たかが充電器に、まるで最新のフラッグシップスマホを触るようなガジェット的興奮を覚えるのは初めてかもしれません。されど、充電器!
この記事は、Baseusから発売されている「Baseus GaN 65W Mini Quick Charger」のレビューです。(正式な英語名は決まっておらず、場所によって様々な表記がある模様)
名前の通り、パワーICに流行りの窒化ガリウム半導体を採用した小型の65W USB充電器のひとつなのですが、これが「もうUSB充電器はこれ一つで十分なのでは!?」と思ってしまうほどの完成度だったのです。
Baseusは、中国は深センに本社を置くデジタルアクセサリーメーカー。海外での認知度はAn○erなどとも並びそこそこのようですが、日本で名前を聞く機会は比較的少ないように思います。
簡単にカタログスペックから紹介
Baseus GaN 65W Charger(長いので省略)は、最大65Wの出力を持つUSB充電器です。USB PD(最大65W)はもちろん、Quick Chargeや有象無象の中華スマホ独自充電規格にも一部対応しており、身の回りのUSB機器のほとんどをこれ一台で充電することが出来ます。
USBポートはType-Cが2つ、Type-Aが1つの計3つが装備されており、当然3つ同時に使用することが可能です。
3つのポートの定格出力がこちら。2つのType-C端子で一部仕様が異なる部分を太字で強調してあります。
Type-C 1:3.3~11V 2.7A / 5V 3A / 9V 3A / 12V 3A / 15V 3A / 20V 3.25A max(=65W)
Type-C 2:3.3~11V 2.7A / 5V 3A / 9V 3A / 12V 2.5A / 15V 2A / 20V 1.5A max(=30W)
USB:4.5V 5A / 5V 4.5A / 9V 3A / 12V 2.5A / 20V 1.5A max(=30W)
(入力はAC 100~200V 50~60Hz 1.5A)
それでは、具体的なレビューに移りましょう。
外観・ファーストインプレッション
外箱はいつものように凹んでいました。輸入通販あるあるです。
形は細長い直方体で、Baseusロゴが小さく書かれていたりと非常にシンプル。白いモデルを選んだことでよりシンプルさが際立ちます。手触りは光沢があるというよりもマットな感じで、指紋が目立つようなことは有りません。
側面には、英インターテック社の認証マークや、
やたらとデカい「65W」の文字に製品の型番などが書かれています。もう少し小さくしてほしかった・・・。
底面には認証情報や入力・出力などの情報がビッシリ。
上面も大変シンプルで、ど真ん中にType-C2つ、通常のUSB(Type-A)1つが等間隔で並んでいます。USB端子内のプラ板は朱色で、黒や灰色よりは鮮やかで良いという人もいるかもしれません。
電源接続時に淡く水色に光るランプも好感触です。白+水色ランプといえば、最近も何かゲーム機が発表されていたような。この手のスタイルは近未来的で良いですね。
実際に使ってみる
ひとまず、実際にUSB機器を充電し、充電時間とバッテリー残量を折れ線グラフにプロットしてみることとします。今回試すのは、45W USB PD対応のノートパソコン、Xiaomi 27W急速充電対応のXiaomi Mi9(スマートフォン)です。
45W USB PD対応のノートパソコン(80Wh)
私がいつも使っている、45W USB PD対応のノートパソコン(バッテリー容量:80Wh)で充電を試してみました。Excelに時間とバッテリー残量を記録したり、適度にブラウジングなどをしながら測った値ですので、電源をオフにした状態ではもう少し早く充電できそうです。
残量は6%ほどの状態から計測を開始しています。結局、充電が100%完了するのにかかった時間は2時間7分でした。充電開始直後は美しく直線的に残量が増えていきましたが、80%を超えた辺りからは少しづつ遅くなりました。充電速度は純正の充電器とほとんど変わっていません。
2つあるType-Cポートのうち、Type-C 2は最大でも30Wまでの出力にしか対応していないため、ここではType-C 1ポートを使用します。
27W充電対応のXiaomi Mi9(3300mAh≒12Wh)
私のメインスマホであるXiaomi Mi 9で充電を試してみました。バッテリー容量は約12Whで、Xiaomi独自の27W急速充電がBaseusの充電器でもサポートされています。1%の状態から、100%の状態まで計測し、結果は59分30秒でした。
私はXiaomi純正のMi 9用27W充電器も持っていますが、その場合の充電速度とほとんど変わりません。どちらもギリギリ1時間以内に充電が完了するかどうかといった結果です。先のノートパソコンほど目立って充電速度が下がることは無いものの、序盤と終盤では2倍程度の差がありました。
Xiaomiの27W充電はUSB PDとの互換性が無いため、ここではUSBポートにUSB-A to Type-Cケーブルを接続して使用します。
良いところ
とにかく小型!
