Zenfone 6シリーズでフリップカメラという業界でも珍しい技術を採用したことで、日本国内外でともに話題となったASUS。台湾にルーツを持つ同社はかつてスマートフォン事業でも好成績を誇り、高いマーケットシェアを維持するプレイヤーでもありました。Zenfone 7を続いて発表したものの、一部のコアなファンを除いてはあまり支持されていないというのが正直な印象です。
看板であったZenfoneからゲーミングラインのROG Phoneシリーズに偏りを見せるASUSは、新たに正式発表がされて間もないZenfone 8シリーズで変化を起こせるのでしょうか。
なお、Zenfon 8シリーズは、Zenfone 7シリーズに続き日本発売が有力視されています。
目次
Zenfone 6 / Zenfone 7のおさらい
Zenfoneシリーズは、他社からの差別化を追求したフラグシップラインです。特にフリップカメラはその見た目や独自機能から話題を呼びましたが、珍しいスマホという話題性が先を言ってしまっている印象を受けます。
Zenfone 6での発見 - 本当にユーザーが欲しいもの
Zenfone 6は2019年にASUSが送り出した、フリップカメラを搭載したSnapdragon 855採用のフラッグシップ機でした。その一方で、本体のバッテリー容量大型化を達成すべくインディスプレイ指紋センサーの採用は見送り、結果として必要条件でなくなったAMOLEDの代わりとしてIPS LCDをディスプレイに選択しました。当時のASUSは5,000mAhの大型バッテリー搭載という点にこだわりたかったもようです。
また、当時廃止の傾向に業界が動き出していた3.5mmイヤホンジャックやSDカードへの対応、LED通知ランプの搭載などもユーザーに約束するべく動いていました。
Zenfone 7での挑戦 - 妥協をしない姿勢
2020年に登場したZenfone 7シリーズは、Zenfone 7とZenfone 7 Proのダブルラインナップとなりました。業界内の競争が激化したことで細分化が進むユーザーのニーズに応えるべく、ベースモデルと上位モデルを用意したのは良い選択だったでしょう。
Zenfoneの新たな特徴となったフリップカメラはレンズがトリプルに強化され、カメラスペックが向上。フリップ機構自体の耐久性も見直しがされていました。ディスプレイはAMOLEDを採用し90Hzのリフレッシュレートに対応。バッテリーは5,000mAhのままでしたが30Wの高速充電対応ともなっていました。
着実な成長を遂げたものの、重量は190gだった前作から230gに大幅に上昇。筆者も実機を触っていないためコメントはできませんが、受け入れがたい点でした。また、防水防塵非対応およびインディスプレイ指紋センサー非搭載であり、Galaxy SシリーズやHuawei Pシリーズなどを差し置いて選ぶ理由はあるのかと考えさせられるフラッグシップだったというのが筆者の感想です。
中小メーカーとして「珍しいスマホ」開発に取り組むスタンスは理解できる
奇抜なスマホ開発を得意とするLGが撤退してしまいましたが、残る中小メーカーであるSonyやSHARPも「コアなファン層をターゲットとしたスマホ」や「珍しいスマホ」開発に走り勝ちではあります。
また、Zenfoneシリーズは、Xperia 1シリーズやAQUOS Rシリーズよりもコスパ面では「まずまず」です。
Zenfone 8シリーズは2つの「珍しいスマホ」を開発
Zenfone 8シリーズは、8と8 Flipの位置づけが分かりにくいシリーズとなっています。
Zenfone 8 | Zenfone 8 Flip | |
ターゲット顧客 | 小型のハイエンドAndroid機を求める顧客 | (Zenfone 6 / 7シリーズ以来の)フリップカメラ愛好者 |
SoC | Snapdragon 888 | Snapdragon 888 |
メモリ・ストレージ | 6/128, 8/128, 8/256, 16/256GB | 8/128, 8/256GB |
ディスプレイ | 5.9インチAMOLED ~120Hz | 6.67インチAMOLED ~90Hz |
カメラ | 64MP f/1.8, 12MP f/2.2 + 12MPセルフィー | 64MP f/1.8, 12MP f/2.2, 8MP、フリップカメラ |
バッテリー | 4,000mAh /30W | 5,000mAh / 30W |
防水防塵 | IP68 | なし |
重量 | 169g | 230g |
microSD | 非対応 | トリプルスロット |
イヤホンジャック | あり | なし |
Zenfone 8 Flipは、SoCがSnapdragon 888になった以外は、Zenfone 7とほとんどスペックが変わりません。Zenfone 8にも妥協点は一部あるものの、ASUSの力の入れ具合が伝わるのはZenfone 8 FlipではなくZenfone 8です。
なお、Zenfone 8も5.9インチのディスプレイサイズに対して169gという重量ですが、スペックなどを度外視すれば決して優秀な数値ではありません。本体サイズの割に重量はあるため、実機を手にしたときの感触は想像と異なる可能性もあります。
ニッチなニーズを掴み取ろうとする意志は変わらない - 小型スマホ市場開拓なるか
Zenfone 8は5.9インチの小型ディスプレイを搭載していることが非常にポイントとなります。一方で、小型スマートフォンでありながらSnapdragon 888を搭載したフラッグシップカテゴリに分類される機種でもあります。
本体サイズを抑えつつもスペックの高さを求めるというニッチなユーザーにとっては非常に良い選択肢となりそうですが、小型ハイエンド機がどれだけ大衆に受け入れられるかはそう期待できないでしょう。アメリカ市場に限って言えば、iPhone 12シリーズにおいてiPhone 12 miniの人気は伸び悩んでいると伝えられています。
スマホにコンパクトさを求めるユーザー層と、スペックの高さを求めるユーザー層は対極にあるというのが筆者の意見です。なお、SonyはHelio G35を搭載した小型機Xperia Ace 2をDocomoから発売しました。
「小型のハイエンドAndroid機を求める顧客層」と「(Zenfone 6 / 7シリーズ以来の)フリップカメラ愛好者層」の二つのニッチ市場を狙ったZenfone 8シリーズですが、果たして上手くいくでしょうか。
上手くいかない場合は、Zenfone 9シリーズで新たな「珍しいスマホ」を世に出してくる可能性もありそうです。
ログ5との違いを出せないなら8あんまり要らんよな