2021年6月に発売されたSHARPの新型フラッグシップスマートフォンのAQUOS R6。
AQUOS R6はドイツの老舗カメラメーカーであるライカと協業し、1インチセンサーを搭載したカメラで世界中で大きな話題となったスマホです。
AQUOS R6がすごいのはカメラだけではありません。自社で開発したIGZO技術を使った1Hz~240Hzの可変リフレッシュレートで2,000ニトのPro IGZO OLEDディスプレイや、世界最大級面積の指紋認証センサーであるQualcomm 3D Sonic Maxなどの独自機能もたくさん搭載されています。
今回はそんなSHARPのAQUOS R6(Docomo版)を購入しましたのでレビューしていきます。
※ 本レビュー執筆後に行われたソフトウェアアップデート(Docomoは7月12日配信)により、画質やカメラのAFは一定の改善がなされました。
目次
AQUOS R6はSHARPのハイエンド機
AQUOS R6はSoCにSnapdragon 888を搭載したハイエンド機です。
ストレージは128GB、メモリは12GB。ストレージが少なめですが、microSDカードに対応しています。
ディスプレイは1260 x 2730pxで6.6インチの有機ELディスプレイでカメラは2020万画素の1インチセンサーにライカの19mm相当F1.9ズミルックスレンズを搭載しています。
バッテリーは5,000mAh。防水とおサイフケータイに対応していますが、ワイヤレス充電には非対応となっています。
基本スペック | |
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ディスプレイ | 6.6インチ, 1260 x 2730, 有機ELディスプレイ, -ppi |
サイズ | 162 x 74 x 9.5mm, 207g |
システム | |
OS | Android 11 |
Soc | Qualcomm Snapdragon 888 |
CPU | Kryo 680 8コア, 2.84 GHz |
メモリ(RAM) | 12GB |
ストレージ | 128GB, sd_card microSD最大【※排他仕様かどうかは不明】GBまでSIM2スロットを使用 |
カメラ | |
メインカメラ | camera_rear 20.2MP, F値/1.9, LEDフラッシュ, PDAF, Leicaカメラ |
メインカメラ特徴 | camera |
前面カメラ | camera_front 12.6MP, F値/2.3 |
センサ類 | 画面内指紋認証センサ |
機能 | 防水 IPX 8, 水面下での使用が可能, イヤホンジャック あり |
その他特徴 | ハイレゾ対応 |
バッテリー | battery_charging_fullType-C, 5000mAh |
当たりにくいが当たれば強いカメラ
AQUOS R6最大の特徴はやはりカメラです。昨今のスマートフォンは複数のカメラを搭載する中、AQUOS R6のカメラはなんと一つだけ。
そのメインカメラはSony製の2020万画素1インチセンサー+19mmF1.9の7枚玉ズミルックスレンズとなっています。
イメージセンサーの大きいスマートフォンは1/1.12インチのXiaomi Mi 11 Ultra、1/1.28インチのHUAWEI Mate 40 Pro等が挙げられます。これらはスマホ向けに作られたセンサーですが、いまだにスマホ向けの1インチセンサーは存在しないためAQUOS R6はコンデジ向けのイメージセンサーを採用しています。厚みがあってスマホに最適化されていないセンサーを暑さ9.5mmの筐体にねじ込み、さらにライカブランドを冠していることは称賛に値します。
AQUOS R6の描写はさすが1インチセンサーといった感じ。HDRを使わなくともダイナミックレンジに余裕があります。HDRを使わないことでよりリアリティのある写真が撮れます。
暗所性能も抜群に良いです。暗いところで美しい写真が撮れるだけでなくAF用にiToFセンサーを積んでいるためオートフォーカスもバチピンとなっています。
画角は35mm版換算で19mm相当であるためかなり広め。9.5mmの厚みに抑えようとしたため仕方なかったとは思いますが、広くもなく狭くもなくといった具合であり構図には難儀しました。
AQUOS R6にはLeitz Phone 1のような専用のモノクロモードはありませんが、マニュアルモードで色合いを0にすればモノクロっぽい写真が撮れます。雲の質感がよく出ていて梅雨の曇天にぴったりです。
向かないシーンが多い
以前「AQUOS R6のカメラの技術的にすごい点とそれでも僕が微妙だと思う理由【コラム】」という記事をアップしましたが、そこで心配していた点は大体あっていました。
AQUOS R6のオートフォーカスははっきり言って鈍足そのものです。泳ぐペンギンなど動きの多い被写体の撮影には向きません。それだけでなく、iToFの性質上ガラス面はピントが合わないことが多々あり、車内からの撮影やガラスケース越しの撮影はMFが必要になります。
最短撮影距離は長めの約10cm。テーブルフォトはデジタルズームを使って対応する他ありません。
