インドから北上した位置にあるネパールという地理的にも小さな国。日本人にとって強いイメージなどは存在しませんが、スマホ業界は複雑な事情を抱えている興味深い国でもあります。前回のマーケットコラムに続き、今回は同国のスマホのグレーマーケットを特集します。
iPhone 14シリーズがまだ国内で発売されていないネパールでは、グレーマーケットですでに流通が開始。iPhone 14 Pro(256GB)の流通価格は25万ネパールルピー、日本円で約28万円を超えている。
※この記事はグレーマーケットの存在を発信する目的で執筆しています
目次
スマホの価格が高い国で生まれたグレーマーケット
ネパールはインドと国境を共有する国ですが、スマホ市場に関しては大きな格差が存在している現状があります。ネパールでは地場のスマホメーカーは存在しなため、国内で出回るものはインドや中国、アメリカ等の国から輸入された製品です。
しかし、正規ルートで仕入れられたメーカー正規品はインドと比べて価格が非常に高く設定されていることが問題となっています。これが非正規のルートからの輸入を促し、安くて保証のないスマホを取り扱うグレーマーケットを生み出したのです。
価格のほか、ネパールでは新製品の発売が他国より遅くなる傾向にあることも密輸が常態化する理由の一つとされています。
インドとの国境沿いなどでは非正規のルートから仕入れたスマホだけを扱う販売店も多くあり、このような場合はネパール国内での保証も提供していません。
Source: Gadgetbyte
ネパールで流通するスマホの25%以上は密輸されたもの
ネパール現地メディアであるonlinekhabarによると、2021年の時点でも同国で流通するスマホの25%は非正規ルートから仕入れられた、つまり密輸された製品だとされています。
また、現地の空港で入国するネパール人は当時一日当たり2000人いたとされますが、その内の半分は新品のスマホを持って帰国していたとも報じられています。
Source: onlinekhabar
ネパールでは正規ルートのスマホがどれだけ高いのか
ネパールで正規ルートのスマホを購入することの金銭的負担ですが、上のコラムでも実例を取り上げています。例として、iPhone 13 128GBモデルは日本円換算した時の価格差がインドとネパールで約3万円あります。
モデル | インド現地価格 | 日本円換算 | ネパール現地価格 | 日本円換算 | 差異(日本円) | 差異(%) |
realme 7 (8+128GB) | 16,999 | 28,558円 | 35,990 | 37,789円 | 9,231円 | 32.32% |
OPPO F19 Pro (8+128GB) | 21,490 | 36,103円 | 44,990 | 47,239円 | 11,136円 | 30.85% |
Xiaomi Redmi Note 9 Pro Max (6+128GB) | 17,499 | 29,398円 | 31,999 | 33,598円 | 4,200円 | 14.29% |
サムスン Galaxy M51 | 22,999 | 38,638円 | 39,999 | 41,998円 | 3,360円 | 8.7% |
上は各社製品のインドとネパールでの価格差を表にしたものですが、メーカーによっては30%近い価格設定をしているケースもあるのです。こうした状況がネパール現地でグレーマーケットを急速に形成しました。
Source: realmeのネパール攻略を覗く【マーケットコラム】
スマホの密輸はマフィアから一般人まで
ネパールで流通するスマホの多くはインドから仕入れられるため、非正規ルートを形成する場合もインドから引っ張ることになります。この非正規ルートにはインドのマフィアが絡んでいるケースもあるといい、中には盗難品のスマホも存在しています。
また、こうした密輸に手を染めるのはマフィアだけでなく、一般人もインド観光と併せてついでに行うことがあるといいます。
ネパール現地政府もついにグレーマーケットに介入 - MDMSの導入
グレーマーケットの規模は年々巨大化し、ネパール現地当局も介入する動きを見せています。NTAはMDMS(Mobile Device Management System)というスマホの登録制システムの導入を行い、非正規ルートから購入したスマホの排除を目指しました。スマホの密輸は現地政府にとって税収面での大きな機会損失を生み出すため、こうした介入は当然と言えます。
この制度の施行により、ネパール国内で新たに購入したスマホのIMEIを政府に対して登録する必要があり、登録がされていない端末は国内で使用できなくなります。また、コピー品のブランドスマホの排除や非正規ルートから輸入されたスマホの特定もIMEIのデータベースから可能になるということです。
海外でお土産等で購入したスマホも届け出により使用できるとあり、制度としては効果的に思われます。
昨年12月に実施予定のMDMS導入は遅延
NTAによって実施予定であったMDMSの導入ですが、これは昨年12月に予定がされていました。それがCovid-19などの理由で遅延し、未整備状態のグレーマーケットは今も勢いを止めていないと言われています。
一方でrealmeはインドとネパール間の価格差是正に動き出したほか、サムスンやXiaomiといったメーカーはより早い段階でアクションを取っています。MDMSの導入とメーカーの協力により、ネパールのグレーマーケットが機能しなくなる日は遠くないのかもしれません。
Source: The Kathumandu Post
アリエクって関税取られないけどあれは正規輸入になるんか?