不満を感じることは少ないという印象を受けました。
モッサリした操作感は一切なく、アプリの切り替えやニュース・Twitterのスクローリングなど、多くの場面を快適に楽しむことができています。Xperiaスマホの最大の特徴である21:9のシネマディスプレイを活用したアプリの二画面表示もストレスなくこなします。
カメラ
チップセットやストレージ関係よりも気になったのはカメラ性能です。カメラ性能は高いとは言えず、素人目で見ても良い写真は撮れません。定価3万円程度であるGalaxy A51と比べても大分劣ります。
シャッターを切ってから撮影完了までの時間は筆者がこれまでに試してきたミッドレンジ機と比べるとやや長くもっさりした印象はありました。素早くシャッターを切りたいシーンでは少し不自由を感じます。
天気の良い午後に撮影をしましたが、緑の色合いはギラギラしておらず自然です。筆者はこのような自然のナチュラル感をそのまま残してくれるチューニングは好きです。
ズーム性能は上のような結果となりました。10倍では被写体が何かを判別することはもう不可能です。ピクセルがつぶれておりノイズが走った見た目です。このズーム性能の低さには驚いてしまいました。価格を考えると低い性能だと言えるでしょう。
夜のシーンですが、明るさが全く取り込めておらず、奥はただの真っ黒な景色となってしまっています。肉眼で見た景色とはかけ離れており、残念でした。実際には右にオフィスビルが建っていますが、それすらも潰れてしまっています。
顔認証は非対応で指紋認証とパスコード系のみ
2020年発売の機種でありながら顔認証に対応していない点は驚きでした。1万円を切るような価格のエントリーモデルでも顔認証対応の機種が多い中で、これには不満を感じます。
また、唯一頼れる指紋認証についても認証スピードが遅いのが気になりました。手元にある2018年発売のrealme 2 Proと比較をしてもそのスピードの遅さは明らかです。
ただし側面に設置されている電源ボタンを利用して指紋認証を行うため、本体を手にもった時の自然な指のポジションで認証が行えることは嬉しい点でした。インディスプレイ指紋センサーや背面配置の指紋センサーとは異なり、どちらの面を上にして机に置いていても指紋認証が素早く可能です(複数の指を登録している場合)。
総評 - もう少し頑張って欲しい日の丸メーカーのミッドレンジ機
ソニーモバイルは、万人に受ける製品を作るのでははなく、こだわりを持つ既存のファン層に向けた製品造りをしています。その点を踏まえても、Xperia 10 IIは本体スペックからカメラ性能、ビルドクオリティ、機能性など、どれを取っても抜き出たものがないという事実は残念だと感じます。唯一評価できるのは、ソニーのDNAを感じられるデザインになるでしょう。
筆者は割引価格で購入をしましたが、定価で考えたレビューとしたため、やや厳しい言葉が続く内容となりました。Xperia 10 IIIでは大きな改善がされていることに期待をしてこのレビューを終えたいと思います。
何故かXperia関連の記事はコメント欄が賑わう
Xperia10シリーズや8シリーズなんて需要無さそうだけど
意外とみんな気になるのね