Google謹製のスマートフォンであるPixelシリーズは強力なカメラ性能が売りの一つです。
その中でもひときわ目立つのが天体撮影モード。スマートフォンを三脚などで固定することで4分ちょいの露光を行い、暗闇の中でも星を浮かび上がらせることが可能というスマートフォンのカメラとは思えない機能です。
今回、筆者は12/14に極大日を迎えたふたご座流星群を見に行く機会がありましたので、Pixel 4aを持って実際に天体撮影モードを試してみました。実際に手を動かして利用することで噂に違わぬ強力なソフトウェア性能と、厄介な弱点がわかりましたので今回はPixel 4a(4G)の天体撮影モードのレビューをしていきたいと思います。
天体撮影モードの使い方
Pixelの天体撮影モードは夜景モードのように専用の項目があるわけではありません。
専用の項目がある夜景モード。夜景モードのとき、シャッターボタンは月のマークになる。
天体撮影モードをオンにするにはまず夜景モードにし、その状態で三脚に固定して暗いところにカメラを向けることで初めて利用できるようになります。
天体撮影モードのときは「天体写真機能ON」と表示され、シャッターボタンは星のマークになる
夜景モードの状態で三脚に固定してしばらくすると自動的に天体写真モードがオンとなるのですが、この状態で少しでも振動を与えると天体写真モードが解除され、普通の夜景モードとなります。(スクリーンショットを撮るのは至難の業でした...)
岩の上に固定する等の荒業もありますが、スマホが傷つきかねないのでおすすめできません。三脚無しでの利用は厳しいので使ってみたい人は小さいやつでもいいので三脚を用意する他ないでしょう。
私が利用している三脚はこれ。Mnfrottoというイタリアの三脚メーカーが作ったもので、信頼性も高くコンパクトでおすすめです。(別途スマホホルダーが必要です。)
シャッターボタンをタップすると4分以上の露光を開始します。Google曰く、16秒の露光を15枚撮影し、それらをコンポジット(加算平均)しているとのこと。
通常広角カメラで星が点に映るのは20秒近くが限界であるため、16秒の露光というのは非常に合理的である一方で、スマートフォンのカメラで16秒の露光をしても星はノイズで潰れてしまいます。そこで、15枚連続で撮影し、地球の自転の向きに合わせて画像をずらして合成することで同じ位置にある星は残し、ランダムに出現するノイズを消すという方法で天体写真を撮影しているのです。
この作業は天体写真ではよく行われるのですが、これをスマホの中で一瞬で終わらせる事ができるのはすごいです。
実際に撮れた写真
とりあえず最初に作例をお見せしましょう。
何枚か撮影した中で一番キレイに撮れたのがこれです。天頂に向けて撮影した一枚です。
中央に僅かな薄雲がかかっているものの、逆に天然のソフトフィルターのような役割を果たしてくれています。スマホでここまで撮れるのはすごい!
ちなみにEXIFはこんな感じ。一応16秒ということになってるんですね。
ISOは919といつもでは考えられないほど高くなっているのがわかります。
一応富士山の麓で撮影しましたので富士山と一緒に一枚。
手前のすすきは流石に潰れてしまっているものの、星がしっかりと映っています。天気が悪かったのが悔しいところ。
夜景モードと比較
同じ構図で通常の夜景モードで撮影したのがこの一枚。
一応星は映っているもののノイズ感がまるっきり違うのがわかります。天体撮影モード、恐るべし...!
この性能であれば夏のキャンプに連れて行って濃ゆい天の川とか撮りたくなりますね!
失敗も多い天体撮影モード
とまぁ天体撮影モードの威力が絶大なのが伝わったとは思いますが、実は結構失敗写真も多かったです。
ピンボケで星がすごい形をしている
一番多かったのがピンぼけ。真っ暗でオートフォーカスがままならないのはわかりますが、ピンボケ写真が撮れることが多かったです。無限遠のピントの位置ぐらい覚えておけると思うのですがなんででしょう?
これもピンボケ写真
ピンボケ写真に共通してるのが星以外も映っている写真であること。ひょっとしたら他のところにピントが持っていかれているのかもしれません。とりあえず無限遠に合わせておけばいいのに......
一度シャッターを押すと4分は持っていかれるので、4分後にチェックした写真がピンぼけだとかなり萎えます。これどうにかしてほしい!
あとこれは私がわるいのですが、露光中に前を通るとこういう光の帯が映り込むことがありました。撮影中はそこらへんに配慮しましょう。
まとめ:コンピュテーショナル・フォトグラフィを垣間見た
ワンタップで星空が浮かび上がる天体撮影モード、実に素晴らしかったです。
この天体撮影モードですが、極端に暗い場所であることと三脚が必須になるというその性質上、日常生活で頻繁に使うものではありません。アウトドア派の人はすでにでかいカメラとか赤道儀とか持っているだろうし、そうじゃない人は星を見に行くなんて年1であるかないかだと思います。それでもGoogleが天体撮影モードを作り、Pixel 4発表時に大々的に宣伝したのはこれがGoogleの目指すカメラの方向の一つだったのだろうと思います。
GoogleがPixel 3の発表時に提唱した「コンピューテーショナル・フォトグラフィ」。レンズとセンサーだけでなく、ソフトウェアで写真を制御しようとするこの考えは、HDRやポートレートモード、ナイトモードでよく説明に利用されます。しかし、コンピューテーショナル・フォトグラフィはダイナミックレンジが広くなるとか、ボケが作れるとか、暗いところでも明るく撮れるとかそういうことではなく、従来のカメラではできなかったことをスマートフォンの高性能なチップとAIや機械学習を使ったソフトウェアで補っていこうというものです。そのために、Googleはできること、考えつくことすべてをPixelに搭載しており、天体撮影モードはその一つだったんだろうなと思いますよ。
これはすごい