購入の決め手になったのは、このポイントかもしれません。
みなさんは、充電器を電源に挿す時、アダプターの横幅が大きく、隣接する他のプラグと干渉してしまうという経験はないでしょうか(私は超あります)。例えば、8つのプラグ穴がある電源タップを用意しても、大きなアダプターを挿したりすると結局使えた穴は4つ程度...なんてことは日常茶飯事です。
私はGoogleを絶対に許さない
こちらの充電器ではそんな心配は不要です。高さこそはあるものの、プラグに接触する面の面積が最小限に抑えられており、隣り合うプラグに干渉することは一切ありませんでした。むしろ、Baseusが一般的なプラグの間隔を考慮して設計している可能性が高いです。
幅がピッタリ
もちろん、体積そのものも非常に小さく抑えられています。本当に小さいです。
文庫本と比較してもこのサイズ感
プラグが折り畳める
これは特別USプラグのモデルに限った話で、プラグが丸くなっているEUプラグのモデルでは折りたたむことが出来ません。日本に住んでいてよかった。
カバンやポケットに収納するときは、プラグを折りたたんでしまえばさらにコンパクトになりますし、周りを傷つける心配も軽減します。ただし、折りたたんだ後でも、プラグの先が1mmほど外側に露出してしまっているようですが、このくらいは我慢できる範囲です。
輸入品なのにPSEマークが付いている(!)
こちらの製品、海外通販から輸入したものにも関わらず日本で電化製品の安全性を保証するPSEマークがきちんと描かれています。先程の外観紹介の際に気がついた方もいるかも知れません。
実は、日本国内でも代理業者が国内販売に向けたクラウドファンディングを行っており、それ以降に出荷されたロットに関しては海外モデルでもPSEマークが付いていることが多いようです。国内のAmazonで正規に販売されているものもPSEマーク付きを謳っています。
もちろん、ここで海外販売のモデル(筆者はAliExpressから購入)にPSEマークが付いていることを完全に保証することはできませんので、絶対にPSEマークが必要だという場合は国内の正規ルートから購入することを強く推奨します。
中華スマホ特有の独自充電規格にも(一部)対応
先にご紹介したように、中華スマホメーカーの独自充電規格にも一部対応しています。
筆者が手元のXiaomi Mi9を充電した際には、Xiaomiが独自に開発した27Wの急速充電(USB PD、QuickChargeどちらにも非準拠)が適用されていることを確認しました。
スマホ側に「Charge TURBO」の表示有り
今回確認できたのはXiaomi Mi 9のみですが、Amazonの製品ページではこれら以外にもSamsung AFC、Huawei SuperChargeなどにも対応している旨が記されています。
(スマホの設備不足はこういうところで差が出るのかと実感しました)
ただ、USB端子は最大30Wまでの出力にしか対応していないため、近頃見られるような40W充電、ましてや65W充電などで利用することは出来ません。(スマホ向け高速充電規格の多くはType-C to Type-Cではなく、USB-A to Type-Cで設計されています。)
その他良かったポイント
- AliExpressで購入したら、BaseusのType-Cケーブルが無料で付いてきた(公称ではUSB PDの最大電力である100Wまで流すことができるらしい)。
- 白いカラーも含め、デザインが自分好み
残念なところ
本当に良い製品ではあるのですが、どうしても欠点はあります。ここからは、しばらく使って気になった点をいくつか挙げていきます。
最大電力65Wは、気にせず使うと物足りない
最大電力65Wということは、複数ポートを同時に使った場合でも各ポートの合計出力が絶対に65Wを超えることが無いということです。単ポートの使用では65W以上を要求することは滅多にありませんが、2ポート同時、3ポート同時にガンガン出力を引き出そうとすると簡単に限界に達してしまいます。
例えば、PD45Wのノートパソコンと、Xiaomiの27W充電のスマホを同時に充電しようとした場合、ノートパソコン側が最低45Wでしか受け付けられないため、ノートパソコンへ優先的に45W分のリソースを供給、その後余剰になった20W(65-45)から引き出せる最大電力の18W(Quick Charge)でスマホが充電される形となります。ここでは、スマホは本来使えたはずの27W充電を活用することが出来ません。
※Type-C1ポートとUSBポートの同時使用時、最大電力は65Wではなく63W(45+18)になる仕様のようです。2つ以上のポートを同時に使用すると、出力はもっぱら制限されます。
現在筆者の持つUSB充電デバイスの内で最も多くの電力を要求するのはこのノートパソコン(45W)であるため、65W充電は十分であるように思えます。しかし、実際複数ポートを使用してみると物足りなさを感じることもありました。
2つのType-Cポートは、それぞれ仕様が微妙に異なる
これに限らず、USB充電器では珍しいことでは有りません。充電を始めるときに、常にどちらのポートを使えばよいのかのかを意識しなければならないことは、多少なりとも手間がかかります。
※具体的な定格の違いは記事冒頭に記載しました。
発熱はかなり強い
他のUSB充電器と比較しても、明らかに発熱が強いです。小型化の弊害なのでしょう。しばらくパソコンを充電したり、スマホを充電したり、使い続けていると充電器本体が非常に熱くなってしまいます。手でプラグから引き抜いてすぐにカバンへしまう程度では問題ないですが、10秒も握っていれば確実に火傷を負いそうです。
まとめ:「私が」本当に欲しかった理想のUSB充電器
それぞれのユーザーには、それぞれの需要があります。私のノートパソコンは充電に45Wしか要求しませんが、MacBook Proを使うなら65Wを引き出しても余る程のの出力が欲しいところです。スマホを複数台使っていて、Quick Chargeポートが複数必要な人もいるかも知れません。
少なくとも、この充電器は私にとっては本当に理想的で、ずっと欲しかったものでした。今の環境では、基本的にこれ以上の充電器を必要としていません。小型ですぐに外して持ち出すことも、両脇を別のアダプターにはさまれた狭い空間に差し込むことも可能です。
このレビューを見て、直感的に「これだ!」と思ったあなたなら、きっと大いに満足できることでしょう。
Ankerと同じくらいの知名度って本気で言ってるの?