今回は海外向けモデルとしてサムスンが発売した新型ノートパソコン、Galaxy Book Sをレビューします。海外でも発売されている国が少なく、珍しいノートパソコンです。
尊敬するガジェット系ブロガーS氏が韓国で購入して愛用しているというだけの理由で、筆者も購入を決めました。Windows歴よりMac歴が長く、多くのパソコンに触れてきた筆者ですが、人生で最も感動したパソコンでした。
目次
スペックをチェック
OS | Windows 10 Home |
ディスプレイ | 13.3 FHT TFT (16:9) |
サイズ・重量 | 305.2 x 203.2 x 6.2-11.8mm / 960g |
チップセット | Qualcomm Snapdragon 8cx (7nm 64bit オクタコア:2.84GHz + 1.8GHz) |
メモリー | RAM 8GB (LPDDR4X) / ROM 256GB (SSD) / MicroSD ~1TB |
バッテリー | 42Wh (ビデオ連続再生25時間:メーカーサイトより) |
Source: Samsung
購入について
今回購入したものはUS版となっています。US版のなかでもキャリア版とSIMフリー版が存在しますが、Verizonのキャリア版でした。個人的にVerizon版のガジェット類は縁があり、無意識に選んでいることが多いです。
カラーはアーシーゴールド(ピンク)とマーキュリーグレーの二色から選べますが、筆者はマーキュリーグレーを選びました。
筆者が購入した時の価格は89,000円ほどでした。簡単なことではないですが、購入には韓国やアメリカ、オーストラリアなどに直接出向くのが一番でしょう。インターネット通販で扱っているお店はほとんどないため、かなりのレア品です。
とても苦労して手に入れたノートパソコンでしたが、良い買い物でした。
化粧箱・付属品
サムスンはパソコンでもビニール包装をしません。少し汚れのついた化粧箱にはGalaxy Book Sの薄さがよく分かるアングルで本体がデザインされています。裏面にQualcomm Snapdragon 8cxのエンブレムがプリントされており、ノートパソコンであることを忘れさせます。
中身はとてもシンプルで、充電器とUSB Type-C - Type-Cケーブル、USB Type-C - Type-Aコネクタのみでした。US版であるため充電器の端子は日本でも使える平行型ですが、他国のモデルの場合は別タイプの端子になっています。
ノートパソコン本体は綿素材のようなケースで包装されているのがポイントでした。USB Type-C - Type-Cケーブルの接続端子部分には「ベトナム」と英字で記されており、マニアの心をくすぐります。そうです、Galaxy Book Sやその付属品はベトナム製です。
ここがスゴイ!1 薄すぎる本体は11.8mm
(さっそくですが、ここが良かったというポイントを先に紹介します)
この薄さはイイわ(11.8mm)!!
11.8mmという薄さのGalaxy Book S。それでも本体に安っぽさを感じることはなく、パームレストがたわんだりすることもありません。
薄いノートパソコンのメリットですが、机で作業をする時に机とノートパソコン本体とで隙間(高さ)が狭くなるため、手首・腕への負担が少なくなります。厚いノートパソコンでは手のひらを本体に押し付けるようなポジションになってしまうため、人によっては痛みを感じることがあると言われています。
某新型MakBook Airの薄さは4.1–16.1mmですが、Galaxy Book Sは6.2-11.8mmであり、数値だけを見れば非常に優秀であることが分かります。
インターフェイス類はUSB Type-Cが両側面にそれぞれ一つずつです。HDMIやUSB Type-Aが搭載されていないのは書くまでもありませんが、イヤホンジャックは残っています。
ここがスゴイ!2 軽すぎる本体は960グラム
Galaxy Book Sの一番の強みとも言えるのが約960グラムしかないその重量です。片手でもラクラクに持つことができます。
13インチ台のノートパソコンで1キロを切る機種は日本では多くなく、国内メーカーの製品などにかたよっています。
動画連続再生が最大25時間まで可能でありながらこの重量まで抑えられたのには、Snapdragon 8cxが大きく貢献しているのでしょう。持ち運びには全くストレスにならないはずですが、コロナの影響で外出する機会がゼロになったため感想はありません。私のように軽さにこだわる人や女性に強くおすすめできます。
某新型MakBook Airの重量は約1290グラム、薄さと軽さではGalaxy Book Sは負けていません。
ここがスゴイ!3 Galaxyのエコシステム
Samsung Flow
Samsung FlowはDexという機能と非常に似ている、Galaxyデバイスとの同期ソフトです。DexはGalaxyのハイエンド機種のみの対応ですが、Samsung Flowは幅広い機種に対応しています。
Bluetoothで接続したGalaxyデバイスの着信やSMSなどを含む全ての通知がリアルタイムでパソコン上にも表示されます。テキストやファイルなどの送信もPC-Galaxy/Galaxy-PCで行え、タイムラグもありません。ケーブルいらずのファイル管理が実現できます。
Smart Viewでは接続したGalaxyデバイスのスクリーンをパソコンに映し出すことができ、そこから操作をすることもできます。こちらも非常にスムーズに動きます。
Samsung Gallery
Galaxyデバイスから写真を同期させることも可能です。Google DriveやOneDriveなどのクラウドストレージサービスとの連携もできますが、やはりサムスン純正のクラウドサービス同士の相性が一番良いです。
ここがスゴイ!4 スマホとPCで一つの充電器をシェア
同じくサムスンのGalaxy A50sをメインスマートフォンに使っている筆者ですが、Galaxy Book Sに付属の充電器を使えばスマートフォンも高速充電することが可能です。
一般的なノートパソコンの充電器とは比較にならないほどコンパクトで小さいGalaxy Book Sに付属の充電器。サイズが小さいだけでなく、スマートフォンの充電もできてしまうため、持ち歩く荷物を減らすことができました。
同じUSB Type-Cの充電器といっても、充電規格も多く存在しており相性などもあるため、ガジェット類のメーカーを統一することのメリットを感じました。
USB Type-Cバンザーイ!!!
