現地時間6月29日、インド政府が59個の中華系アプリの使用禁止を発表しました。インド在住の筆者が、政府のアプリ使用禁止措置・インド国民の自主的な中国系アプリ排斥運動についてレポートさせていただきます。
目次
政府による使用禁止措置の前から、中華系アプリ排斥の動きは始まっていた
6月29日以前からインド国民が自主的に中華系アプリを排除する動きは始まっていました。政府は使用禁止対象を59のアプリに限定しましたが、中国が関係するより幅広いアプリ・サービスをボイコットする運動が広がっていました。
インドで生活する筆者の立場からすると、今回政府が禁止した59のアプリが使えなくても生活はできますが、禁止対象アプリ・サービスが更に広がってくると日常生活に支障をきたします。政府の使用禁止措置や国民による自主的な排斥運動がこれ以上エスカレートしないことを願います。
政府による使用禁止措置はまだ徹底されていない
目立った措置として、TikTokがインドのGoogle Play上で入手不可になっています。ただし、リージョンを変更すると入手・使用は可能です。
筆者は中国出身の友人とはWechatを活用してやり取りをしています。他にも記事執筆の際には時々Weiboも使います。それらに対する利用制限はまだ確認できません。
政府の措置が6月29日に発表されたばかりでまだ不徹底なのかもしれませんが、現状59のアプリの大多数はダウンロード/使用制限がかかっていない状況です。
国民のボイコット:「中華系アプリ」排除アプリが人気
「中華系アプリ」を端末から消去するためのアプリがGoogle Playでリリースされています。その中の一つ「Chinese App Detector」というアプリは10万件以上のインストールがあったようです。
このアプリは、政府の指定した59のアプリに関わらず、端末にインストールされている「全て」の「中華系アプリ」を特定します。
中国資本が入っているインド国産アプリへの風当たり
Twitterのトレンドには、「Paytm Is Indian」という文字列が見られます。「Paytm」とは、インドのQRコード決済アプリであり、QRコード決済は大手の小売店から街中の小さな個人店まで使えることがほとんどです。またPaytmはただのQRコード決済にとどまらず、各種チケットの予約や公共料金の支払い、個人間送金、純金投資に至るまで、サービスは多岐に渡っています。スマートフォン一台あれば支払いや商売を行えることから、国民のインフラといっていいほどの存在です。
「Paytm Is Indian」についてですが、Paytmは間違いなくインドで生まれたアプリです。ただ、その普及については中国のアリババグループが数年前大規模な出資を行ったことが起点となっています。元々中国の資本が入っていることは周知の事実でしたが、それに対しインド国民たちは、Paytmはインドのものだ、とアプリ禁止問題に関連して怒りの声を上げています。
The Founder of is an Indian,
Paytm Is IndianOne request to Paytm please immediately stop China investment. pic.twitter.com/WDNIqmE7Vn
— Vtv Ganesh (@ganesh_vtv) June 30, 2020
(筆者訳:Paytm設立者はインド人であり、インドのものだ。Paytmは即座に中国からの投資を拒否することを求める)
Paytmに対しては、中国資本が入っているからサービスをボイコットする、というよりは、「中国資本を引き揚げさせる」方向に圧力がかかっているようです。
中国資本が関わっているインドのサービスは多い
Paytmに関わらず、中国資本が入っているインドのアプリ/サービスは多数あります。
Indian start-ups have received estimated $4 billion funding from Chinese investors in last 5 years.
PayTM
Swiggy
BigBasket
Ola
Byju
MakeMyTrip
Hike
Oyo
Quikr
Snapdeal
Flipkart
ZomatoAre all heavily funded by the Chinese.
They have NOT BEEN BANNED!
— Papri Banerjee (@BanerjeePapri) June 30, 2020
筆者注:
- Swiggy、Zomato:飲食店デリバリーサービス
- Bigbasket、Flipkart、Snapdeal:ECサイト
- Ola:タクシー配車サービス
- Byju:学習アプリ
- Makemytrip:宿泊・航空券予約サイト
- Hike:チャットアプリ
- Oyo:ホテルチェーン
- Quikr:中古品販売、求人等総合サービス
上に挙げたサービスのほとんどはインドで生活する上で非常に重要な存在です。現状、これらアプリ・サービスは政府による禁止対象に含まれていません。ただ、政府が使用禁止をしなくても国民が自主的に排斥運動を始める可能性は残っています。
まとめ
インド政府の使用禁止措置そのものは、すぐに日常生活に大きな悪影響を及ぼすレベルのものではありません。ただ、中華系アプリ・サービス排除の動きは国民から自主的に起きており、このままエスカレートすると日常生活にも大きな支障が出そうです。どこかで歯止めがかかってくれることを願いたいです。
source: Twitter(1), Twitter(2), thequint
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