2020年9月にPOCOより登場した新型機種POCO X3 NFC(以下POCO X3)。二万円からという価格設定でありながら、今年の流行の機能を多く備えている男のロマンのようなマシンです。パンチホール型カメラを備えたディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応、チップセットは業界初となるSnapdragon 732Gを採用します。背面には64MPメインのクアッドカメラを搭載するなど、とても魅力的なこのPOCO X3を実機レビューします。
目次
- 1 購入について
- 2 付属品をチェック
- 3 POCO X3のスペックをチェック
- 4 ソフトウェア - 最新のMIUI 12.0.1(グロ)を搭載
- 5 ユーザーは背面パネルのデザインを受け入れられるのか
- 6 スナドラ732G - 「Gaming」のためのチップセットはこの機種の魅力
- 7 ディスプレイ - 120Hzリフレッシュレートはヤミツキ
- 8 カメラのクイックテスト - 64MPの実力とは
- 9 低価格でもNFCにも対応している
- 10 指紋センサーは電源ボタン型でラクにロック解除
- 11 5,160mAhのメガバッテリーと33Wの高速充電で敵なし
- 12 ステレオダブルスピーカーでゲームも動画視聴も
- 13 重量は215gとヘビー級
- 14 総評 - バランスは全くないスペック、だがそれに熱狂する男たちがここにはいる
購入について
購入金額は799リンギット、日本円で19,000円程度です。Xiaomiマレーシアが初回販売のセールをやっていたタイミングで購入しました。
筆者が購入したのは内蔵メモリとストレージが6GBと64GBの安いモデルです。POCO X3は二種類のモデルがあり、6GB・64GBと6GB・128GBから選ぶことができます。この機種はデュアルSIMにも対応していますが、その場合SDカードスロットが埋まってしまう排他SIMスロットになっています。デュアルSIMで使用する場合は6GB・128GBが良いでしょう。二つの価格差は2,500円程度です。
付属品をチェック
パッケージは初代Pocophone F1とほとんど変わらない、グレーに黄色文字がデザインされたシンプルなものです。パッケージを開けると中身は黄色で埋め尽くされており、一般的なXiaomiのスマートフォンとは全く違う印象を受けます。
付属品は一般的なスマートフォンのものと変わりません。充電器とケーブル、TPUケース、説明書などが含まれています。
TPUケースはプラスチックとTPUのハイブリッドではなく、純粋なTPU製だったのがうれしいポイントでした。Xiaomiの機種では珍しくない充電端子部分をキャップでカバーができるタイプのケースです。ケースを装着すれば背面の大きなカメラによるガタつきもなくなります。ただ、イヤホンジャックの切り抜きはとても小さく、筆者のイヤホンは使えませんでした。
保護フィルムは本体に貼り付けてありました。XiaomiはRedmi Note 7もRedmi Note 8でも保護フィルムは付いておらず、がっかりしたことがあったので嬉しいポイントでした。パンチホール型カメラ部分の切り抜きはジャストサイズではありませんが、気にならないレベルです。
充電器はEUタイプです。Xiaomiはグローバル向けモデルの場合、マーケットに関わらずEUタイプの充電器を付属させる悪い風習があります。33W急速充電に対応のものですが、当然ながら筆者はこの高速充電対応の充電器を使うことができません(アダプタは不便なので使いません)。
中国版付属の充電器であれば日本でも使用可能ですが、グローバル版を輸入するという場合は注意が必要です。
POCO X3のスペックをチェック
基本スペック | |
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ディスプレイ | 6.67インチ, 1080 x 2400, IPSディスプレイ, 395ppi |
サイズ | 165.3 x 76.8 x 9.4mm, 215g |
システム | |
OS | Android 10 |
Soc | Qualcomm Snapdragon 732G |
CPU | Kryo 470 Gold x2 + Kryo 470 Silver x6 8コア, 2.3 GHz |
メモリ(RAM) | 6GB |
ストレージ | 64GB / 128GB, sd_card microSD最大256GBまでSIM2スロットを使用 |
カメラ | |
メインカメラ | camera_rear 64 + 13 + 2 + 2MP, F値/1.9, クアッドカメラ, LEDフラッシュ, PDAF |
メインカメラ特徴 | camera |
前面カメラ | camera_front 20MP, F値/2.2 |
センサ類 | 指紋認証センサ, 加速度センサ, 近接センサ, ジャイロ, コンパス |