本体のデザイン
ノートパソコンの印象が薄いサムスンですが、WindowsからChrome Bookまで韓国国内やアメリカなどを中心に展開しています。今回登場の新作ラインナップではこれまでのノートパソコンとは違い、Galaxy Book Sではサムスンのロゴが押し出されておらず、さびしさすら感じます。ディスプレイ下にあるSAMSUNGロゴもホログラムのように光りますが、全く目立ちません。
ロゴを含めて全体のデザインが現行モデルで一新されており、ついにノートパソコン市場も本気で攻略しようとしているのが伝わります。
エンブレムシールも本体裏面にまとめてあり、メーカーロゴも全く目立たないシンプルかつモダンなデザイン。オシャレです。サムスン製のノートパソコンとひと目で判断することは難しいでしょう。
Snapdragon 8cxはどうよ
チップセットにはSnapdragon 8cxが搭載されていますが、IntelやAMDのものと比べるとどうでしょうか。Qualcommによれば第八世代Kady Lake RのCore i5-8250Uよりも高性能ということでした。Snapdragon 850よりも大きくスペックアップしているということで、実際に使ってみても驚きました。
Snaodragon 8cxのCPUはKyro 495、GPUはAdreno 680です。
ゲームをプレイしてみましたが、Unity系のゲーム「密です」はとても快適に動き、グラフィックにも全く不満がありません。動画編集もライトな使い方なら問題なく、エンコードでもストレスはありませんでした。MSオフィスの使用やブラウジングなどとなれば、なんら問題なく快適に利用できます。パソコン本体はファンレスとなっていますが、駆動音はもちろん、発熱もほとんどありません。スマートフォンを使っているような感覚です。
本体の起動速度はとても速く、MSオフィスなどのアプリケーションの起動速度も速くてストレスを感じません。私のようなパソコン素人にIntel製チップセットとの違いは分かりませんでした。
バッテリー
バッテリーのもちは想像通り、すばらしいです。Windowsではバッテリーメニューで残り〇時間使えますという目安の数字が計算されるようになっていますが、Galaxy Book Sではフル充電の直後では1日と〇時間(24時間オーバー)という過去に見たことない数字が表示されます。
目安なので正確ではありませんが、20時間は体感でも持ちこたえることが多いです。充電のペースは二日や三日に一度で済むようになりました。バッテリーは交換不可なので、何年間使えるかは心配です。
カメラ・スピーカー・音質
カメラは720pHDに対応していますが、あまり質がよいとは言えず、顔がやや荒く映ります。細いベゼルの中に配置されたカメラは、見た目の美しさのために犠牲になった印象を受けました。
反してスピーカーの出来は非常に素晴らしいのが印象的でした。AKGチューニングのスピーカーは本体パームレストの下部分に2つ配置されていますが、ノートパソコンのスピーカーのレベルを超えたクオリティです。音のボリュームが出るのはもちろん、奥行きのある低音も扱え、非常にこだわっていると感じました。ブロガーS氏を含め、多くのメディアがGalaxy Book Sのオーディオを絶賛しており、その評価は正しいでしょう。最近のiPadやMacBookより確実にクオリティが高いというのが筆者の評価です。どこに配置されているか分からないスタイリッシュなデザインも気に入っています。
キーボード
ノートパソコンを買うときはキーボードにこだわる筆者ですが、Galaxy Book Sのものはいかにも最近のノートパソコンに搭載されるキーボードという印象です。
13インチノートパソコンということで、キーピッチは標準レベルです(密ではありません)。キーストロークは何ミリか不明ですが、少し浅いのが気になりました。本体の薄さを考えれば文句は言えず、むしろ良い出来だとは思います。キー本体はマットのため指紋は全く目立ちません。
キーボード自体にバックライトも搭載されていますが、キートップ全体が光るというわけではなく、文字のみが光る仕様です。バックライト非搭載のノートパソコンも多いため、ここはプラスポイントでしょう。
電源ボタンには指紋センサーが搭載されており、Windows Helloのログイン時に指紋認証が使えます。とても素早くロックが解除でき、気に入っています。指紋センサーだと分かりにくい見た目も、セキュリティ的には安心できます。
筆者も久しぶりに使うUS配列キーボードは時々不便になりますが、慣れの問題でしょう。ガマンだガマン!!