光学的ボケは思ったほど汚くなく比較的素直でしたが、ピント面が球面になっているのか近~中距離で平面の写真を撮ると周辺が大きく流れます。書類の写真とか撮るのには向いていません。
設定を追い込んで追い込んで頑張って撮った一枚は他のスマートフォンの追随を許さない素晴らしいものになります。一方で、シングルカメラであるためか、相性の悪いシーンが多いです。
AQUOS R6のカメラにこだわりがある人にはおすすめできますが、オールマイティーに使えるカメラではないため万人向けだとは言えないと思います。
感動的な240Hz+Pro IGZO OLEDディスプレイ
AQUOS R6はSHARPのRシリーズで初めてOLEDを採用しています。
採用されているディスプレイはPro IGZO OLED。1-240Hzの可変リフレッシュレートに対応、10億色表示に対応し、ピーク輝度2000nit、コントラスト比2000万:1を達成している省電力でありながら超ハイスペックなディスプレイとなっています。
設定項目もテレビに強いSHARPらしいものとなっています。「リッチカラーテクノロジーモバイル」より色味の調整やHDRなどの設定が可能です。
そんなディスプレイは素人目に見ても「超キレイ」です。輝度が高くて屋外でもはっきり見えるし、見ていて爽快感すら感じます。こればかりは写真では伝わらないと思いますので是非店頭で実機に触れてみてください。
また、240Hzのスクロールは明らかになめらかだとわかるほどヌルヌル動き、操作感の向上に寄与しています。ただ、Galaxy Noteシリーズのようにスタイラスがあるわけでもないので「だからなんなんだ感」は少しありますね。
画質が安定しないときも
基本的には満足できるディスプレイですが、カメラ同様にシーンによっては「おや?」となるときがあります。
一つは低輝度時にこってりした画質になること。暗い部屋で操作しているとき、ディスプレイの暗いところの色が沈み、Lightroomでコントラストを+100にしたような絵になります。
また、たまにグレーの表現がザラザラしていることがあります。真っ黒のときはもちろんないのですが、若干光っているときに画面が均一ではないことがあります。IGZOディスプレイが高開口率であることが影響しているのでしょうか。詳しいことは不明です。
エッジディスプレイの操作感は最悪
また、AQUOS R6はエッジディスプレイなのですがこれが見た目はかっこいいけど操作感が最悪です。
普通に持っているだけなのにエッジの感度が高く、誤操作が連発します。設定でエッジ部分の感度が下げられるようになるとベターですね。
超快適なディスプレイ内指紋認証
AQUOS R6は世界で初めてQualcomm 3D Sonic Maxに対応した民生機となります。
ディスプレイ内指紋認証のエリアはご覧の通り超巨大。初回の登録も1回で済み、速度も精度上出来で快適に利用できます。
特筆すべきなのは濡れた手でも反応すること。ほとんどの指紋認証は手が少しでも濡れていると反応しませんが、AQUOS R6の指紋認証センサーは少しであれば手が濡れててもロック解除が可能です。
また、2本指の同時指紋認証にも対応しており、セキュリティの大幅向上が可能です。これにより、例えば寝ている間に勝手に他人にロックが解除されるといったことを未然に防ぐことが可能になります。
なお、もちろん両手操作が必要になりますので私はオフにしています。
iPhoneに劣らないヌルヌルな操作感
AQUOS R6はSnapdragon 888を搭載しているため、docomoアプリがある割にはかなりヌルヌル動きます。ミドルレンジ特有のちょっともたつく感じもなく、最新のiPhoneのように非常に快適に利用することができます。
めちゃめちゃ重いで有名な3Dゲームの原神を動かしてみてもカクつくことなく快適に遊べます。ディスプレイが大きく美しいことも相まって遊んでて本当に楽しく、ゲーム体験としては素晴らしかったです。ちなみにAQUOSのゲームメニューでゲーム利用時に上下左右の画面端操作を受け付けない設定があるため、ゲームで遊ぶときはエッジディスプレイの誤作動は防げます。
また、Snapdragon 888は熱を持つことで有名ですが、私の環境では原神や充電時以外はそこまで熱くなりませんでした。徹頭徹尾快適です。
充電環境はちょっと不満あり
AQUOS R6には充電器もケーブルも付属していません。
公式サイトによりますと、docomoとSoftbank純正の最大27Wの充電器に対応しているとのこと。(docomo版はACアダプタ 07、Softbank版はSB-AC20-TCPD)
充電速度はだいたい15%/30分と遅め
docomoかSoftbankの純正充電器で130分で満充電になるとのことですので、27W以上の出力ができるAnkerの30W充電器(Anker PowerPort Ⅲ mini)で充電してみました。充電結果は以下の通りです。
20%(充電開始)→36%(30分)→51%(60分)→65%(90分)→77%(120分)→89%(150分)
