富士通(富士通コネクテッドテクノロジーズ)の製品として日本国内でも知名度が高いARROWS(arrows・アローズ)。SonyのXperiaとSHARPのAQUOSに並ぶ3大国内ブランドとして大手キャリアが中心となりプッシュをしてきました。
それでもXperiaとAQUOSに比べると存在感が薄まってきているのがARROWSです。Sonyはともかく、海外メーカーとSHARPに敗れたのは言うまでもありません。富士通がスマートフォンマーケットで名声を失ってしまったのにはどんな背景があったのか、客観的な視点で振り返りをしていきます。
※この記事には富士通およびARROWSブランドを誹謗中傷および批判する目的はありません。記事内では東芝撤退後の富士通のストーリーを中心に取り扱っています。
目次
国産・国内ブランド志向が強い日本のスマホマーケット
前置きですが、日本のスマートフォンマーケットはiPhoneを選ぶユーザーを除き、XperiaやAQUOS、そしてARROWSなどの国内ブランドの製品が好まれる傾向にあります。こうした背景も理由に、かつてのARROWSはXperiaとAQUOSに並び人気を得ていたのです。ARROWSは、「あの富士通のスマートフォンなら...」という安心感が魅力でした。
Galaxyに続き今となってはHuaweiが海外メーカーとして日本では人気ですが、それでも国産・国内ブランドにこだわる消費者が一定数存在するのは事実です。日本のメーカーはそういった消費者を相手に満足させられる製品を開発する必要があるでしょう。
トラブル続出でユーザー大反発
ARROWS Kiss F-03D(2011年)
ARROWS Kissは女性をターゲットにしたエレガントスマートフォンとして登場しました。内蔵ストレージが1GBとかなり小さいのが問題でした。
価格ドットコムのレビュー内でも、ストレージ容量に対してプリインストールアプリが多くて不便だったことに触れられています。これが原因で再起動が頻発したり、ソフトウェアアップデートに苦労するユーザーも多かったもようです。
ARROWS X F-10D / ARROWS Z ISW13F(2012年)トラブル多発で悪評続出
この機種は訴訟まで起こされたトラブルだらけのスマートフォンとして有名です。ドコモとauから発売されましたが、これまでのARROWSと同じようなトラブルや発熱問題などを多く抱えていました。電話やインターネットの利用で熱暴走を簡単に起こす発熱トラブルは、特に問題視されてきました。
F-10D/ISW13FはTegra 3というクアッドコアチップセットを搭載していた当時のラインナップで唯一の機種でしたが、やはり高性能が仇となった可能性はあるでしょう。
F-10Dのトラブルの多さに悩んだ消費者がドコモを相手取って裁判まで持ち込んでいます。結果は原告が勝訴となり、機種代金返金の対応が取られました。個人が携帯キャリアを相手としたこの裁判はちょっとした話題となり、ARROWSの評判を下げてしまった可能性は決してゼロではないでしょう。
価格ドットコムのレビューでは星5つ中2.61となっています。
ARROWS X F-02E/ (2013年)発熱とトラブルの連続
電話の発着信が正常に行えない、ちょっとしたブラウジングなどで異常な発熱を起こす、極端に悪いバッテリー持ちなどのトラブルが起きていた機種です。
筆者も当時のARROWS X F-02Eには悩まされ、発熱や着信ができないなどのトラブルを体験しています。ドコモショップで同機種への交換、それでも解決できず別メーカーの製品へ無償交換までをしました。
今回取り上げた機種は一部です。こうした機種でのトラブルの続出で、国内ブランド志向の消費者がSonyやSHARPの製品に移っていったというのは否定し難い事実です。特にARROWSスマートフォンの発熱のイメージは拭うことができず、インターネット上ではホッカイロと呼ばれることもあるようです。
おもしろい機種もありました
F-03D Girls(2012年)ガチでピンクなスマートフォン
「ガチピンク」という別名でも呼ばれたこのスマートフォン。ガチピンクとは本体カラーの呼び方で、その響き(ガチピンク=本気のピンク)がガジェットマニアの間でおもしろいと評判になったのでした。
完全に女性、特に若い世代だけをターゲットに絞ったアイデアはおもしろいものだと感じます。当時、ドコモショップで実機を見て気になっていた筆者でしたが、手に取って触ってみるのがはずかしく、できなかったことが懐かしいです。
arrows Be3 F-02L 水洗いが可能なスマートフォン
arrows Be3 F-02Lは水洗いができるスマートフォンとして話題になりました。泡タイプのハンドソープを使って本体をまるごと洗うことができるため、衛生的に保てるのが特徴でした。
