ポーランドの写真家Dominika Koszowska氏は、そのほとんどの写真をXperiaで撮影しています。
シレジア生まれの彼女はカトヴィツェの大学でグラフィックデザインを学び、卒業後はモバイル・フォトグラファーとして意欲的に活動。このたび第8回MPA(モバイル・フォトグラフィ・アワード)で大賞を受賞しました。
数多くのフォトコンテストで活躍してきた彼女は、どのように写真を撮影しているのでしょうか。
モバイル撮影のメリット
Koszowska氏はスマートフォンで写真を撮影するメリットについて、次のように述べています。
「モバイル写真撮影のメリットは、私がつねにスマートフォンを携帯しているということです。写真をすぐに編集して、家族やSNS、友達と共有できます。その上、私は注目を集めることなく、人々の中に簡単に溶け込むことができます。撮影費用は、事実上無料ですしね」
彼女は、アナログカメラの時代には
「フィルムは36枚しかないうえとても高価だったので、写真を撮るまえに最高の構図を選択し、適切なパラメータを選択する必要がありました」
としたうえで、しかしアナログカメラ時代の経験があるからこそ
「写真の構図とパラメータに注意を払う習慣があるので、いまどきのスマートフォンを使うのはずっと楽です」
と語っています。
スマートフォン撮影の秘訣とは
撮影の秘訣についてKoszowska氏は、次のようにアドバイスしています。
「良く観察することです。ほんの一瞬をとらえることです。そしてなにより、あなたのスマホカメラの機能を知ることです」
スマートフォンに追加のアクセサリー、例えば三脚や追加のレンズを使用するか?という問いには、夜景を撮る際など露出時間が長い場合は三脚を使うといい、ミニレンズを使ったことは一度もないと答えています。
また彼女なりの撮影方法について、次のように教えてくれました。
まず最初に私は良い光を探します。なので日の出後や日没前に写真を撮ります。私はポートレートの撮影に人口の光を使わないことにしています。時には照明に頼る必要がありますが、通常はシンプルなレフ版で十分です。
私にとって写真を撮ることは光で絵を描くようなものです。日の出後や日没前の時間──マジックアワーには太陽が黄金の輝きを放ち、光がもっとも効果的です。世界が素晴らしく見えるのです。
紫色だった雲が赤くなり最後に黄色に染まる、いわゆるブルーアワー(つまり日の出前と日の入り後)に写真を撮るのも好きです。
たいていの写真家がそうであるように、私も霧が好きです。世界はまるでベールに覆われたようになり、現実感を失い幻想的になります。霧の中で撮られた写真はミステリアスになるのです。
(写真を撮るとき)私は良い構図やパース、対称性、色のコントラストを探します。写真撮影において何より重要なのが感情です。それは人間のことばかりではありません。雲は情緒や閃光、時には躍動も見せてくれます。多くの写真が直観によって撮影されていることを知っておくとよいでしょう。
(飛んでいる鳥など)動きのあるものを撮影するときは、1/1000秒または1/2000秒の短いシャッター速度を使用します。また、明るすぎる場合はさらに短いシャッター速度を使用します。
逆光で人物を撮影するときは、シルエットの輪郭をつくるために露光時間が1/12000秒になるようにすべてのパラメータを設定します。
ただし、十分な光が得られない場合は露出時間を(1秒など)長くし、三脚を使って撮影します。写真が歪んで乱れるかもしれないので、セルフタイマーの使用を忘れないでください。
お気に入りの写真編集アプリは
スマホならではのメリットといえばアプリでしょう。
Koszowska氏はもっとも頻繁に使用するアプリに「Snapseed」を挙げました。「Snapseed」について素晴らしい編集機能や無料であることを称賛しています。
また、時には「Photoshop Express」やフィルタアプリの「VSCO」を使うこともあるそうです。
PCで画像編集をすることはほとんどないそうで、便利かつ手早くスマホで編集するのが彼女のお気に入り。編集結果にも大満足とのこと。
Snapseed Google LLC
SnapseedはGoogleが開発した本格的で多機能な写真編集ツールです。
Google App Store
VSCO Visual Supply Company
高度なカメラコントロールで画像の撮影や編集を行えます。
Google App Store
Adobe Photoshop Express Adobe
優れた機能を持つ写真編集およびコラージュのためのアプリです。
Google App Store
スマホはデジタル一眼レフに近づけたのか
Koszowska氏は、まだまだスマートフォンでの撮影がプロの写真家にとって主流ではないことを認めつつ、プロの写真家や編集者にとっても意識が変わりつつあることを指摘しています。
彼女は、スマートフォンはいまや良い写真を撮影できるツールになりつつあるといい、その最たる例がブラジル人の写真家Luisa Dorr氏がiPhoneで撮影したTIME誌の表紙写真セッションだといいます。
2017年のTIME誌の企画でDorr氏は、ヒラリー・クリントン上院議員をはじめ、世界に影響力のある女性46人の肖像と12枚の表紙写真を撮影しました。
当時Dorr氏はTIME誌の取材に対し、スマートフォン撮影のメリットについて、重い撮影機材を持ち運ぶ必要がないことや、モデルが緊張せずリラックスしてくれることだと語りました。(TIME)
日本でもNYLON JAPANや週刊ビッグコミックスピリッツなど、雑誌の表紙撮影にスマホが使用される例が増えています。
3月14日に発売されたVOGUE GIRL春夏特別増刊号では、151ページにおよぶ誌面すべての写真がGoogle Pixel 3で撮影され話題を呼びました。(VOGUE GIRL)
スマートフォン写真の未来像
かつてデジタルカメラで撮影するプロの写真家はいませんでした。しかしデジタル一眼レフの性能向上とともに、急速に風向きは変わりました。そしてデジタル一眼レフもまた、スマートフォンの性能向上に追いつかれつつあるのかもしれません。
Koszowska氏は、コンテストでデジタル一眼レフで撮影された写真と競合することも多かったといいます。それでも一眼レフカメラで撮影された写真に勝って国際コンテストを受賞したと、自身の経験を語っています。
Koszowska氏はXperiaのマニュアルモードを気に入っているそうです。プロの写真家らしく、すべてを自分の管理下に置きたいからだと理由を語っています。
しかし、写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンが「あなたの最初の一万枚の写真はおそらく最悪だ」といったように、プロの写真家ではない私たちにとって、良い写真を撮るのは簡単ではありません。マニュアルモードは、初心者には敷居が高いのも事実です。
しかし現代のスマホは、AIがプロの写真家たちに代わって最適なパラメータを設定してくれます。私たちはいまや、露出やホワイトバランス、ISO感度を自ら設定する必要はありません。ただ構図を決め、シャッターを切ることだけが私たちの仕事になりつつあります。
近い将来、カメラを起動しているだけで最適な構図、最高の瞬間をAIが判別し、自動的にシャッターを切るようになるのかもしれません。
私たちはいま、オートフォーカス登場以来の、写真革命のさなかにいます。
「最悪の一万枚」を撮影せずにすむ未来──おそらく、それは遠くない未来のような気がします。
Source:Spider'sweb, Sony, MPA
この記事のトップみたいな「濃ゆい」写真を10年ばかし前に発表したら
「写真はお絵かきじゃねーぞコラ!」とぶっ叩かれまくっただろうなあ。
カメラがいらない論議は(モーター)スポーツ撮影が十分こなせるくらい
高画質で高速AFで超望遠が使えるスマホが出てきてからでいいよ。