Snapdragon 855は2018年12月に発表されたクアルコムの新型チップセット(SoC)です。800番台のSnapdragonはハイエンドSocとして位置づけられており、Snapdragon 855は2019年前半時点でAndroid搭載Socとして最高性能を誇っています。
搭載モデルがすでに海外では発売され初めており、日本にも順次投入されるでしょう。
仕様
Huawei P30 Proなどに搭載されているKirin 980 などと同様に7nmプロセスで製造されているチップセットです。CPUは最大2.84GHzのKryo 485を8コア搭載。GPUは最新の Adreno 640 です。
Snapdragon X50 5Gモデムを搭載した5G対応バージョンもあります。5Gでは2時間分の映画が3秒でダウンロードできると言われており、日本では2020年にサービスが提供開始される見込みの次世代通信技術です。
また、Wi-Fi 6 という名称で知られている 802.11 ax に新たに対応し、Wi-Fi 5 (802.11 ac) から通信速度が最大40%高速化されています。前世代と比べ、マルチタスクの効率化は2倍、プロセッサコアは最大45%向上するとクアルコムは主張しています。
カメラの画像処理チップにはSpectra 380 ISPを採用し、これによりリアルタイムに被写体と背景の識別などができるようになっています。
特徴
ゲームのパフォーマンスを最適化する「Snapdragon Elite Gaming」を搭載しており、通常時と比較するとAdreno GPU パフォーマンスが最大20%、Kryo CPU が最大45%もブーストされます。
また、超音波による画面内指紋認証 「3D Sonic Sensor」に対応しています。従来の画面内指紋認証では、ライトで照らした指紋を反射して認証する光学式でした。今回クアルコムが発表した技術は、超音波で細かい凸凹まで3Dで読み取り、認証するというものです。これにより指紋偽造のリスクが減り、セキュリティーがより強化されました。
また、Snapdragon 845 でもカメラの画質向上で大活躍したAI性能が今回は3倍にまで強化されています。
ベンチマークスコア
Snapdragon 855 搭載の Lenovo Z5 Pro GTと
Snapdragon 845 搭載の Zenfone 5Zで比較します。
Antutu ver 7 | Geekbench 4.1 | |||
総合スコア | GPU(3D)スコア | シングル コアスコア | マルチ コアスコア | |
Snapdragon 855 | 372712 | 不明 | 3284 | 10237 |
Snapdragon 845 | 270753 | 106989 | 2392 | 8870 |
Snapdragon 855 は 37万点台 という高スコアが出ました。全世代のSnapdragon 845 とはかなりの差がついています。クアルコムは、Snapdragon 845 より全体の性能が45%向上したと主張していますが、おおむねベンチマークスコアもそのようになっています。
おまけ: 原価は?
基本的にチップセットの原価は非開示なので、予想する以外に方法はありませんが、Snapdragon 855とExynos版の両方存在するGalaxy S10+の原価を調査したTechInsightsの試算によればExynos 9820の製造原価はモデムとあわせて70.50ドルとのこと。ほぼ同じ性能・プロセスルールであることを考えると、Snapdragon 855の原価も近い水準でしょう。
あくまで推測ですが、過去のSnapdragon 820, 835, 845の試算金額のレンジも考慮すると、5Gモデム無しのSnapdragon 855は約50~70ドルほどではないでしょうか。
>全世代のSnapdragon 845
前世代、すかね。