Googleは先日、米国の大統領令による制裁を受けてHuaweiとの取引を停止しました。今後HuaweiのスマートフォンはGoogleのサービスや特許を使用することができなくなる予定です。GoogleはAndroid Q Betaのウェブサイトに記載された対応端末から、ひっそりとHuawei Mate 20 Proを消去しています。
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Huaweiの独自OSは完成には程遠い
弊誌既報のとおり、HuaweiのEMUIの利用者は1日4億7000万人に達します。4億人のユーザーは、今後どうなるのでしょうか。実は、Huaweiはこの事態を予想して2012年から独自OSの開発に取り組んでいました。
今回の事態を受けて、Huaweiコンシューマー・ビジネス・グループのCEOであるRichard Yu氏は、今年の秋から来年はじめにもHuaweiによる新OSが利用可能になると発言しています。ところがThe Informationによれば、Huawei社内で「プロジェクトZ」と呼ばれる独自OSは「完成に程遠い」状態だといいます。
プロジェクトZをよく知る人物によれば、プロジェクトには浮き沈みがあり準備ができないままだということです。またOSが完成したとしても最大の課題はOS上にGoogle Playのようなアプリマーケットのエコシステムを構築することだといいます。
昨日行われたファーウェイ・ジャパンの新製品発表会の席上、日本・韓国リージョンプレジデントである呉波氏は「(Huaweiは)ユーザーや産業にとって有益なアンドロイド・エコシステムを引き続き発展させていく」と語りました。呉氏の発言と現状は一見すると矛盾しています。
新OSはどのようなものになるのか
Business InsiderによるとHuaweiの新OSは「HongMeng OS」と呼ばれています。HongMeng OSの詳細については明らかになっていませんが、2つのタイプのいずれかが採用されると考えられるでしょう。
AOSPベースのカスタムOS
AOSPとは「Android Open Source Project」の略で、日常的に利用されているAndroidの原型です。Android QのようなGoogleが開発した新バージョンは、AOSPとして順次公開されます。AOSP版はGoogle製アプリと切り離されています。Chromeではなく“ブラウザ”というアプリが入っていたのを覚えている方もおられるでしょう。
呉氏が語ったように、今後もHuaweiが「アンドロイド・エコシステムを引き続き発展させていく」とすれば、新OSはAOSPベースのカスタムOSになるかもしれません。
同様のOSとしてはAmazonのFire OSやOnePlusのHydrogen OSが挙げられます。Fire OSもHydrogen OSもGoogle Playを利用することができませんが、Androidアプリとは互換性があり、ほぼすべてのアプリが利用できます。ただしGoogleの機嫌を損ねると、Fire OSであったように、唐突にYouTubeが利用できなくなるといったトラブルに見舞われるかもしれません。
Gizmodoによれば、Hydrogen OSは“完全にGoogleの影響を排したAndroid”だそうです。既存の中国国内版EMUIもある程度流用できるAOSPベースのOSをHuaweiが開発している可能性は大いにあるでしょう。
AOSPを利用しない完全独自OS
Huaweiのもう一つの選択肢がAndroidから決別したLinuxベースの完全独自OSの採用です。
たとえば、インテルやサムスンが開発していたTizenやAlibabaが開発したYunOSはLinuxベースです。いずれもAndroidアプリとの互換性がありますが、ご承知のようにFire OSやHydrogen OSとちがい、TizenやYunOSは市場を獲得できずに既に失敗しています。
もしHuaweiがAOSPの成果物を利用しないとなると、Googleの影響を完全に排除できるとはいえ、開発コストと開発工程は長く、道のりは“はるか遠い”ものです。
結局ユーザーはGoogleアプリを手動でインストールできるかも
いずれにせよ、最大の問題はGoogle Playが利用できないことです。ただし、Huaweiは既にEMUIでAppGalleryという独自のアプリストアを展開しています。
AppGallery内にはGoogle Play Services(Google Play開発者サービス)もあります。独自OSになっても一部の中華スマホのように、ストアから手動でGoogle PlayとGoogleアプリのインストールが可能かもしれません。Googleとの取引を禁止されているのはHuaweiであって、Huaweiのユーザーではありません。米商務省の命令が、どこまでを禁止するかは流動的ですが、もし現在の中華スマホ同様にGoogle製アプリの導入が手動でできる場合、ユーザーレベルでの不便はほとんどないかもしれません。
ただし、Googleの著作物を自動的にインストール可能にする仕組みをデフォルトでOSに搭載することはできないでしょう。AppGalleryからGoogleのアプリをインストールする事自体、制限される可能性も高いです。
独自OSのエコシステムの成功はユーザーへのメリットが鍵
現在4億人以上存在するEMUIユーザーが、見た目がEMUIのままならGoogleのアプリを使わなくても構わないのか、あるいは抜け道を利用してGoogle Playをインストールする道を選ぶのかはわかりません。ChromeがOperaやSilkプラウザに代わっても構わない人は案外多いのではないでしょうか。
ただ、少なくともAmazonのアプリストアがあっても、FireタブレットでGoogle Playが利用できないことに不満を覚えるユーザーが多いのは事実です。慣れた環境から乗り換えるにはメリットが必要です。AppGalleryで有料アプリを無料化する、アプリのセールを頻繁に行うといったメリットがあれば、不満は少なくなるかもしれません。
【2019/05/22 16:28アップデート】
Gizmochinaによると、HuaweiがGoogle Playに代わる新たなアプリストア立ち上げのためにAptoideと協力するとのニュースが入ってきました。AptoideのCEOであるPaulo Trezentos氏が明らかにしたそうです。HuaweiとGoogleの決別がいよいよ現実のものとなってきたようです。
最後にゲーマーの皆さんへ
Huaweiのスマートフォンでは、今後登場するGoogleのクラウドゲーミングサービス「STADIA」が使えない可能性もあります。ハードコアなゲーマーでKirinプロセッサを選択する方は少ないかもしれませんが、注意が必要です。
Source:Business Insider, The Information, Gizmodo
GooglePlayインスコできるんかよ
制裁穴だらけやん