先日SHARPより発表された新型フラッグシップ端末のAQUOS R6。
1Hz~疑似240Hzの可変リフレッシュレートで最大2000ニトのPro IGZO OLEDディスプレイや世界初の2本指画面内指紋認証など、他のスマホにはない非常に攻めたスペックに仕上がっています。さらに、世界初の1インチセンサーのカメラを搭載した5Gスマートフォンであり、HUAWEIに次いでLeicaと協業して作られたハイスペックなカメラ性能も話題となりました。
今回はそのAQUOS R6の優れたカメラ性能と、実際に利用した場合に気になるポイントをご紹介していきます。
目次
世界初を実現したAQUOS R6のカメラ性能とは
まずはAQUOS R6のカメラスペックを簡単におさらいします。
カメラはイマドキのスマホとは思えないシングルカメラです。2020万画素の1インチセンサーでレンズは35mm判換算で19mm相当のF1.9の超広角ズミクロンレンズとなっています。
また、AF用にiToFカメラが搭載されています。
あらゆるスマートフォンよりも巨大な1インチセンサー
AQUOS R6は世界で初めて1インチセンサーのカメラを搭載したスマートフォンとなります。
過去にPanasonicが通信機能付きの1インチセンサー搭載カメラであるDMC-CM1を出していますので厳密には世界初ではありません。なので、世界初の1インチセンサーのカメラを搭載した5Gスマホとでも言っておきましょう。
1インチというとんでもなく大きいセンサーを搭載したため、集光性が大幅にアップ。解像感はもちろんのこと、夜景写真など光が少ないシーンでもノイズの少ない美しい写真を撮影することが可能です。
なお、このイメージセンサーはSony製であるとのこと。RX100シリーズのような絵が期待できます。
Leicaと協業して作られたカメラ
また、AQUOS R6のカメラはHUAWEIに次ぐドイツの老舗カメラメーカーであるLeicaと協業して作られたものです。協業はセンサー・レンズ設計、画質の調整まで含めたカメラシステムの全体の開発までに及び、撮れる写真は「Leicaが認めたもの」という付加価値が乗っています。
特筆すべきなのがズミクロンレンズ。AQUOS R6はF2.0のレンズを示すズミクロンという名がついていますが、これはAQUOS R6用に専用設計されたもの。7枚構成となっており、1インチセンサーの隅々まで解像度の高い光を届けるとともに、歪みもしっかりと補正されているとのことです。
AQUOS R6のズミクロンレンズの断面図キメェwww
胴状じゃなくて山状になってるレンズなんて初めてみたし、センサー側のレンズ曲面に2つの山がある構造なんて変態すぎるでしょ(笑)
こんなん初めてみた!!! pic.twitter.com/aRCTuU7POS— ナカヤマユウショウ @ telektlist (@yushonakayama) May 17, 2021
レンズの断面図をみてもその凄さがよく伝わります。後ろ3枚のレンズで意地でも収差を補正しようとしているのがわかりますね。
それでも僕が微妙だと感じた理由
※筆者はまだ実機に触れていないためここから先は筆者の憶測を多分に含みますのでご注意ください。
そんな革新的と言っても間違いないAQUOS R6のカメラですが、実際に使うとなると問題になりそうなポイントがたくさんあります。
1インチセンサーが活かせるのは超広角の19mmのみ
まずは画角の問題。AQUOS R6は1インチセンサーをコンパクトな筐体に入れるために標準カメラ、望遠カメラのないシングルカメラとなりました。
そのため、1インチをフルで活かせるのは超広角の19mmのみとなります。
一方で、標準画角の24mmのときは1インチセンサーのうち約6-7割しか使われません。1/1.12インチのMi 11 Ultraよりも小さくなります。ほとんどの人が24mm-28mmで慣れている今、19mmという画角があまりにも難しいのではないかと思います。
AQUOS R6が1インチセンサーをフルで活用するには19mmで撮影するしかないのですが、19mmめっちゃむずいと思うんだよなぁ
参考までにワイが撮った20mmの画角の写真載せときます、広すぎるのに広さに振り切れない、そんな感じです。 pic.twitter.com/H1arRdr6nd— ナカヤマユウショウ @ telektlist (@yushonakayama) May 17, 2021
ではなぜSHARPは19mmという画角にしたのか。超広角も搭載したかったからというのもあるとは思いますが、一番は技術的にそうするしかなかったからだと私は推測します。
一般的に焦点距離が多くくなればなるほどレンズは厚くなります。1インチセンサーで実焦点距離が大きくなると沈胴式でもない限りスマホサイズに入る厚みではなくなってしまうため、仕方なく超広角の19mmを採用したのではないかなぁと思います。
特に、今回はLeicaとの協業です。スマホらしいサイズ感を維持しつつ、Leicaの厳しい基準を満たすものが19mmしかなかったのではないでしょうか。
また、AQUOS R6は技術的に難しいのかLeicaの基準を満たせなかったかはわかりませんが、HUAWEI×Leicaのようにマルチカメラではありません。19mm以外は他のスマホと同じセンサーサイズであることを踏まえると、18-20mmあたりを愛用している人以外は活用するのが難しいと思います。
一方で、1インチセンサーである強みを忘れればどの画角でも色味や質感が同じであって扱いやすいカメラであるともいえるでしょう。
AF、最短撮影距離など1インチセンサーの弊害がクリアできるかどうか
また、1インチほどの大きいセンサーにすると画質以外の点で様々な弊害が発生します。
まずはオートフォーカス。1インチにすることで被写界深度が極端に浅くなり、光学的な自然なボケができる一方で正確で高速なオートフォーカスが求められるようになります。
ピント、ちょっと迷ってる...? https://t.co/zfcwlLMoRd
— ナカヤマユウショウ @ telektlist (@yushonakayama) May 17, 2021
AQUOS R6は専用のiToFを搭載することで暗いところでも高速で正確なオートフォーカスを実現しているとのことですが、Twitter上にアップされている発表会のハンズオン動画を見るにコントラストAFのようなゆらゆらとしたオートフォーカスになっているように見受けられます。
まだ製品版ではないためAFのようなが遅い可能性がありますが、1インチセンサー搭載でピント面がシビアなのにオートフォーカスが遅いとストレスになると思います。1インチセンサーでXperiaのようなコンティニュアス瞳AFがあれば完璧なのですけどね...
