USB規格の仕様策定を行う業界団体USB-IF(USB Implementers Forum)は25日、USB Type-Cケーブル・コネクタ仕様の新バージョンであるリビジョン2.1及びUSB Power Delivery(USB PD)の新バージョンであるリビジョン3.1を発表しました。USB PowerDeliveryの給電電圧として新たに28V / 36V / 48Vが追加され、使用可能になっています。
USB PDの最大電力は従来の2倍超の240Wに
現行のUSB PDの仕様では、基本的に流すことのできる電流は最大3Aに制限されており、その枠の中で5V→9V→15V→20Vと電圧を調整することによって最大60W(20V3A)の電力を扱うことが出来るようになっています。それ以上の大電流を流すことは非常に危険(勿論3A程度でもかなり危険)であるため、コネクタ部分に内蔵されたeMarkerと呼ばれるICが安全性を認証できる場合に限り、3Aから5A以内の電流を流すことが可能になるように設計されているのです。よって、現在USB PDの最大電力として認識されている100Wは、20Vの最大電圧に加え、eMarkerに対応したケーブルを用いて5Aの最大電流を流すことでのみ実現されるようになっています(20V5A=100W)。
今回、USB Type-C Rebision 2.1において新たに48Vの電圧が追加されたため、ここですでに認められている5Aの電流を流すことにより、USB PDの最大電力は従来の2倍超となる240Wになります。なお、100W~140Wの領域では28V、140W~180Wの領域では36V、180W~240Wの領域では48Vの電圧がそれぞれ割り当てられています。また、今まで通りPPSにも対応し、これらの範囲で100mV刻みに細かく最適な電圧を要求可能となっています。
新しいUSB Type-Cケーブルでは、既存のケーブル(SPR:Standard Power Range=標準電力域と呼称)に代わり新たにEPR(Extended Power Range=拡張電力域)という規格を定義し、対応するケーブルにはEPRマークが記載されるようになっているため、消費者が簡単に区別できるようになっているとのこと。
EPRケーブルの扱いは上記の表のようになっています。既存のType-CケーブルはeMarkerの有無によらず全てSPRとなっていることに注意してください。
現在、3A超の電流を流す際に必要なeMarkerはUSB3.1以上のケーブルでは必須となっていますが、EPRのサポートは任意となっています。既存のケーブルが規格非準拠品になってしまうことを避けるためでしょう。USB5などの後継規格では、EPRが標準機能として追加されているかもしれません。
ゲーミングノートも充電できそうだけど、だいぶ後の話?
新しいEPRケーブルの登場により期待されているのが、ゲーミングノートPC分野へのUSB PDの導入です。ゲーミングノートPCはノートパソコンとしては非常に大量の電力を消費するため、現行のUSB PDの最大100Wの電力では対応できません。もちろん、世の中には240Wですら食い潰すモンスター級のデバイスも存在しますが、USB PDが更に広い分野の製品に導入されていくことは確実です。
ただし普及には時間がかかりそうです。そもそも100Wの電力をフルで消費するデバイスですら、まだあまり多くはありません。そのほとんどが、MacBook ProやDell XPSなどの最高級帯のノートパソコンに限られています。充電器側も、100Wに対応したものは選択肢が絞られます。
240Wに対応したUSB Type-Cケーブルは魅力的ですが、広く普及するようになるのは数年後のことになるでしょう。
アダプタどんなデカさになるんだ?