データ通信(未検証)
SIMカードを挿入できるので、外出先でもデータ通信を使ってインターネットを楽しむことができます。筆者の購入したものはUS版Verizon版のためおそらくSIMロックがかかっていますが、SIMフリーモデルであればとても便利になるでしょう。
日本でも使用できるかは検証していません。
タッチパッド
タッチパッドはツルツルと滑らせて操作ができます。つやありでも指紋が目だたなく、快適に使えています。位置も真ん中にあるためタイピングのジャマにはならず、サイズ感もちょうどよくて気に入っています。
ここがダメ! ARMベースのチップセットの欠点
搭載されているWindows 10 Home自体は64bit版のようですが、Snapdragon 8cxがARMベースチップセットであるため64bit版のアプリには対応しません。
クリエイティブ系アプリになると32bit版が存在しないことがほとんど、すべてのアプリが正常に動作する保証もありません。ここにはARMの限界を感じました。人によってはGalaxy Book Sに加えて別にサブのパソコンを用意する必要があるでしょう。Galaxy Book Sでなんでもできちゃう!ということはありません。
しかし、Windowsの親元であるマイクロソフトがSurface Pro XでARMのノートパソコンを出しているくらいなので、全くダメというわけでもなく、今後の将来性はあるのではないかと思いました。事実、業界でも少しずつ注目を集めています。
ここがダメ!2 明るさ調整
明るさの調整幅が気に入りません。明るさ最小から一段階上げただけで、とたんに明るくなってしまうのがマイナスポイントです。最大輝度自体はきちんと出るので満足しています。
まとめ
新型MacBook AirにWindows 10を積んで使うか、HPのENVY 13の購入をずっと考えていた筆者。Galaxy Book Sの入手は簡単ではなく、何度もENVYを選ぼうかと悩んでいました。
しかし、MSオフィスなど限られた使い方しかしないので、MacBook Airよりスペックが低くても軽さと薄さ、バッテリーなどで優れているGalaxy Book Sはとてもよいチョイスでした。スマートフォンからタブレット、パソコンまでを一つのメーカーの製品で統一できた達成感も味わえました。
Galaxy Book Sを新型MacBook Airと競わせてもおかしいことはなく、それぞれに強み弱みがあります。玄人パソコンユーザーでも人によっては、MacBook Airなどの人気パソコンを越える価値を見出すことができる、そんなパソコンだと感じます。合う人にとっては名機、合わない人にとってはARMチップセット搭載のコスパの悪い迷機になるのです。
おまけ:サムスンがノートパソコンでも本気を出した結果
サムスンのノートパソコンの現行ラインナップがこれまでと違うという話を聞くようになりました。サムスンに何があったのか?という声もあります。Galaxy Book Sもそのラインナップの一つですが、その他ラインナップを一部紹介します。
Galaxy Book Flex
Intel製チップセットを採用しているWindowsノートパソコン。ディスプレイには自社製のテレビにも使われるQLEDディスプレイを採用。360度に回転するほかタッチペンを搭載しており、クリエイティブな用途にも向いていることが特徴。タッチパッド部分はQiで手持ちのGalaxyデバイスなどをワイヤレス充電(パワーシェア)できるようになっています。
Galaxy Noteユーザーに強くおすすめができるノートパソコンです。
Galaxy Book Ion
Galaxy Book SとGalaxy Book Flexとは違いスタンダードなチョイスとなるのがこのGalaxy Book Ion(アイオン)です。こちらもQLEDディスプレイを採用しており、ワイヤレス充電機能などの特徴をGalaxy Book Flexと共有しています。
Galaxy Book Sの欠点であるチップセットのパフォーマンス性能やインターフェイスなどの弱みを排除したのがGalaxy Book Ionです。
Flex、Ion共に価格は若干高め
Flex、Ion共に日本では未発売ですが、Galaxy Book Sに比べて定価は$300~400高めです。
SamsungはタブレットとかPCとか廉価スマホとか日本に投入してもいいと思うんだけどなぁ