機能 | 防水 IPX3, 落下する水滴を受けても問題なし, イヤホンジャック あり |
バッテリー | battery_charging_full2.0, Type-C 1.0, 5160mAh |
繰り返しになってしまいますが、やはりPOCO X3のスペック面での特徴はSnapdragon 732Gを業界で初めて採用していることになるでしょう。
ソフトウェア - 最新のMIUI 12.0.1(グロ)を搭載
POCO X3は2020年の9月に登場したばかりの新機種ということで、ソフトウェアに最新のMIUI 12.0.1(グローバル版)を搭載します。ホーム画面や設定画面、標準アプリ系は120Hz表示に対応しているもようです。ランチャー自体はPOCOランチャーというものが採用されています。
合計で6つのゲームアプリが初期状態でインストールされているのが気になりましたが、簡単にアンインストールが可能です。
MIUIですが、写真アプリや設定画面などは独自UIを採用している一方、電話や連絡先アプリなどはピュアAndroidのアプリをそのまま使用しています。日本語にも完全対応しており、POCO X3も問題なく表示ができました。
ユーザーは背面パネルのデザインを受け入れられるのか
スペックについては誰もが認めるであろうこのPOCO X3。一方で、そのデザインには疑問を抱きました。背面パネルには「POCO」の文字が大きくデザインされており、ユーザーの好みが大きく分かれると予想します。
付属のカバーは透明です。よって、POCO X3を使うためにはブルーとブラックのどちらを選んでもこのデザインを受容しなくてはいけません。
筆者はデザインについての専門知識があるわけではありません。ただ、学生時代の図工(授業科目)で最高評定を取り続けた身で意見を述べることを許されるのなら、POCO X3のデザインは「酔っ払いが一晩でデザインしたかのよう」です(個人の感想です)。
なお、背面パネルはプラスチック素材になっています。押してみるとポコポコ(POCO POCO)と少しへこんでしまうのが気になりました。
スナドラ732G - 「Gaming」のためのチップセットはこの機種の魅力
チップセットには最新のSnapdragon 732Gが採用されています。Snapdragon 732Gですが、このPOCO X3が業界で初めての搭載端末となっており注目度は高いです。なお、前作のPOCO X2にはSnapdragon 730Gが採用されていました。最近になって見られるようになった、末尾に「G」とつくQualcomm製チップセットはGaming(ゲーミング)に最適化されていることが特徴です。
筆者が今回プレイしたのはAsphalt 9というカーレーシングゲームです。スマートフォンのゲーミング性能を測るために試すゲームの代表作の一つです。5年以上Asphaltシリーズを楽しんでいる筆者ですが、POCO X3でもとても快適に楽しむことができました。ロード時間が通常より早いと感じるだけでなく、グラフィックの滑らかさ、カクつきが一切ないことが衝撃でした。このゲームでは相手プレイヤーの車にぶつかったときなど、グラフィックがややカクつくこともありますが、POCO X3では一切のストレスも遅延もありません。
液体冷却のこの機種の魅力の一つですが、ゲームのプレイ中に本体が強く発熱することはありませんでした。長時間の動画視聴やビデオ通話など、ハードな使い方でも冷却性能の高さを感じられます。
Geekbench 5のベンチマークスコアはシングルコアが566点、マルチコアが1,776点という結果になりました。
※AnTuTuはGoogle Playストアから削除されているアプリなので今回はベンチマークに使用していません。
ディスプレイ - 120Hzリフレッシュレートはヤミツキ
120Hzのリフレッシュレートに対応
この機種の特徴の一つは120Hzのリフレッシュレートに対応したディスプレイです。アスペクト比は20:9で画素密度は395ppi、Gorilla Glass 5を採用したIPS LCDディスプレイとなっています。上の動画はXiaomiの公式紹介動画となっていますが、まさにこの動画の通りの滑らかさがディスプレイにはあります(動画は音がでます)。
TwitterやGoogle Playなど、スクロール操作が多いアプリではそのメリットがとても大きかったです。ただ、文章やGIFで120Hzの体感度合いを伝えるのは難しいと感じました。強いて言うならば、紙をスクロールしているような、ストンと紙が縦方向に動いているような見え方をします。これは一度体験するとやみつきになる感覚で、ゲームよりTwitterやInstagram、ブラウジングなどのシーンでの方が楽しめると筆者は思っています。