また、最短撮影距離も問題です。実焦点距離が大きければ大きいほど最短撮影距離は長くなる傾向にありますが、AQUOS R6がその点をクリアしているかどうかは注目すべきポイントです。まだ最短撮影距離の報告はありませんが、もし寄って撮れないのであれば飯撮りなどには向かないでしょう。(19mmの時点で向きませんが...)
また、小型設計の超広角レンズということで歪みも気になります。歪みはズミクロンレンズで1/10程度になったと発表されていますが、発表会の映像では歪んでいるものをデジタル処理で直しているシーンもでています。もしデジタルで歪みを補正しているのであれば動画撮影ではごまかせません。そこのところは要注意です。
非球面レンズだらけのスマホカメラの光学的ボケは汚い
AQUOS R6は1インチセンサーと明るいF1.9のレンズを採用することで擬似的なボケではなく自然な光学的ボケが表現できることをアピールしています。
光学的なボケが出るのは非常にいいことですが、スマホカメラは薄型でありながらも収差を補正しなければならないため、ほぼすべてのレンズに非球面レンズを採用しています。非球面レンズを使うとピントが合っているところはカリカリに写りますが、逆にボケが汚くなる傾向にあり、AQUOS R6も例外ではありません。
実際にAQUOS R6の作例を見ると、もちろんボケの境界線は非常に自然に仕上がっているもののボケ(特に周辺は流れもある)がザワザワとしており、お世辞にもきれいとは言えません。
もちろん背景が均一なところであればここまで目立ちませんが、背景ボケを使うときは被写体だけでなく背景にも気を使う必要があることには注意が必要です。
一方で、ボケが汚いことを逆手に取り、図と地(被写体とそれ以外)の距離感を大きく変えないことでじわじわとしたボケにし、印象的な作品に仕上げることも可能です。こういった作品は一般的なスマートフォンの擬似的なボケでは作れませんのでAQUOS R6の強みとも言えるでしょう。
コンピュテーショナルフォトグラフィーなどのソフトウェアの完成度に不安が残る
ここまではカメラ性能の話ですが、ここからはスマホカメラとしての話です。
スマホカメラはその強大な処理能力を使ったコンピュテーショナルフォトグラフィーもそれを構成する大事な要素です。その技術の根幹には複数枚同時撮影やデュアルカメラがありますが、AQUOS R6はシングルカメラです。GoogleがPixel 3で実現したシングルカメラのナイトモードや高解像度化するハイレゾショットいったものが、ソフトウェアに弱いという印象を持つSHARPに作れるのかというのが不安です。
極端な話、Leicaレンズの乗ってる1インチセンサー機がほしければInsta360 ONE R1やLeica C-LUXを買えばいいでしょう。スマホにしか出来ないコンピュテーショナルフォトグラフィーとしてSHARPの言うスーパーナイトモードや152mmまでできるデジタルズームの実用性、そしてHDRのクオリティは注目すべきポイントです。特にAQUOS R6はOIS(光学式手ブレ補正)がないため複数枚同時撮影は不可能ではないものの比較的難しいのでなおさら気になります。
とはいえ、SHARP公式発表会の作例集をみた限りかなりいい写真が撮れています。ソフトウェア問題は杞憂に終わると良いのですが...
まとめ:1インチという数値の魔法とリアルの乖離
AQUOS R6は世界初の1インチセンサーとLeica協業というインパクトが大きく、非常に優れたカメラであるという印象を覚えます。しかし、どうもこの文字列が独り歩きしているように思えるのです。
AQUOS R6は19mm超広角のシングルカメラであるため実際は19mm以外は他のスマートフォンと同じスペックのスマホだと言えます。その上、1インチセンサーを搭載したことでAFや収差ではおおきなディスアドバンテージとなるためそのあたりは詳しいレビューが出るまで油断ができません。
私はまだ実機に触れる機会がないため詳しいことはわかりませんが、少なくとも様々なメディアでわっしょいされているほど超すごいようには思えません。本当に1インチセンサーで得られる撮影体験はAFや最短撮影距離とかのデメリットを上回るのでしょうか。それに、SHARPがアピールしている各々の点も過去のSHARPのカメラを考えるとクオリティのチェックをするまでは安心できないでしょう。
いずれにせよ、SHARPがAQUOS R6で世界で(ほぼ)初めて1インチセンサーカメラを搭載したこと、HUAWEIに次いでLeicaブランドを背負っていることは革新的であることは事実です。実機が市場に出回り、作例写真やレビューがアップされるようになってから真の評価がなされるのでそれを待つといいでしょう。
AQUOS ZERO2のゴミさを見て
画面もすぐ焼きつくし
OSの挙動もおかしいしで
ハードウェアスペックが立派でも
シャープももう開発能力終わってんな
というイメージしかない