私の環境では130分で満充電にはなりませんでした。充電速度はだいたい15%/30分で、50%/30分のiPhoneやPixelと比べるとかなり遅いです。また、原因はわかりませんがバッテリー容量の比から見るに27Wじゃなくて18W充電になっている気がします。
バッテリー容量が5,000mAhとAQUOS史上最大級であるので仕方のない気はしますが、ちょくちょくこまめに充電する必要はありそうです。
充電時のOLED焼き付きが怖い
また、充電中は残り電池残量を表示してくれるのですが、表示位置が同じ(僅かにずれているらしいですが大幅に変わることはない)でこの表示をオフにすることができないためOLEDをの焼き付きが非常に怖いです。特に充電中は熱を持ちますのでなおさらです。
一応回避方法はあって、「設定→ディスプレイ→詳細設定→スクリーンセーバー」より任意のスクリーンセーバーを設定すればこの表記が消えます。これにより、ランダムに出現する時計や真っ黒な写真を表示すれば焼き付きは回避できそうです。
バッテリー持ちは(がんばれば)2日持つ
AQUOS R6をメインスマホとして数週間利用しましたが、一日の終りになっても40~60%であることが多かったです。
余計なdocomoアプリが沢山動いている割にはかなりバッテリー持ちはいいです。IGZOディスプレイのおかげでしょうか。
充電速度が遅いとはいえ、そもそもバッテリーが大きく減らないのでこまめな充電さえ忘れなければバッテリー持ちに悩むことはないでしょう。
AQUOSの独自機能「AQUOSトリック」でもっと使いこなす
AQUOSシリーズにはSHARP独自の機能である「AQUOSトリック」という機能がついています。その中でもかなり便利だと感じた機能をいくつかご紹介します。
SONYのHSパワーコントロール以上のインテリジェントチャージ
AQUOS R6にはバッテリーをいたわる機能としてインテリジェントチャージが搭載されています。
リチウムイオンバッテリーは90%から100%に充電するときに最も負荷がかかります。そのため、インテリジェントチャージでは充電時の最大電池残量を90%にして90%以上はスマホにダイレクト給電する事が可能です。
それだけでなく、画面消灯中は充電するものの画面点灯中はダイレクト宮殿になる機能もあります。これにより、ゲームなどバッテリー負荷や発熱の大きいアプリ利用時にスマートフォンへの負担を大きく低減することが可能です。
SONYのHSパワーコントロールと似た機能ですが、ゲームなど一部アプリのみのHSパワーコントロールに対してSHARPのインテリジェントチャージは全アプリ対応。ChromeやYouTube利用時、テザリング利用時でもバッテリーを傷めずに運用することが可能となっています。
豊富なショートカットたち
AQUOS R6には電源ボタンと音量ボタンの間にアシスタントキーが付いています。これをクリックするとGoogle Assistantやエモパーが起動し、音声による操作が可能になります。
残念ながらこのボタンはカメラや特定のアプリの起動に利用できませんが、その代わりに電源キーの長押しで任意のアプリの起動が可能です。
これにより、長押しはブラウザやTwitterの起動、2回押しでカメラの起動など便利なショートカットが利用できるようになります。
この他にも自動でスクロールしてくれるスクロールオートや、特定の場所でテザリングが音になるテザリングオート、指紋認証長押しでスマホ決済アプリが起動するPayトリガーなどがありますが、私はあまり使いませんでした。
その他気になった点とか
設計上成約があったのかわかりませんが、底面の端子やスピーカーの高さが同じじゃないのが気持ち悪いです。特にUSB-C端子が下についているため、充電しようとしたときに若干ポートに刺しにくいのが気になります。
また、SIMスロットがゆるゆるです。しっかり閉まるので防水性は大丈夫だと思いますが、SIMを挿入するときに壊さないか気を使います。
あと、SIMスロットをいじると強制的に再起動されます。再起動する必要、ありますか?
まとめ:AQUOSはスマホオタクが選ぶスマホになった
いままでのAQUOSといえばよく知っているメーカーで安定性を求める中年~シニア層が好むスマートフォンという印象が強く、正直私も興味をそそられませんでした。
しかし、AQUOS R6は1インチセンサーとライカコラボ、ハイリフレッシュレートで高輝度を両立したPro IGZO OLEDディスプレイ、非常に快適になったQualcomm 3D Sonic Maxなどの他のスマートフォンにはない尖った要素や新しい技術がたくさん搭載されました。
カメラはAFに弱い、ディスプレイは低輝度の表示が変といったまだまだ詰めの甘いところもあります。しかし、必要な機能だけ搭載して普通に使えるスマートフォンを作るのではなく、安定を求めるSHARPの客層を離れ、最先端の技術を詰め込んで新しい分野に挑戦する姿勢は素晴らしいし、ガジェット好きなギークな人にとっても興味をそそられるモデルとなりました。
他のスマートフォンよりも癖は強いものの、致命的な不具合もなく快適に使えるAQUOS R6はSHARPのイメージを大幅に変える一台になると思います。
SIM抜き差しで再起動はAQUOSシリーズの恒例だな