ユーザーが設定画面でリフレッシュレートの切り替えをできるようになっており、標準設定で120Hzになっています。120Hzの高リフレッシュレート表示はバッテリー消費に影響があると言われていますが、やはりその通りだと感じました。しかし、5,160mAhのバッテリーが働き、「常に120Hzをオフにしないとダメ」というレベルではありません。
240Hzのタッチサンプリングレートにも対応
筆者は120Hzのリフレッシュレートと60Hzでの違いには気づけましたが、一方で120Hzと240Hzでのタッチサンプリングレートの違いがつかめませんでした。
この動画も同じく公式紹介動画ですが、240Hzのタッチサンプリングレートに対応したことで、反応速度が向上しているということでした。前述の通り、動画にあるようなレーシングゲーム、Asphalt 9を筆者はプレイしましたが、大きな違いには気づけませんでした。
カメラ性能もそうですが、メーカーというのは時に過大なアピールをすることもあります。240Hzという数字がどれほどなのか、筆者とメーカーとの間では捉え方にややギャップがあるようです。Asphaltシリーズに限れば上級者の筆者が分からなかったタッチサンプリングレートの性能差。過度な期待は禁物なのかもしれません。
パンチホールを搭載した数少ないXiaomiのマシン
POCO X3はXiaomiのスマートフォンではまだ珍しいパンチホール型カメラをディスプレイ上部のセンターに搭載しています。
筆者が比較できる機種がGalaxy A51しかありませんが、POCO X3とGalaxy A51ではパンチホール型カメラの見た目が大きく異なっていました(サイズはほぼ等しい)。ディスプレイをオフにした時、POCO X3のパンチホール型カメラは全く目立ちません。一方で、ディスプレイがオンの時にはGalaxy A51のものよりもパンチホールの存在感が強く感じられます。この点の好き嫌いは個人差があるでしょう。
パンチホールやノッチを搭載した機種の画面表示が嫌だという場合でも、MIUIにはそれらを目立たなくする機能があります。ステータスバーを黒で表示することでノッチ・パンチホールと同化させるというものです。POCO X3でもパンチホールを隠すことができますが、IPS LCDディスプレイであるため、完全に目立たなくさせるということは難しそうです。
カメラのクイックテスト - 64MPの実力とは
POCO X3のカメラはリアがクアッドカメラ、フロントがパンチホール型シングルカメラとなっています。このレビューではサイトの性質上フロントカメラのサンプルショットは上げず、リアカメラのみを評価します。
POCO X3は本体背面のカメラ部分が本体に対してかなり大きいため、撮影時に指がレンズに触れてしまったり、視角にボケて映り込んでしまうなどのトラブルが最初はありました。これには慣れが必要でしょう。ゲームプレイ中は撮影時以上に気になります。
64MPのカメラでどんなものでも・ズームは最大10倍
二枚の写真を拡大して比較しても、筆者には大きな違いが分かりませんでした。画素数だけで言えば64MPという数字は驚異的で、画像サイズは9248x6944pxとスマートフォンのレベルを超えています。画像一枚あたり20MB前後の容量を消費するので、ストレージの管理には注意が必要でしょう(通常モードの場合は10MB前後です)。SONYのIMX 682センサーが採用されているということですが、これが本当に必要なのかは怪しいでしょう。
上の通常モードの地点からそれぞれ2倍と10倍ズームで撮影した写真です。
ポートレート撮影でインスタ映えする写真を
ポートレート撮影は今となってはメジャーな機能ですが、その性能を試しました。Galaxy A51と同じ被写体を撮影しましたが、Galaxy A51に比べて短時間で素早く撮影ができるのが気に入りました。ポートレートやナイトモードにありがちな、カメラをそのままに数秒間保持するという必要がなく、さくっとInstagramなどのSNSで注目されるような写真が撮影できます。
色合いだけで言えばGalaxy A51の写真が筆者は好みですが、背景と被写体の境界線のシャープさはPOCO X3が明らかに上であり、かつ精度が高くキレイな仕上がりです。2万円のスマートフォンでこれだけのポートレート撮影ができることに驚きました。
広角カメラでこれまでよりも広い世界を捉える
POCO X3のカメラで撮影した空は何色か・・・実際に目で見た通りの色味に近く、自然体な写りが筆者は気に入りました。通常モードと広角モードで写真の色味に大きな違いはないと感じました。広角レンズも使い方次第で様々な画が撮れるでしょう。
マクロレンズで新たな世界をのぞいてみる
Galaxy A51のマクロレンズで同じ被写体を撮影していますが、POCO X3では日射のないシーンの際に暗くなってしまうのが気になりました。どちらも輝度調整はしていませんが、明るさで差が出ています。
上の二枚はどちらもケンタッキーのサクサクしたフライドチキンをマクロレンズで撮影しています。二機種で色味にかなり違いが出ていることが明らかです。POCO X3の方が繊細でおいしそうな印象ですが、個人の好みによるでしょう。
