ガジェットのディスプレイといえばIPS液晶などに代表される液晶ディスプレイやハイエンド機種に搭載されがちな有機ELディスプレイなどがありますが、近頃それらに加えてミニLEDというディスプレイをよく見かけるようになりました。
このハイエンドテレビやiPad Pro 12.9インチモデルにも採用されたミニLEDはどういったものなのでしょうか。簡単かつわかりやすく説明していきます。
目次
ミニLEDディスプレイはバックライトを分割した液晶ディスプレイ
ミニLEDディスプレイの原理は基本的には液晶ディスプレイと同じです。
まずは液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの違いをおさらい
液晶ディスプレイではLEDの光を均一に拡散させたバックライトの光を液晶分子を使ってコントロールすることでピクセルごとに任意の色、輝度を調整します。
液晶ディスプレイはその仕組み上、液晶分子を使ってバックライト光を完全にシャットアウトすることが出来ません。そのため、バックライト全開の最大輝度時に黒を表現しようとしても真の黒ではなく霞がかった灰色となります。
一方で、近頃登場した有機ELディスプレイはピクセルごとの素子自体が発光するため、最大輝度時でも黒が発光なしの真の黒となります。そのため、コントラスト比(最大輝度:最低輝度の比)が大きく、メリハリの効いた美しい映像が表現できます。
ミニLEDディスプレイはコントラスト比を改善した液晶ディスプレイである
このような欠点のある液晶ディスプレイですが、ミニLEDディスプレイはその欠点を解消した液晶ディスプレイです。
ミニLEDディスプレイはバックライトを分割してそれぞれのゾーンごとに輝度を調整できるディスプレイです。明るいところは輝度高めに、暗いところは輝度低めにしてしまうことで黒のエリアは有機ELディスプレイ同様に真の黒が表現できるようになり、コントラスト比が大幅に改善されます。
例えばミニLEDディスプレイを採用したiPad Pro 12.9インチモデルはバックライトとして1万個以上の小型青色LEDしており、これを2,596個のエリア化、ソフトウェアによるコントロールでそれぞれのエリアごとに輝度の調整が可能です。これにより、100万:1のハイコントラスト比を実現しています。
ミニLEDディスプレイは有機ELディスプレイの焼き付き問題を回避しつつ有機ELディスプレイ同様のコントラスト比を実現できるのです。
ミニLEDを更に細かくし、ピクセル単位にして有機ELディスプレイのような駆動方式にしたマイクロLEDというものもあります。電車の行き先表示機のハイレゾバージョンみたいなやつです。
こちらはテレビなど大画面で1ピクセルが大きいもので開発されています。いつかスマホサイズでも使えるようになる未来が来るかもしれませんね。
複雑な構造がデメリット
ミニLEDディスプレイのデメリットはその複雑な構造です。
ミニLEDディスプレイはその性質上、バックライトとして大量のLEDが必要になります。それに比べて一般的な液晶ディスプレイに使われる光源用のLED数個から数十個程度。さらに、ミニLEDディスプレイはLEDをディスプレイ直下に埋め込む必要がありますが、一般的な液晶ディスプレイは導光板の横からLEDの光を当てるだけで十分です。そのため、ミニLEDは筐体の薄型化、コンパクト化が非常に難しいです。
Hearing alot about the halo effect in the new 12.9" miniLED iPad Pro. Here it is explained from our MiniLED Report. So even 1M:1 contrast ratio displays can get it. Need more dimming zones. Not a problem for OLEDs though. pic.twitter.com/Zin0nE4tmr
— Ross Young (@DSCCRoss) May 25, 2021
また、バックライトを使っている仕組み上、隣接するゾーンの輝度が大きいときに光が滲んだり漏れたりすることがあります。また、同じゾーン内で輝度差があるときはそのゾーン内では液晶ディスプレイと同じコントラスト比となります。これらはiPad Pro 12.9インチモデルでもみられる現象であり、Twitter上で「ミニLED 光漏れ」で検索すると多数報告されていることがわかります。
有機ELよりも生産しやすい?
単純にコントラスト比を稼ぎたいのであれば有機ELディスプレイで十分です。それでもミニLEDディスプレイを採用する理由はおそらく生産能力が違うからでしょう。
ミニLEDディスプレイは超小型のLEDとうまく制御するソフトウェアさえあれば従来の液晶ディスプレイと同じスキームで生産できます。一方で、有機ELディスプレイはスマホ向け、テレビ向けに生産されていますが、PCサイズやタブレットサイズの生産は限られています(Galaxy Tab S7シリーズ等。)
世界中で半導体不足が叫ばれている今、iPad向けに大量生産するにはミニLEDディスプレイのほうが適しているのでしょう。
このように、ミニLEDは液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの良いところをかけ合わせたようなディスプレイであり、AppleがPro Display XDRやiPad Pro 12.9インチモデルに採用したようにハイエンドモデルに使われる技術です。
一方でミニLEDはその仕組み上、小型化が難しいことと光漏れが起きることのデメリットが大きい上、解消するのが非常に難しいです。昨今の半導体情勢が変わったり、有機ELディスプレイの生産性が大幅に向上した暁にはほとんど使われなくなる可能性もあると思います。
10万超えなのに有機ELケチるのには驚いたなw