【ARROWSブランドで発売されてきた製品の一覧はこちら(FMWORLDに移動します)】
auからの発売は2013年が最後・SoftBankからもあまり見られず
XperiaとAQUOSの両ブランドは大手三大キャリアからの取り扱いが2020年の今も続いています。一方のARROWSはauからの登場が2013年が最後、SoftBankは2013年から2019年まで新機種が発売されない空白の期間がありました。元々ARROWSはdocomoでの取り扱いが強かったですが、auでの取り扱いがストップしたのは競合のAQUOSをはじめとする国内ブランドにリードをされる原因だったと言えます。
市場環境の変化に対応できなかった(しなかった)
大手三大キャリアが市場を独占していた状態の従来の国内スマートフォン市場。MVNOが活発化し「格安スマホ」、「格安SIM」などの単語も生まれました。
この変化によって起きたのは、市場内でのSIMフリースマートフォンへの高需要です。国内メーカーではMVNOを中心に販売経路を持つSHARPのAQUOSが市場内で強い存在感を見せており、富士通が勢いで劣っていたのは明白です。ARROWSからもSIMフリーモデルは登場していますが、そのAQUOSのラインナップは遥か上をいきます。
2020年8月になってSonyがXperiaのSIMフリーモデルを国内で発売することを発表した通り、国内メーカーも大手キャリアだけに捕らわれない販売経路を早くから見出す必要があったと考えらえます。
上記でもあった通り、キャリア販売にも極端に強かったわけではない富士通が、SIMフリースマートフォンのフィールドへ積極的に手を出さなければ先は明るくありません。
日本企業同士での競争の熾烈化
ここ近年ではHuaweiやGalaxy、OPPOなどの海外メーカーが日本市場(Android)で大きなシェアを獲得するようになりました。
流れとして海外メーカーと国内メーカーでの競争が当然発生しますが、そこでも同時に国内メーカー同士での残されたパイの奪い合いが起きるのです。国内でしかスマートフォン事業を行っていなかった富士通にとって、この競争で敗れたことで市場撤退へ進むのは不思議な話ではないでしょう。
ARROWSブランドを投資会社ポラリスに譲渡
富士通ですが、2018年に富士通コネクテッドテクノロジーズ株式の70%を日本国内の投資ファンドポラリス・キャピタル・グループ株式会社に譲渡しています。ARROWSというこれまで親しまれてきたブランドは引き続き継続されますが、富士通(本体)のスマートフォン事業の事実上の撤退ということになりました。
ポラリスの傘下となってからは国内生産に加えて一部機種で国外生産も開始するなどの変化が起きていますが、ARROWS製品の良さは受け継がれていると期待できます。
とはいえ技術は評価されるべき
以外と知られていませんが、ARROWSの製品には「世界初」の機能がピックアップされることががありました。
スマートフォンに虹彩認証を採用したのは富士通のARROWS NX F-04Gが世界初でした。指紋認証機能も搭載していたため、シーンによって使い分けられるのが魅力となりました。指紋認証を使うのが苦手というユーザーにとって便利だったこと間違いないでしょう。ただし、この機種は電源が入らない、カメラが起動しないなどの不具合が連続し、のちに販売中止となりました。
2013年に登場したiPhone 5SはiPhoneで初の指紋認証機能を採用した機種として有名です一方のARROWSブランドで同機能が初めて採用されたのはARROWS X F-10D、こちらは2012年に発売された機種でした。Androidを話しても、GalaxyやXperiaよりも早く指紋認証機能が採用されていたのです。
認証の性能が優れていたかは置いておき、ユーザーに革新的な機能をいち早く提供していたのは富士通だったりします。
5Gで挽回を目指す - 頑張れ日の丸ブランド
ARROWS(arrows)ブランドのスマートフォンというのは2020年の現在も新機種が発表されています。日本国内でも5Gサービスが大手MNOキャリアから開始されていますが、ARROWS(arrows)ブランドよりarrows 5G F-51Aという5Gスマートフォンが新たに発表されました。
もとより4Gと5Gの転換期で一旗揚げようと見ていた富士通。新たに発売された発表されたarrows 5G F-51Aで日本の5G時代を勝ち抜いていくことができるのか、今後の動向にも注目が必要です。
中華スマホが全部日本から撤退すれば国内で覇権取れるんじゃないんですかね(鼻ホジ)