マクロレンズは撮影シーンを考えて工夫することでおもしろい写真が撮影できるでしょう。ラーメンなどをマクロレンズで撮影するだけでも楽しめるはずです。筆者にとっては広角レンズとならんで必要不可欠となったのがこのマクロレンズです。
ナイトモードで夜の撮影シーンにも対応
実際に目で見ている景色とはやはり大きく違っています。POCO X3では全体が変に明るく強調されているのが分かります。特に空の色は白みがかっているのが不自然です。どちらがナチュラルかと聞かれたら、答えはGalaxy A51で撮影したものになるでしょう。
低価格でもNFCにも対応している
POCO X3 NFCという正式名称の通り、POCO X3はNFCも利用可能となっています。Xiaomi独自のNFC決済エコシステムがあるわけではないですが、GoogleによるGoogle Payが使用できます。
正直日本でこのNFC機能を利用したときの使い心地は筆者がレビューすることはできません。決済系は機種の販売マーケット、国と地域によって条件などが変わってくるので注意が必要です。筆者のクレジットカードは日本国内発行の住友カード、現地発行のものなど全てサポート外でした。誰でもNFCを使いこなせるわけではなさそうです。
指紋センサーは電源ボタン型でラクにロック解除
指紋センサーは電源ボタンと共有のタイプとなっています。ディスプレイから見て右側に、音量ボタンと並んで配置されています。ロック解除のスピードは極端に早くもないですが、ストレスは一切なく使用できるでしょう。側面に配置される指紋センサーはXperia Z5などの機種でも見られましたが、このデメリットは本体を机に置いている時は一度手で握らないとロックの解除がしづらいということでした。
ボタンの質感はふにゃふにゃとした安っぽい感触なのがマイナスポイントです。
5,160mAhのメガバッテリーと33Wの高速充電で敵なし
5,160mAhと大容量のバッテリー、かつ33Wの高速充電に対応していることはこの機種の強みです。2万円前後のスマートフォンでも同程度の大容量バッテリーを搭載した機種は増えていますが、多くはチップセットやカメラ性能などが抑えめになっています。POCO X3のコストパフォーマンスには驚きました。
Xiaomiの公式情報では、30分で62%まで、100分でフル充電ができるそうです。リフレッシュレートを120Hzに設定している場合は、バッテリーの減りが速いのは明らかに感じ取れます。しかし、大容量バッテリーもあって、電池持ちが極端に悪いとは思いませんでした。5,160mAhという容量は非常に魅力的だと言えます。
この次に触れますが、やはり大型バッテリーと引き換えに本体重量もややネガティブなものとなっています。
ステレオダブルスピーカーでゲームも動画視聴も
スピーカーはこの価格帯では珍しいステレオタイプとなっています。また、本体下部に加え、ディスプレイ上部にもスピーカーを備えていることが特徴で、本体の持ち方に捕らわれずにゲームや動画視聴を楽しむことができます。指で一つのスピーカーをふさいでいても、もう片方のスピーカーから音が聞こえるのでとても実用的です。
重量は215gとヘビー級
POCO X3の重量は215gとこれまでにないレベルのヘビー級です。バッテリーサイズやディスプレイサイズなどもありこの重量になっていると予想されますが、やはりこの重さは一部のユーザーにとってはネックとなるでしょう。
ソファーやベッドで寝ながら、片手で本体を支えて動画を見続けるのは筆者には難しかったです。また、ズボンのポケットに入れた時もズッシリ感が強くて気になりました。
Xiaomi系スマートフォンは全体的にヘビー級の機種が多いため、それらから乗り換えるというユーザーであれば大きな問題ではないかもしれません。しかし、重量190g以下の機種から乗り換える場合は注意が必要です(個人差があります)。
※付属のTPUカバーを着用
総評 - バランスは全くないスペック、だがそれに熱狂する男たちがここにはいる
POCO X3の全体的な印象としては、スペック面でバランスは取れておらず、ゲーミングにかなり偏った機種と筆者は感じました。215gという実用性からはやや外れた重量、ここ最近は不人気なIPS LCDかつ大きめのディスプレイを採用、本体の質感も安っぽさがあります。しかし、ゲーミング志向やハイスペック志向のユーザーにとってはこれ以上にない完璧なスペックを備えており、彼らを夢中にさせるのがPOCO X3なのです。まさに男のロマンをつめ込んだスマートフォンと言えます。
POCOシリーズはゲーミングラインとして位置づけられたものではありませんが、POCO X3を実質的なゲーミングスマートフォンと見なしても間違いではないでしょう。
POCO X3でのモバイルデータ・インターネット通信は全て海外で行い、レビューを行っています
ポコポコ(POCO POCO)言いたかっただけやろ、知ってるぞw