スマートフォンの対応周波数帯を見ると、FDD、TDDといった単語をたまに見かけますね。LTEで言ったら1-30番代のBandがFDD、40番代がTDDといった印象をお持ちではないでしょうか。
さて、FDD・TDDとはなんのことなのでしょうか。今回はFDDとTDDの違いを簡単に解説しようと思います。
目次
FDD・TDD、とは双方向無線通信の形式のこと
FDDは「Frequency Division Duplex」、TDDは「Time Division Duplex」の略です。
それぞれ直訳すると周波数分割二重(通信)と時間分割二重(通信)です。
無線通信には上りと下りがある
FDDとTDDの違いを説明する前に、無線通信について基礎的な考えを説明する必要があります。
無線通信には上り(アップロード)と下り(ダウンロード)があります。例えばtelektlistの記事をタップすると、その記事を読み込みたいという指示がアップロードされ、記事の内容がダウンロードされます。複数の端末がアップロード、ダウンロードし、それらを少ない基地局でさばいていく必要があります。
そのときに大事なのが上りと下りの電波が干渉しないようにすること。一つのBandで同時に上りと下りを処理するときに、どっちがどの電波なのかを認識できなければなりません。
FDD・TDDの違いは上りと下りの認識方法の違い
FDD・TDDは上りと下りを認識する形式の違いになります。
FDDはFrequencyとあるように、一つのバンド内で周波数帯を微妙に変えることで上りと下りを認識する方法です。例えば、Band 1(2.0-2.1 GHz)で、大雑把な例えですが2.0GHzを上り、2.1GHzを下りとすることで、どっちがどっちか認識できるようになります。このように周波数帯を更に細かく分割する方法が、FDDです。
一方で、TDDはTimeとあるように、送受信の時間によって上りと下りを認識する方法です。これまた大雑把な例えですが、0、1、2秒は上りの電波、0.5、1.5、2.5秒は下りの電波というようにして電波の送信時刻ごとに予め決めておくことでどっちがどっちか認識できるようになります。
一長一短だが近頃はFDDが主流である
FDD・TDDにはそれぞれメリット・デメリットがあります。
TDD最強説?
TDDは同じ周波数帯で送受信を行うため、送受信で利用する時間の比率を変更することで上り下りの帯域の比率を変更することができます。我々がYouTubeといった動画共有サイトを利用するとき、ダウンロードのほうがアップロードよりも圧倒的に通信量が必要です。TDDでは上りを犠牲にすることで下りを強化する事ができるます。このように、状況に応じてフレキシブルに対応することができるのがTDDの強みです。
一方で、FDDは上りと下りの帯域は事前に決定されているため、上りが空いているからと言ってそれを下りに利用することはできません。FDDは高速道路の渋滞が起きてもどうすることもできない一方で、TDDは車線数を融通することができるといった具合です。
それでもFDDが主流な理由
こうしてみると一見TDDが最強な気がしてきますが、そうも行きません。
電波は音や光と同じで伝達するのに時間がかかります。時間差を利用したTDD方式では離れた場所から発した電波が距離差によって時間差が生まれ、干渉してしまうという問題があります。これを解決するのが難しいため、未だにFDDが主流なのです。
キャリアアグリゲーションがFDD化を加速させる?
FDDのデメリットは片方が空いていて片方が渋滞しているときに融通がきかないことでした。しかし、これは一つの周波数帯のみを利用している時の話です。
複数の周波数帯を束ねて通信に利用するキャリアアグリゲーションを用いれば、渋滞を緩和させることができます。
TDDの技術を進歩させるよりも、FDD形式で帯域を拡大することのほうが簡単で効果的なため、ほとんどのキャリアがそのような対策をとっています。無理にTDDを利用せずとも他の技術でなんとかなるというのが現状のようです。
今回はFDDとTDDについて簡単に解説しました。
今後もシンプルなFDD方式が広まってくことが考えられますが、帯域が自由に変えられるTDD方式も魅力的です。特に中国ではTDD方式が普及しているので、ひょっとしたらHuaweiやZTEあたりがTDD方式で画期的な手法を生み出すかもしれませんね。
そんなことより、お嬢さん、僕と朝まで5Gの話をしないか?(キリッ)